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パラ水泳秋季記録会・次世代を担う育成選手&東京パラリンピック金メダル候補の現状は?

パラ水泳秋季記録会・次世代を担う育成選手&東京パラリンピック金メダル候補の現状は?
2020.11.18.WED 公開

パラ水泳の秋季記録会が11月7日と8日、宮城県利府町のセントラルスポーツ宮城G21プールで行われた。日本身体障がい者水泳連盟の強化育成指定選手と、日本知的障害者水泳連盟の強化指定選手を対象とした新設の競技会で、東京2020パラリンピックのメダル候補とともに、次世代を担う若手選手が存在感を見せた。

パラ水泳の国内大会としては、1月に行われた「日本知的障害者選手権新春水泳競技大会」(身体障がいの選手も出場)以来10ヵ月ぶり。コロナ禍におけるトレーニングの成果を確認する貴重な機会となったほか、東京パラリンピックに向けるラストチャンスと位置づけて背水の陣で臨んだ選手も多く、会場には緊張感が漂った。

小池さくら&芹澤美希香が好タイム! 存在感を増す女子選手

400m自由形で好記録を残した小池さくら

腰の故障を経て、1年ぶりの大会で復活を遂げたのが大学生スイマーの小池さくらだ。昨年は日本代表から落選し、苦しい時期を過ごしたが、400m自由形(S7)でMQS(東京パラリンピックの参加標準)を超える記録を残すなど好調をアピールした。

「強化選手に戻るのが(今回の)目標だった。タイムには満足している」と表情も明るい。活動自粛期間は自宅に簡易プールを設置して泳ぎ、「気持ちが途切れそうなこともあったが、周りの選手と意見交換しながら、いろいろなことを試せた」と笑顔で続けた。

また、知的障がいクラスの芹澤美希香(SB14)も得意の100m平泳ぎで1分18秒90の日本記録を樹立。7位入賞した昨年の世界選手権から記録を伸ばしており、東京パラリンピックの上位進出への期待が膨らむ。

「前半からテンポを上げて泳ぐ練習をたくさんした。日本記録が出てよかった。(東京パラリンピックに向けては)2021年5月の選考会で派遣標準記録を突破できるようにこれからまた練習を頑張る」と力を込めた。

笑顔で報道陣の質問に応じる芹澤美希香

また今年2月に障がいクラスがS3からS2に変更になった14歳の山田美幸は、100m背泳ぎで日本新記録を樹立したが、「自己ベストではないのでとても残念。後半からペースダウンしてしまったので持久力をつけたい」と課題を口にした。

日向楓&南井瑛翔ら男子若手選手は記録ラッシュ!

両上肢欠損クラスで記録を更新し続ける日向楓

もちろん男子若手選手も負けてはいない。バタフライ(S5)の日向楓が50mで38秒48、100mで1分31秒36と2つの日本新記録を樹立。国際クラスを保持していない高校生の南井瑛翔(S10)も100mバタフライでアジア記録に相当する1分01秒51の日本新をたたき出した。また、50m背泳ぎ(S5)で、菅原紘汰が41秒53の日本新記録を打ち立てるなど若手が活躍。コロナ禍においても期待のスター候補が記録を更新し続けており、東京パラリンピック日本代表選考レースを兼ねた、5月の「2021ジャパンパラ水泳競技大会」が楽しみになる結果だった。

比叡山高3年の南井瑛翔は東京パラリンピックを目指す

再開と再会を推進力に。金メダル候補の山口尚秀が世界新!

レース後、頭を下げて感謝の意を表した山口尚秀

そんななか、若手選手らに大きな勇気を与えたのが知的障がい(SB14)クラスの山口尚秀だ。大会初日、100m平泳ぎに出場して1分04秒13の世界新をマーク。昨年9月の世界選手権で自らが樹立した世界記録を0秒82更新した。

「パラの全国大会は久しぶりで緊張感も高まっていた。(世界記録の要因は)久々に日本代表のチームメイトとの再会など人との関わりがあり(それを力に変えて)できることを最大限に持っていくことができた。速い動作、力強いストロークとキックを保つように意識したので、後半もタイムが落ちなかった」

活動自粛期間もモチベーションを落とさず高いレベルで練習を積み、さらなる自信をつけた結果だろう。淡々と語るその姿からは、王者の風格が漂った。

マスクを着用して入場する山口、木村ら選手たち

「かっこよかった」。世界記録の山口をそう称えたパラ水泳界のエース・木村敬一は2日間で2種目に出場した。今記録会は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、参加できる選手数を絞って開催。そのため、視覚障がいの木村と知的障がいの山口が同じ組で泳ぐ場面もあった。

コロナ禍で拠点のアメリカから帰国し、NTCなどでトレーニングを続けている木村敬一

木村にとっては11ヵ月ぶりの実戦となったが、「緊張感をしっかり持って臨むことできたし、レースの感覚は久しぶりでワクワクできた」と手ごたえを語り、「今回、記録会を開催してもらって感謝しているし、僕ら(選手)も(感染症対策のもとでレースを行う)テストが必要。こういった積み重ねが来年のオリンピック・パラリンピック開催につながるといいなと思う」とコメントしている。

もうひとりの世界王者・東海林大も200m個人メドレー(SM14)と100mバタフライ(S14)で好タイムをマークした。コロナ禍でも変わらずプールで泳げているという東海林は「コロナ対策で頭がいっぱいになったけど、焦らずいつも通りの気持ちで練習ができた」と充実の表情で振り返った。

2日間の日程を終え、誕生した記録は世界新1、アジア新2、日本新12。パラ水泳日本代表の上垣匠監督は「若手の成長が目立った。トレーニングによる成長とともに、身体の成長に伴った成長も確認できた」と総括し、「1年以上大会に出ていない選手も多く、不安があった中でレースに出場した選手たち全員に拍手を送りたい」と選手たちを称えた。

記録会は無観客で実施。機材トラブルによる中断はあったものの、概ね予定通りに日程を終えた

【2020パラ水泳秋季記録会】
1日目リザルト
2日目リザルト

text by TEAM A
photo by Sayaka Masumoto

パラ水泳秋季記録会・次世代を担う育成選手&東京パラリンピック金メダル候補の現状は?

『パラ水泳秋季記録会・次世代を担う育成選手&東京パラリンピック金メダル候補の現状は?』