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アーチェリー・4選手が新たに代表内定! 東京パラリンピック開催国枠を争う選考会レポート

アーチェリー・4選手が新たに代表内定! 東京パラリンピック開催国枠を争う選考会レポート
2021.03.30.TUE 公開

3月27日から28日の2日間、東京2020大会でアーチェリーの予選ラウンドが行われる夢の島アーチェリー場(江東区)にて、アーチェリーの開催国枠内定候補者を選ぶ「東京2020パラリンピック国内最終選考会(開催国枠)」と、男子W1オープンの代表内定候補者を選ぶ「男子W1選手選考会」が開催された。

アーチェリーでは、すでにリカーブ男子の上山友裕、同女子の重定知佳、女子W1オープンの岡崎愛子がそれぞれ自力で出場枠を勝ち取り、内定を手にしている。そのため、今回は、開催国枠が割り振られているリカーブ男子1名、コンパウンドオープン男女各1名の選考会として開催。同時に、自力で枠を勝ち取ったものの、先日、内定選手の仲喜嗣氏が他界し、空席となっていた男子W1オープンでも、改めて条件を設け選考会が行われた。

1年の延期を力に変えて急伸

選考会に参加したのは、東京パラリンピック出場最低記録などの条件をクリアした8名。リカーブ男子の寺田博之、長谷川貴大。コンパウンド男子オープンの大塚忠胤、藤井正臣、宮本リオン。コンパウンド女子オープンの永野美穂、平澤奈古。そして、男子W1オープンの大山晃司で、いずれも日本を代表するトップパラアーチャーだ。

今大会は、2020年に予定されていた選考会を東京大会延期に伴い1年越しで開催したもので「コロナ禍の状況次第なところがあるので、なかなか開催自体を確定できなかったが、選手たちには去年と同じタイミングで開催したいと、冬頃には伝えてありました」と、大河原裕貴日本代表監督は説明する。

選手たちも心づもりはあったようだ。東京パラリンピックの1年延期が決定した時点で気持ちを切り替えたと選手たちは口をそろえており、大河原監督も選考会の様子から選手たちの好調ぶりを実感したと称える。

「いろいろ苦労したと聞いていましたが、再出発が決まってからもう一度、作り上げてくれていて、技術的にも成績的にも上がってきている。延期をポジティブに捉えれば、以前より良くなっており、おのずと期待も膨らみます」と、メダル獲得への手ごたえを感じている様子だ。

宮本は「(本番では)しっかり準備をしてベストを尽くすだけ」とポーカーフェイスを崩さない

この選考会で最も目を引いたのが、コンパウンド男子オープンの内定候補者となった宮本リオンだろう。27日はアーチェリー日和ともいうべき微風の好天。翌28日は一転して、雨と風、そして寒さとの戦いとなったのだが、両日とも宮本は終始リラックスした様子で、早いタイミングでポンポンと矢を放っていた。

コンパウンドオープンは50mの距離を、1エンドにつき6本ずつ、計6エンド36本を1回とし、計6回行われたのだが、そのスコアがすべて340点±2点で収まっていた。1日目の競技終了後、宮本の的を至近距離で見たところ、やはりほとんどの矢の跡が9点・10点を示す黄色い円の中に納まっており、いかに射が安定していたかがそこからも見て取れた。

宮本自身も、「(延期でできた)1年間という時間を体づくりやフォームの改善に費やせたおかげで、いい点がアベレージで出せるようになった。それが結果につながったのかなと思います」と振り返っている。

カギは悪天候への対応力と安定感

パラリンピック出場経験のある2人の一騎打ちとなったコンパウンド女子オープン

同じく天候に左右されず、むしろ最終盤に向かって調子を上げていったのが、コンパウンド女子オープンの平澤だ。終始冷静な表情を崩さず、自分のするべきことに集中している様子が見て取れたが、1日目はもう一つ調子が上がらず、内定候補枠を争った永野にリードを許してしまう。それでも2日目は徐々に調子を上げ、最終回となる6回目では、最終エンドで今大会自己最高スコアの57点を出し、合計点でも永野を上回った。

「最後の6本、ここで満足しちゃいけないんですけど、すごくよくできたなと思っています。なんでこれが昨日できないかな。ただ、一本一本を、いい加減な気持ちで射ったりあきらめたりしなかったので、それは自分でもすごく誇れると思っています」

その平澤を抑え、内定を勝ち取ったのがロンドンパラリンピック代表の永野だ。大崩れすることなく、少しスコアが落ちても次のエンドで確実に挽回する、力強い射を見せていたのが印象的だ。

「環境に左右されない粘り強さが私の強みだと思っています。2日目のように突然の雨、風でも気持ちを切らさず、1射1射自分の感覚や気持ちに集中し、ていねいに射ちました」

試合後、今大会出場にあたり「少しぐらいの雨や風でも練習をするということを心がけてきた」と明かした永野。「本番に向けて、しっかりと見直し、さらにパワーアップさせたい。目標は一つしかない、金メダルです」と力強く語った。

「環境のいいフィールドで気持ちよく射てた」という永野

リカーブ男子の長谷川は、終始、競争相手の寺田をスコアでリードし、一人旅の様相となった。そのせいか、途中、的に刺さる矢がばらつく回やエンドがあった。内定を手にしたからには、本番に向けてさらに射に磨きをかけ、上山とともに表彰台に上がることを期待したい。

長谷川は北京大会以来のパラリンピック切符。支えてくれた妻と家族への思いを原動力にした

他のクラスと異なり、対戦相手がいない中、孤独なレースを戦い抜いたのが、男子W1の大山だ。

「(一人で)やりにくいということはなかったですけど、できることなら仲さんと一緒に出たかったですし、本番でメダルを狙いに行きたかった」

「パラリンピックは他の大会とは空気が違うと聞いている。世界中の強い人たちとやり合うのが楽しみ」と大山

2日目は雨で的が見えにくくなったり、寒さで体がこわばるというアクシデントにも見舞われた。

「体がこわばると、震えて的を狙っているときに体が急に動いてしまったりするので、震えが出る前に速いテンポで射ち切るようにしました。とはいえ、今日の寒さはどうしようもなかったですね」

最終回の4エンド目は明らかに寒さで震えており、実際、点数を落としていた。ただ、本番は寒さよりも暑さ対策が重要になるはずだ。

「暑い日は、普段からエンドごとの休みの際に頭から水をかけて体を冷やしたり、日傘をさしたりしています。とくに水をかけると気持ちよくなるので(暑さ対策は大丈夫)」 と、万全のようだ。

記者会見に登壇した(前列左から)大山、永野、(後列左から)大河原監督、宮本、長谷川

1位の選手は大会後に行われた日本身体障害者アーチェリー連盟の理事会で正式に日本代表内定選手となり、今回の4名を加えて計7名となったが、さらに増える可能性があると大河原監督は示唆する。

「7月に最終予選会が開かれる予定です。そこでリカーブ男子、コンパウンドオープン男女の枠が取れる可能性があります。コロナ禍の状況次第で、開催されるか、派遣できるかなど不確定な点が多いのですが、派遣できるようでしたら派遣したい」

「一本たりとも、あきらめたり、いい加減な気持ちで打つことはなかったので、それは誇れる」と平澤

平澤も期待を込める。

「これまでに出場したパラリンピックすべてでそうだったのですが、もしチャンスがあるのであれば、最終の名簿が出されて決定されるまではあきらめません。アーチャーなので、日々、1点1点上の点数を狙っていくということは、パラリンピックの前であろうと後であろうと、出られようと出られまいと変わらないので」

コンパウンド男子オープンの大塚も前を向く。

弓のワックスやスコープの三脚に重りをつけるなど雨風対策をして臨んだ大塚(左)

「(この大会は)楽しいですよね。いろいろなプレッシャーとかテンションが上がる機会って普段の試合ではなかなかないので。本当は今日(内定を)決められたら一番気持ちよかったけど、準備不足だったので、気持ちを切り替え、残った枠を取れるようにがんばります」

本番は、ミックスと呼ばれるチーム戦もあり、日本チームはリカーブとW1で出場予定だ。

「日本としてはミックスでのメダルも目指しているので、本番に向けて合宿を組みながらチームを作り直し、強化していければと思っています」(大河原監督)

本番まで約5ヵ月。パラアーチェリー日本代表の動向にぎりぎりまで目が離せそうにない。

【東京2020パラリンピック国内最終選考会(開催国枠)および男子W1選手選考会】

リカーブ男子オープン:
1位 長谷川貴大(1849点) 2位 寺田博之(1450点)

コンパウンド男子オープン:
1位 宮本リオン(2039点) 2位 大塚忠胤(1943点) 3位 藤井正臣(1921点)

コンパウンド女子オープン:
1位 永野美穂(1891点)  2位 平澤奈古(1854点)

男子W1オープン:
1位 大山晃司(1848点)

選考会は本番と同じ夢の島アーチェリー場で行われた

text by TEAM A
photo by X-1

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