平昌パラ前哨戦で日本が得たもの ジャパンパラアイスホッケーチャンピオンシップ

平昌パラ前哨戦で日本が得たもの ジャパンパラアイスホッケーチャンピオンシップ
2018.02.05.MON 公開

3月9日から開催される平昌2018冬季パラリンピックには、アイスホッケー(旧アイススレッジホッケー)の世界上位国8ヵ国が出場し、金メダルをかけて熾烈な戦いを繰り広げる。昨年10月にスウェーデンで行われた最終予選で平昌パラリンピックの出場権を勝ち獲った日本は、2大会ぶりにパラリンピックの舞台へカムバックする。

苦境を乗り越えてつかんだ平昌の出場権

バンクーバーパラリンピック後にアイスホッケーを始め、攻撃の中心選手となった熊谷

2010年にバンクーバーパラリンピックで銀メダルに輝いた後、8年間パラリンピックから遠ざかっていたチームは、苦境を乗り越えた。それぞれの勝利への執念が発揮されたのは最終予選。初戦のドイツ戦に照準を合わせ、試合開始直後に熊谷昌治が先制点をもぎ取って波に乗り、スタートダッシュに成功。その後も、少ないチャンスをきっちりとものにし、5ヵ国中2位で3位以上に与えられる平昌への切符をつかんだ。

帰国した選手からは、この8年間がいかに長かったか語られることが多かった。もちろんパラリンピック本番への危機感を口にする者もいたが、このときはそれよりもパラリンピック出場を決めて安堵する気持ちのほうが勝っていたのかもしれない。
そして、それから3ヵ月が経ち、世界最高の舞台・パラリンピックを前に日本は再び正念場を迎えている。

長野で行われた4ヵ国対抗戦。大量失点から得た課題と収穫

1月7日から5日間にわたって開催された「2018ジャパン パラアイスホッケーチャンピオンシップ」は、平昌パラリンピックに出場するチームばかり4ヵ国を集めた“パラリンピックの前哨戦”だった。本番前に国内で行われる最後の大会ということで、最終予選を勝ち抜いたたくましい日本チームに期待がかかったが、予選を振り返ると韓国に1-9、チェコに3-4、ノルウェーに0-8と連敗。準決勝は本番の予選で対戦する韓国と再び対戦するも0-5で力の差を見せつけられると、3位決定戦も同じく本番で同じ予選グループのチェコを相手に0-4で試合終了。大会を通して5試合で30失点という惨敗ぶりに、16年前から日本代表を指揮する中北浩仁監督も「アメフトみたいなスコア。ここまでの大敗は想定外だ」と頭を抱えるしかなかった。

司令塔の高橋ら中心選手がチームの立て直しを誓った

平昌パラリンピックではいきなり地元・韓国と激突

日本は、現在世界ランキング7位に位置するが、2010年のバンクーバーパラリンピックで銀メダルを獲得していて平昌パラリンピックでメダル獲得を目標に掲げる。しかし、メダル争いに絡むためには予選グループ2位以上で準決勝に進出する必要があり、バンクーバー、ソチと2大会連続でパラリンピックを制している王者・アメリカ、今大会で大敗した韓国(世界ランキング3位)とチェコ(世界ランキング6位)がその予選グループの相手となる。

準決勝進出を目指すためには予選グループで2勝以上が求められ、そのカギとなるのが韓国戦とチェコ戦だ。ボディバランスに優れスピードのある選手が多い韓国は、今大会ではパワーでも速さでも日本を圧倒した。一方のチェコも大きな身体で鉄壁のセーブを見せるGKミハル・バペンカを中心に、日本の前に立ちふさがった。2チームとも一筋縄ではいかない相手だが、まず日本が着手すべきなのは守備の立て直しだろう。もちろんアイスホッケーでは得点しなければ勝利をもぎ取ることはできないが、今の日本は大量失点してしまうとそこから挽回することは難しいと言える。とにかく耐えて失点を防ぎ、少ないチャンスを確実にものにする戦い方が必要だ。選手たちもそれを肌で感じたようで、「守備のフォーメーションがバラバラだった」と攻撃の要である熊谷が、まず守備について反省を口にした。キャプテンの須藤悟は「(大敗だったが)わけのわからない失点ではない。本番を戦えるように残りの遠征と合宿で準備をしていく」とポジショニングの悪さを認識するとともにその徹底を誓った。

また、この一週間後にイタリアへ遠征した日本は、4ヵ国出場の国際大会でアメリカとも対戦。予選で0-8、準決勝で0-9のスコアで大敗を喫した。

本番を目前にした惨敗だが、選手も自信を失っている時間はない。平昌パラリンピックの最終予選では、わずかなスキを見逃さない集中力、パックに食らいつく執念、全員が同じ戦術のもと意思統一された組織力を日本の戦いぶりから感じることができた。その結果、絶対に負けられない戦いを制してパラリンピック切符を手にすることができたのだ。日本チームのギアはもう一段上がるはず。今回の敗戦が平昌パラリンピックに向けた起爆剤となり、返り咲いた大舞台で巻き返すことを期待したい。

平均年齢40歳超で8年ぶりの大舞台へ

大会後に中北監督が内定選手を発表した

1月22日、日本パラリンピック委員会は、平昌パラリンピックの日本代表選手17人を発表した。日本代表選手団の主将も務めるチームキャプテンの須藤(47歳)、1998年の長野パラリンピックにも出場している“20年戦士” 吉川守(48歳)と三澤英司(45歳)、61歳のGK福島忍の他、バンクーバーパラリンピックの後に競技を始めた熊谷(43歳)ら8人の初出場組も。メダル獲得を目標に掲げるアイスホッケー日本代表は新たな歴史を作れるか。

text by Asuka Senaga
photo by X-1

平昌パラ前哨戦で日本が得たもの ジャパンパラアイスホッケーチャンピオンシップ

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