パラリンピック初出場への挑戦! 2018IBSAゴールボール世界選手権を現地レポート(パラリンピック競技・ゴールボール|男子)

パラリンピック初出場への挑戦! 2018IBSAゴールボール世界選手権を現地レポート(パラリンピック競技・ゴールボール|男子)
2018.06.25.MON 公開

世界の強豪チームが4年に1度、頂点を目指してしのぎを削るのが「2018IBSAゴールボール世界選手権大会」。日本女子は5位だった一方、日本男子は16チーム中9位という結果だった。

優勝を喜ぶブラジル。2位はドイツ、3位はベルギーだった ©JGBA

決勝トーナメント進出を逃した日本男子

前回大会も予選敗退。9位は過去最高順位ではあったが、池田貴ヘッドコーチは、「悔しい。もっと(上に)行けたと思う。それだけの力はついている」と無念さをにじませた。鍛えてきたチームへの自信と手応えが大きかったからこそ、悔しい気持ちは強いのだろう。

今大会には東京2020パラリンピックへの出場権もかかっていた。日本男子は開催国として出場権を得てはいるが、今大会でメダルを獲得し、自力でパラリンピック初出場をつかむことを目標に置いていた。

まずは、8チームずつに分かれたグループリーグで上位4チームに入り決勝トーナメント進出を目指した。世界ランキング15位の日本は格上のチェコ(世界ランキング13位)を11-9、カナダ(同14位)を11-6で下し、エジプト(同27位)には10-0(※)で勝利し3連勝。
※10点差コールド

いい流れをつかんだかに見えたが、4試合目が大きなヤマだった。リオパラリンピック銅メダルのブラジル(同1位)と対戦して、前半は食らいつき2-2で折り返したが、地力に勝るブラジルに後半は点差を広げられ5―9で敗れた。

以降は、イラン(同7位)に8-11、ドイツ(同4位)に4-7と連敗。そして、勝てば決勝トーナメント進出となる予選プール最終戦で、リオパラリンピック銀メダルのアメリカ(同8位)に3-13でコールド負けを喫した。

16ヵ国が熱戦を繰り広げた ©Kyoko Hoshino

若手ふたりは成長の糧に

キャプテンの信澤用秀は、「重要と位置付けた前半3試合でしっかり勝てたのはチームとしての成長の証。攻守とも世界に近づけているという手応えもあった。ただ、あと一歩勝ちきれなかったのは個々のスキル不足」とチームの現状を振り返った。

落ち着いたプレーを見せた副キャプテンの小林裕史は、「アメリカ戦でチーム全員が最後まで諦めず、声を出して戦えたのはよかった。個人的にはスローのパワーと質を高められるよう肉体やフォームの改造などに取り組みたい」と意気込んだ。

ウィング(※)の伊藤雅敏はベテランらしく安定した守備を見せたが、「攻撃面では期待に応えられず、ふがいない」と話し、また、高速のグラウンダーや多彩なバウンドボールなど世界の攻撃力の進化も実感。「自分も、質の高いバウンドボールの習得に挑戦したい」と覚悟を口にした。
※コート上の3人はポジションが決まっており、中央をセンター、両サイドをウィングと呼ぶ。

普段は一人でセンターを担う川嶋 ©JGBA

守備の要で司令塔のセンター川嶋悠太は、突き指のアクシデントで少しコートを離れた以外は全試合を通し、よいコンディションで試合に臨めたという。「これまでは大会後半に疲労があったが、今回は体力トレーニングの成果を感じた。よかった点は継続し、個人のスキルもアップさせながら、チームとしての底上げもはかりたい」と話した。

世界選手権初出場組の若い二人の活躍はチームに刺激と厚みを与えた。金子和也は世界でも珍しいサウスポーが強みで、ブラジル戦の2得点をはじめ、得点源として期待通りの活躍を見せた。「世界選手権は完成された選手が集まる場所だった。負けたのは悔しいが、やるべきこともたくさん見つかった。『次は、やってやるぞ』という思いでいっぱい」。貴重な経験を糧にさらなる飛躍を期す。

また、試合途中からの起用が多かった山口遼河は、「得点と流れを変えるムードメーカーという役割は果たせたかな」と笑顔を見せたが、「予選敗退は悔しい。プレッシャーのかかる場面での踏ん張りなどに世界との差を感じた。謙虚に受け止めて努力したい」と一層の成長を誓った。

チーム最年少の金子(手前)©Kyoko Hoshino

課題は多彩なボールに対応できる守備力

池田ヘッドコーチは、「世界で戦える武器をもち、チームとしても戦えること」をポイントに選考した今大会の6選手は、「全員がしっかりと持ち味を発揮してくれた」と評価する。

一方で、「勝負どころでの守備力」を課題に挙げた。世界のエースたちのボールは時速60~70kmというパワフルさで、一口にバウンドボールといっても手元で伸びたり、かなり高低差があったりと多彩だ。そうしたクセのあるボールを決め球にして攻めてくる。さまざまなボールを取り慣れることが、安定した守備の第一歩だ。

だが、日本人同士での練習では球種も球質も限られており、質の高いボールを受けられる機会が少なく、進化を続ける世界のボールに対応しきれていないのが現状だ。日本選手にも海外勢のようなボールを習得し、そうして攻撃力が上がれば、それは同時に守備力の強化にもつながる。

得点王のレオモン・モレノ・ダ・シルバ(ブラジル) ©JGBA
守備に定評のあるドイツのMaichael Feistle ©JGBA

まずは、外国勢のボールを受ける機会を増やすため、日本ゴールボール協会は今年1月に国際強化大会を新設。5月には海外強豪国を招へいし、合同キャンプと試合を組み合わせた強化イベントを初めて実施した。こうした取り組みは今後も継続し、選手強化に努めていきたいと池田ヘッドコーチは話す。

圧倒的なパワーとスキルを誇るブラジルやリトアニア、鉄壁の守備を見せたドイツやアメリカなど、世界も日々、成長している。あと2年でどれだけ迫り、越えらえるか。それぞれが味わった今大会の悔しさをバネに、TOKYO 2020に向ける挑戦は、もうスタートしている。

※世界ランキングは2018年5月31日時点

text by Kyoko Hoshino
key visual by JGBA

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