子どもアスリートの食事。最初に押さえておきたい献立の考え方

子どもアスリートの食事。最初に押さえておきたい献立の考え方
2022.04.13.WED 公開

人が生きていく上で毎日しなければいけないことのひとつが食事。しかも、成長期にあってスポーツをしている子どもアスリートの場合は、どんな食事が良いのか、迷う親御さんも多いのではないか。そんな人々の悩みに答えるなどさまざまな発信を行っている人気ブロガーであり、『スポーツを頑張る子どもにエール! はるはるママの栄養満点ごはん』(KADOKAWA)の著者、はるはるさんに、子どもアスリートの食事はどのように考えれば良いのかを伺った。

子どもアスリートの食で大事なのは「成長」

はるはるさんは、自身も競泳選手として活躍したアスリートであり、サッカーをするお子さんふたりを育てながら、アスリートフードマイスター2級の資格を取り、子どもアスリートの食に関して発信を続けている。はるはるさんのもとには、スポーツをする子どもを持つ親御さんからの悩みが多く寄せられているそうだ。

「栄養学の教科書に沿った完璧な食事は、作ろうと思えば作れます。でも、子どもの状態は日々違いますし、試合前や試合当日と試合後、またテスト勉強があって夜寝るのが遅くなりがちな時など、その時にあった食事というのは教科書通りにはいきません。それが子どもアスリートの食事の難しい点ですね。その点私は、教科書通りというより、自分の息子のために作る毎日の食事をリアルタイムにブログで発信していったので、それが多くの親御さんの共感を呼んだのだと思います」

特に子どもの場合はスポーツをしているしていないに関わらず、「成長」を妨げるような食事であってはならない。その点も忘れてはならないことの一つだとはるはるさんは言う。

「私は“今の体は今まで食べてきたものから作られ、未来の体は今食べているもので作られる”という言葉を大事にしています。特に子どもの場合は、成長期にあるということがキーポイントです。大人と違って子どもは、まず成長する分の栄養素とエネルギーが必要で、スポーツをしている子の場合は、さらに活動で失われた分の栄養素とエネルギーが必要となります。スポーツをしていると、一番大事なのは素晴らしい結果を残すことと考えがちですが、大前提は成長すること。大好きなスポーツをしているからこそ、しっかり成長させなくてはなりません。食事が成長の妨げにならないよう、その分もたくさん食べさせるように努力と工夫が必要になるんです」

品数より、使う食材を多くすることを目標に

著書『スポーツを頑張る子どもにエール! はるはるママの栄養満点ごはん』より、「鶏肉のみそバタ焼き献立」。発酵食品のみそとにんにくで食欲増進、スタミナアップできるメイン。かぼちゃの煮物や5品目の中華和えは、メインを作る間に電子レンジを利用して時短できる。きのこたっぷりしょうがスープは、食物繊維も摂れて胃腸が温まるので、元気にスタートしたい朝ご飯にぴったり。

アスリートの場合、たんぱく質の摂取が重要だと言われることが多いが、近年たんぱく質の取り過ぎはかえって悪影響がでることが指摘されている。はるはるさんは成長期にある子どもの場合はビタミンやミネラル(カルシウム、鉄分)など不足しがちな栄養素に注目し、足りない状態にならないよう気をつけてほしいとアドバイスするのだそうだ。

「たんぱく質は、体重によってどのぐらい必要かという量がわかるので、それを3食でバランス良く摂れるように。またお米は、我が家の場合はその日の活動量にあわせて、グラム単位で計るなど微調整はしていました。そして意外に見落としがちなのが、ビタミン、ミネラル(カルシウム、鉄分)などの栄養素です。意識していないと不足してしまうので気を遣った方がいいですね」

子どもアスリートにとって食事が重要なのは分かっている。しかし、親は食事だけを作っているのではない。料理にかける時間がない人、料理はあまり得意じゃないという人も多い。そういう人はどうしたらいいのだろうか。

「私がよくお伝えしているのは、メニューの品数を多くすることを目標にするのではなく、できるだけ多くの食材を使うことです。アスリートの食事というとおかずがいっぱいなイメージを持つ方が多いと思うんですが、それは時間に余裕があって料理が得意な方なら可能なこと。私もそうでしたが多くの親御さんは仕事を持っていたり、下に手のかかるお子さんがいたり、試合当日は観戦もしたいですよね。そうすると、なかなかみっちり台所に立つのは難しいですよね。でも、品数ではなく使う食材を多くすれば、一品でもより多くの栄養素を取り込むことができるし、彩りも豊かになるので一石二鳥です」

はるはるさんがすすめるメニューのひとつは具だくさんのスープや味噌汁。忙しかったり料理が苦手だったりしても、まず具だくさんのスープ・味噌汁を作ることを目標にすれば、それほど負担にはならないのではないかと言う。

「お惣菜を買ってきたっていいんです。お惣菜だからダメではなく、今日はメインはお惣菜だけれど、トマトだけでも切ろうかな。切るのが面倒だからミニトマトにしよう、でもかまいません。お腹が空いたからカップ麺を食べるのか、納豆ご飯にするのか。結果は大きく違ってくるのは想像できると思います。そして、最後に胡麻を振るとか、あと一工夫と一手間を惜しまないこと。それだけでも食事は大きく変わりますよ」

食事を考えることは親と子の絆を強くする

冒頭ではるはるさんは、子どもの状態を見ながら食事を考えるのがポイントと語った。ただ見ているだけでは分からないこともあるだろう。思春期の、特に男の子であったりするとコミュニケーションが難しいケースもありそうだ。

「子どもアスリートの食事は、親と子の二人三脚だと思うんです。親が一生懸命食事を作っても子どもに食べる意欲がなければだめですし、子どもは一生懸命強くなりたいと思っていても、親が食事で協力してくれなければ栄養やエネルギーが不足してしまったりします。親子が同じ思いで同じ方向を見て進むことができるのは、今のこの時期しかないと思うんです。コミュニケーションを取りながら二人三脚で取り組んでいけば、信頼関係が生まれ、絆も強くなるのではないでしょうか」

はるはるさんはふたりの息子さんを育てた。長男はすでに社会人になって独立し、次男もこの春から大学入学で家を出ることになるそうだ。

「たとえば中学生ぐらいの男の子だと、普段はあまり会話がなくてウザがられたとしても、食事はこういう風にした方が良いよとか、テスト前だから消化のいい食事にしようねとか話していくことで、コミュニケーションは取れると思います。うちはその点、息子たちとよく話しました。食事に関する情報を共有したり、一生懸命台所に立って自分のために食事を作ってくれる親の姿を見たら、子どももわかるはずなんです。その時には理解できなくても、感じる部分はきっとあるんじゃないでしょうか」

はるはるさんが一生懸命食事を用意した結果、サッカーをしているふたりの息子さんは、ケガをほとんどしなくなり、選手同士で身体がぶつかっても“アタリ負け”しなくなった。ハードワークができるようになりバテなくなったなどの効果を自覚するようになったそうだ。

「うちは、長男にはある程度大人になってから、僕はもう十分やってもらったから、あとは弟のためにやってあげて欲しいと言われました。そんな次男も家を出ることになるんですが、寂しいというより今はやりきった感しかないですね」

親が一生懸命工夫を凝らし食べてほしいと思っても、スポーツをしている子どもたちの中には、さまざまなプレッシャーに押しつぶされそうになって、食べることができず吐くことを繰り返す子どももいる。

「そういう相談を受けたときは、まず“じゃあ食べるのをやめましょう”と言いました。食べることももちろん大事なんですが、まずは食べられないというマイナスの状態を普通に戻すこと。健康な状態に戻さなければ目標やタイムどころか、好きなスポーツさえもできなくなってしまいます。食べるというプレッシャーから逃れさせてあげると、また食べようという意欲が戻ってきますから」

はるはるさんは、サッカーをする息子さんふたりの食を支え、今はやりきった感があると語った。子育てが一段落した今後は、同じようにスポーツをする子どもの食事に関してさまざまな悩みを持つ親御さんに向け「オンライン授業」をスタートするなど、活動を広げていくそうだ。食事には、確かに親と子を繋ぐ強い絆になる可能性がありそうだ。家族の助け、力になる、はるはるさんの今後の活動に期待したい。

PROFILE はるはる 
北海道出身。ライブドアブログ「はるはるの子どもアスリート栄養満点ご飯」運営。サッカーを頑張る息子2人のためにスポーツ栄養を学び、アスリートフードマイスター2級を取得。小学校2年生から大学までの競泳選手としての経験も活かして、子どもたちのスケジュールや体調に合わせた栄養満点の献立作りに励んでいる。「どこでも手に入る食材や調味料で、簡単に美味しくバランスよく」がモットー。


<参考図書>
『スポーツを頑張る子どもにエール! はるはるママの栄養満点ごはん』

はるはる著/KADOKAWA
サッカーチームで活躍する息子2人を育てたスポーツ飯。不足しがちな栄養素別、目的別など、いつ何を食べたら良いのかがわかる55の献立、154のレシピ。子どもの体調に合わせ、苦手なものも食べられるようになる、大人気ブログの書籍化。

text by Sadaie Reiko(Parasapo Lab)
phot by 高木昭仁(著書料理写真)、Shutterstock

子どもアスリートの食事。最初に押さえておきたい献立の考え方

『子どもアスリートの食事。最初に押さえておきたい献立の考え方』