サッカー少女から車いすラグビー日本代表へ! 連覇のカギを握る西村柚菜の素顔

サッカー少女から車いすラグビー日本代表へ! 連覇のカギを握る西村柚菜の素顔
2026.06.05.FRI 公開

ブレイク必至のスター候補を紹介するシリーズ“TOP PROSPECT(有望株)”。今回は、2028年のロサンゼルスパラリンピックで連覇を目指す車いすラグビー日本代表の期待の新戦力、西村柚菜(にしむら・ゆうな)選手です。サッカーに打ち込んでいた少女が、パラ陸上競技で日本記録を打ち立て、さらには車いすラグビー日本代表へ――。ひたむきに世界の舞台へ駆け上がるその軌跡と、彼女の素顔に迫ります。

西村 柚菜(にしむら・ゆうな)|車いすラグビー
2002年静岡県伊東市生まれ。大学2年生のとき、講義中の事故で車いす生活に。リハビリ中に、パラスポーツ界のレジェンド・土田和歌子さんのパラトライアスロンの映像を見たことでパラスポーツに興味を持ち、翌2023年からパラ陸上競技を始め、T52クラスの100mと400mで日本記録を樹立。もともとサッカーをやっていたことから、チームスポーツへの思いも強く、パラ陸上競技と並行して2025年から本格的に車いすラグビーに挑戦。現在は貴重な女子のミッドポインターとして、車いすラグビーでロサンゼルスパラリンピック出場を目指している。地元・伊東名物のイカの口の干物「めぼう」が好物。

改めて実感するチームスポーツの喜び

――車いすラグビーは男女混合の競技。もともと男子の中に混ざってプレーしていました。

西村柚菜(以下、西村):幼稚園からサッカーを始めて、小学生までは男子と一緒にプレーしていました。だから、私にとっては(男子に混ざる)やりやすさがすごくあります。ガツガツやれるし、チームスポーツの楽しさも改めて実感しています。陸上競技も魅力がありますが、車いすラグビーは同じ障がいの仲間と一緒に練習をして、同じ時間を過ごせる。そこにチームスポーツならではの良さをすごく感じます。

女子サッカーではフォワードとサイドハーフを担当。憧れていたのは、元なでしこジャパンの司令塔・宮間あやさん
――そんな中、日本代表の強化指定メンバーには(西村選手を含め)3人の女性選手がいます。普段はどんな話をしていますか?

西村:香衣さん(倉橋香衣選手)やたまさん(月村珠実選手)には、たくさんお話を聞いています。先輩として、ラグビー以外の日常生活のことや、「遠征先ではどうしていますか?」というのをすごく質問していて。持ち物や、飛行機に乗るときのクッション選びなどは香衣さんに聞いて、同じものを買ったりしています。障がいを負ってから海外に行く機会は全然なかったですし、実は(褥瘡のリスクなど)心配もあるんです。移動時間が長くなればなるほど車いすに座っている時間も増えるので、そのあたりをどう工夫しているのかなって。いつもすごく助けてもらっています。チームに女性選手がいることで、自分にとっても大きな心の拠り所になっていますし、本当にありがたいなと感じています。

大学1年生のときからずっと刈り上げ。「短くても結べるからやめられないんです」
――5月に千葉で開催された国際大会には、車いすラグビー世界最強の女子選手ともいわれるアメリカのサラ・アダム選手も来日。何かお話ししましたか?

西村:通訳さんを通して「あなたに憧れています」「見習って頑張りたいです」という思いを伝えました。そうしたら、サラ選手から「同じ舞台であなたのような、一緒に戦える選手を探していたの。大きな舞台で対戦できるのを楽しみにしているよ」と言っていただけて。その言葉を胸に、私ももっと頑張らなきゃいけないな、と大きな刺激をもらいました。

サッカーの経験も武器に

――車いすラグビー日本代表の中谷英樹ヘッドコーチは、西村選手について「スペースの使い方がうまい」と評価しています。サッカー経験が活きていると思いますが、ご自身ではどう捉えていますか。

西村:車いすラグビーのコートはサッカーに比べて狭いので、最初はとにかく「広く使おう」と意識していました。でも、プレーを重ねるうちに、今は逆に「すごく広いな」と感じています。サッカーのようにポジションごとの範囲が決まっておらず、全員がコート全体を走らなければいけないからです。その狭いコートの中でいかにスペースを見つけ出すか。そこは、サッカー時代に培った視野の広さが活きていると感じますし、さらに視野を広げられるよう意識してプレーしています。

――サッカーに夢中だったころは、どんな生活を送っていましたか。

西村:土日も含めて、毎日ずっとサッカー漬けの生活でした。小学生のときは、練習が終わって外で遊んで、家に帰ってきたらただ寝るだけ、みたいな(笑)。 中学生になってからは、地元(伊東)から沼津のチームの練習に参加するため、電車で通っていました。学校が終わるとすぐに準備をして、母が作ってくれたおにぎりを食べて電車に飛び乗り、帰宅するのは夜の10時半や11時。高校からは寮生活でした。大学(埼玉)で一人暮らしを始めてからは自炊もしていましたね。本当に多忙な毎日でしたが、時間が空くと一人でふらっと東京ディズニーリゾートに行くこともありました。一人暮らしの部屋でよく観ていた、映画『リメンバー・ミー』も大好きです。

磐田東高時代は女子サッカーで全国大会に出場。尚美学園大に進学し、指導者を目指していた矢先の事故だった
――そんな西村選手のリフレッシュ方法は?

西村:愛犬の散歩です。ケガをして退院したあと、それまでの多忙な日々と違って家にいる時間が長くなり、すごく寂しさを感じてしまって……。両親にお願いして、実家でポメラニアンとチワワのミックス犬を飼うことになりました。 うちに来て今3歳になる、名前は「ちび」というよく寝る子です。私が遠征から帰ってくるとちゃんとお迎えはしてくれるんですけど、そのあとは「先にベッド行ってるねー」という感じで、すぐに先に寝ちゃいます(笑)

遠征から帰宅すると、いつも「ちび」が嬉しそうにお迎えしてくれるという。「ちびがうちにきてすぐパラ陸上競技を始めたので外出が多くなり、寂しい思いをさせていると思います」
――ロサンゼルスパラリンピックの目標を教えてください。

西村:これから少しずつ経験を積んで、まずはパラリンピックという大きな舞台に出場したいです。そしてサラ選手のようにアグレッシブに、男子に負けないくらいの気合でプレーしたい。「女子でもここまでできるんだよ」という姿を発信して、自分のプレーで世界に見せていけたらいいなと思っています。

*    *    *

パラ陸上競技のトラック種目でも世界を見据え、さらには「いつかはトライアスロンにも挑戦したい」と語る西村選手。目の前の競技にまっすぐ突き進む彼女は、まだまだ無限の可能性を秘めている。

日本代表の背番号は、パラ陸上競技のクラス(T52)と同じ「52」

text by Asuka Senaga
photo by Hiroaki Yoda

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