東京が生んだ新星たちと、ロサンゼルスで頂点へ駆け上がる新戦力 ~PLAYBACK 愛知・名古屋アジアパラ~
愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会(以下、アジアパラ)では、パリのメダリストのみならず、ロサンゼルス2028パラリンピックを見据えて牙を研ぐ新星たちもまばゆい輝きを放った。
嶋津雄大「ゴール後の景色を忘れないように」
パラ陸上競技・男子5000mの嶋津雄大(視覚障がい/T13)が、自身2度目のパラレースで頂点に立った。普段は実業団のGMOインターネットグループ陸上部で健常者とともに練習を重ね、2025年に「二刀流」への挑戦を公言。自身初のパラ国際大会となった2026年4月の「ラバト2026WPAグランプリ」(モロッコ)では14分3秒45の世界新記録を樹立した。今大会でも序盤から独走態勢を築き、記録更新への期待が高まった。しかし、大会の1ヵ月半前に左足首を故障した影響もあり、1000m過ぎからは苦しい走りを強いられた。それでも粘り強い走りを見せて14分13秒95で堂々の1着フィニッシュ。「世界新記録が出せなかったのは少し心残りだが、今の全力は出せた」とレース後はすがすがしい表情を浮かべた。

photo by Takamitsu Mifune
箱根駅伝やニューイヤー駅伝といった大舞台を経験してきた嶋津にとっても、自国の大舞台での単独走は特別な緊張感があったという。「大舞台で単独、周回で常に同じところを走り、視線を集め続ける状況には強い緊張感があった」と明かした。
「声援を浴びながら見たゴール後の景色は本当にきれいで、一つの夢が叶いました。この記憶を忘れないよう、後ろを振り返って競技場を見ました」
パラの大舞台で得たかけがえのない経験を胸に、嶋津は再び駅伝の舞台へと戻る。パラ陸上競技と実業団という二刀流の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
河合紫乃「このタイトルを獲りたかった」
パラバドミントンの河合紫乃(立位/SL3)も、初出場で初優勝の快挙を成し遂げた。ロサンゼルスでの金メダルを視界に捉える河合は、パリ2024パラリンピック金メダリストの肖祖賢(中国)を破ることに強いこだわりを持って臨んだ。狙いを定めたコースへのスマッシュが面白いように決まり、2-0のストレート勝ち。「このタイトルを獲りたかった」と歓喜の涙を流した。

photo by Takamitsu Mifune
「日本開催ということで、多くの方に試合を見ていただけた。東京・パリの金メダリストである梶原大暉や里見紗李奈が活躍する車いすクラスだけでなく、立位クラスにも素晴らしい選手がたくさんいることを知ってもらいたい」
久野竜太朗「世界一になるために落とせない」
2023年に本格的なキャリアを始めたばかりのパラ陸上競技・男子100mの久野竜太朗(視覚障がい/T12)は、生まれ育った愛知県のトラックで躍動した。ホームの大声援を背に受け、予選でアジア記録を更新。迎えた決勝ではさらにタイムを0秒03縮める10秒85を叩き出し、金メダルを掴み取った。

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レース後、久野は手応えとともに貪欲な向上心をのぞかせた。
「もう少しタイムを伸ばすつもりだったので、悔しい気持ちもある。世界一になるためにこのパラ陸上競技の世界に入ってきた。アジアの舞台で負けていられないし、ここは絶対に落とせない場所だった」
昨年の「ニューデリー2025世界パラ陸上競技選手権」は2位で、視線はすでに来年の世界選手権、そしてロサンゼルスパラリンピックの金メダルへと向いている。
木村敬一と杉浦佳子が語る、大会の「光と影」
東京パラリンピックをきっかけに、競技の門を叩いた選手たちも躍動した。
3種目に出場したパラ卓球の三浦稟々(立位/クラス10)は、もともと競技経験はあったものの、テレビ中継で東京大会を目にしたことを機にパラ卓球へ参戦した。車いすバスケットボールに触発され、「車いすでもスポーツができる」と背中を押されてラケットを握った池山優花(車いす/クラス3)も、初のアジアパラの舞台を踏んだ。

photo by Takamitsu Mifune
パラ陸上競技・女子砲丸投げの堀玲那(知的障がい/F20)は自身のアジア記録(12m81)を大幅に塗り替える13m57をマークし、「自国開催の大舞台で本当に楽しかったし、幸せだった」と満面の笑みを見せた。堀もまた東京パラリンピックに心を動かされ、パラリンピック出場を志す一人だ。
「障がいがあってもスポーツを通じて交流できるのは素敵だなと思って始めた。この声援を覚えているので、世界選手権やロサンゼルスにつなげて、ロサンゼルスでは絶対にメダルを獲りたい」と力強く誓った。
開幕からメダルラッシュが続いたパラ水泳日本チームは、金メダル24個を含む計71個のメダルを量産した。自身5度目の出場を果たした木村敬一
(視覚障がい/S11)は、金2、銀1の計3個のメダルを獲得。全レース終了後、東京大会のレガシーに触れてこう分析した。
「東京パラリンピックが無観客開催となったことで、かえってメディアでの露出やライブ配信が増加し、パラスポーツへの関心や熱気の高まりにつながったのではないか」

photo by Takamitsu Mifune
一方で、同じく東京・パリで頂点に立ったパラ自転車競技の杉浦佳子(四肢障がい/C3)は、静岡会場の様子について複雑な思いを明かした。
「これまでのアジアパラの中で、最も報道陣が少なく、観客も少なかった。(2018年の)ジャカルタ大会では立ち見が出るほど観客が埋まり、メディアも殺到していた。(2023年の)杭州大会でも多くのボランティアや手厚いサポートがあり、報道も非常に多かった。誰もいないミックスゾーンを他国の選手たちに歩かせてしまうのが本当に申し訳なく、『日本、もっと頑張ろう』と感じてしまった」
自国開催だからこそ、海外勢を迎えるホストとしての思いも強い。「私たちはまだいいが、はるばる日本へ来てくれた海外の選手たちにもっと注目してほしかった。走っている選手たちに『頑張れ』と声援を送ってもらえたら、誰もが力になる。今後またこうした機会があるならば、自分自身もどうすれば観客を呼び込めるのかを考えなければならない」

photo by Kazutaka Inoue
華やかなメダルラッシュの陰で、課題も浮き彫りとなった。拍手と歓声が選手の背中を押す力になるからこそ、この温かな応援の輪が日本中へ広がっていってほしい。
text by TEAM A
key visual by Takamitsu Mifune






