編集:いよいよ来年は2020年ということで、オリンピックとともにパラリンピックが東京で開催されます。先ほど、普段はなかなか障がいのある方と接するチャンスがないというお話もありましたが、パラリンピック観戦やパラスポーツに興味を持ってみることも、大きなきっかけになりそうですね。
マセソン:スポーツが入り口だと第一印象がまるで違うでしょうね。パラアスリートの活躍を見て「かっこいい」「すごい」と感じることで、障がいをポジティプに捉えられるきっかけにも、インクルーシブ社会について親子で考えるきっかけにもなると期待しています。
編集:確かに私も以前見かけた記事で、子どもたちが義足のパラアスリートの姿を見て「仮面ライダーみたいでかっこいい!」と目を輝かせていた、といったお話を読んで、なるほど!そう捉えるか(笑)と、印象的で記憶に残っています。
マセソン:先入観や固定観念に邪魔されない子どもたちは、本当に発想が豊かですよね。最初の伝え方、伝わり方で、見え方や捉え方が本当に変わってくると思います。
編集:また、私自身パラスポーツに関わるようになって、単純に競技が「面白い!」と興味が湧いて、そこからインクルーシブ社会について知ったことで、人としての在り方を考えた時にすごく広がりが出たように感じています。これは是非とも子どもたちにも知って体験して欲しいと思いました。
マセソンさんが開発・普及に深く関わられているという、国際パラリンピック委員会公認の教材「I’mPOSSIBLE(アイムポッシブル) 日本版」が、まさにそんな役割を果たしていると伺いました。5月に第三弾が登場するとのことなのですが、「I’mPOSSIBLE」とは、どんな教材になりますか?
マセソン:パラリンピックを題材に、工夫の仕方や発想の転換などについて学ぶことで、インクルーシブな考え方を学んだり、考えたりすることが出来る教材です。小学生版と中高生版があります。「I’mPOSSIBLE」という名称には、不可能(Impossible)だと思えたことも、考え方を変えたり工夫したりすれば、できるようになる(I’m possible)という、パラリンピックの選手たちが体現するメッセージが込められています。
全国の学校に配布しており、任意で実施していただくプログラムなのですが、特別な講師がいなくても、教材を通して先生方が直接子どもたちにパラリンピックやパラスポーツの魅力、インクルーシブな考え方について教えることができるのが特徴です。特に日本版は、パラリンピックやパラスポーツの知識がない先生でも手軽にパラリンピック教育に取り組んでもらえるように配慮した作りになっていて、「分かりやすい」「使いやすい」と先生方からもご好評をいただいております。授業を受けたお子さんの保護者の方たちからも評判の良い教材なんです。
パラリンピック教育にはリバース・エデュケーション(子供が親や祖父母に教える逆向きの教育)の力があると言われています。自宅で「おうちの人に説明してみよう。一緒に考えよう」というような家族を巻き込んだ宿題なども盛り込まれ、子どもたちと一緒に先生や家族も学べる教材というのもポイントですね。
第一弾は「パラリンピックスポーツの基礎知識」、第二弾は「パラリンピックの価値」を伝える内容となりますが、まもなく公開される第三弾は、「パラリンピックを通してインクルーシブ社会を作るにはどうしたらいいか」といった内容になっていますよ。(小学生版は2019年版が第三弾。中高生版は2019年に第二弾、翌年に第三弾が発送予定)
編集:授業を体験した子どもたちからも、「すごく楽しい!面白い!」といった声が多いと伺ったので第三弾もとても楽しみですね。全国の子どもたちにぜひ「I’mPOSSIBLE」を通じたパラリンピック教育を体験してもらって、家族みんなでインクルーシブな考え方を身につけていただき、来年のパラリンピック観戦も盛り上げて欲しいと思います! 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
今回マセソン氏は、私たち周りの大人の言動が子どもたちに与える影響の大きさについて言及しながらも「親は悪くない。多様性に慣れていないだけなんですよ。逆に先入観のない子どもから発信されることで、親や周りの大人が学ぶことも多いんです」とおっしゃっていた。今すぐ私たち大人が、インクルーシブなマインドを持つには時間がかかるかもしれない。だがせめて、先入観や固定観念で子どもたちが学んだり体験したりするチャンスを奪わないようしたいものだ。
この記事の<前編>はこちら↓
【未来教育】20年後、子どもたちが世界で活躍するために、知っておくべき「インクルーシブ」な考え方とは?<前編>https://www.parasapo.tokyo/topics/16350