——— なかなか良い結果が出せないアスリートが、自分の偏った「思い込み」や「価値観」に気づいた後は、どうすればいいのでしょうか?
指導者が変わってから結果が出せなくなった、環境が変わってうまく行かなくなった、というように原因がわかりやすい場合は、単純にそれを変えればいいけれど、変えられない状況の時は、自分を変えていきましょう。指導者が原因の場合は、言われたことをそのまま全部やるんじゃなくて、自分にフィットするようにアレンジするなど、うまく対処する方法を見つける。この点では、結局アスリートも会社員と同じで、コミュニケーションスキルが必要になりますね。
それから、「このまま同じことを続けたら、1年後、10年後はどうなっているか?」と自分に問いかけるのもおすすめです。目指しているものにたどり着けるのかどうかを多角的に検証して、自分を変える。ただし、人それぞれに正解があること、正解がひとつでないことを忘れないでください。
——— 正解はひとつしかない、と思い込みすぎている人が多いのでしょうか?
人間は偏った考え方をしがちなんですよ。特に日本人は、学校教育によってそう思い込んでいる人が多く、相反する答えを受け入れにくい。次のステージに進むためには、古い思い込みの蓋を外して、新しく効果的な思い込みを植え付けることも必要になります。
私がコーチングしたプロ野球の育成選手は、球団と契約して、お金をもらい、球団のユニフォームを着ているのにも関わらず、「自分はまだプロ野球選手ではない」という思い込みが強い選手でした。そこで、このまま自分は“育成選手”だと思い続けたらどんな人生になると思うかと訊いたら、「ずっと育成選手だと思う」と答えたんです。このままではダメだと気づいた彼が、たった今から「自分はプロ野球選手だ」と意識するようになったところ、半年後には支配下選手登録されるなど着実にステップアップしていきました。
結局、自分はアマチュアだと思っている人は、負けた時やうまくいかない時に「どうせアマチュアだし」と、無意識に言い訳できるようにしているんですね。
アマチュアでもするべきことをしっかり考えて取り組んでいる人は結果を出している。この意識の差こそが大きな原動力になるので、もし、オリンピックやパラリンピックに出たいなら、たった今から「自分はすでにオリンピック・パラリンピック選手だ」と意識して行動してください。
——— アマチュアではなくプロとして振る舞うということですか?
現状の自分ではなく未来の自分をイメージすると、自ずと行動も変わります。イメージしにくい時は、なりたいレベルの世界に触れる機会を増やしたり付き合う人を変えたりすればいい。お金持ちになりたいのなら、お金持ちが集まる場所へ行く、生活エリアを変える、お店で高級品に直接触れるなど。目標とする世界を部分的にでも垣間見た時に、自分がどう感じるかを知ることが大切です。
もし、その感覚が当たり前になってくれば、次のレベルに進みやすくなるはず。現状に満足できなくなって、心地良かった安全領域から出たくなると思いますよ。
【前編】のお話では、勝負ドコロでうまくいかないのは能力や努力が足らないからだと決めつける前に、根本を見つめ直す必要があるとわかりました。もしかすると、自分でも気づかないうちに、過去の体験や誰かの何気ない一言によって誤った価値観を持ってしまっているかもしれません。思い込みに気づくことは、実は家族や同僚などの身近な人との関係を良好に保つ上でもとても役立つような気がしました。【一流をめざすメンタル術:後編】では、今回のノウハウをベースに『夢や目標を猛スピードで実現させるメソッド』をレクチャーしてもらいます。
【一流をめざすメンタル術:後編】 夢や目標を猛スピードで実現させるメソッドhttps://www.parasapo.tokyo/topics/16203