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東京2020本番会場・海の森水上競技場で初開催! パラカヌー公式戦で見た会場運営

東京2020本番会場・海の森水上競技場で初開催! パラカヌー公式戦で見た会場運営
2019.09.19.THU 公開

健常の大会と同時開催の「日本パラカヌー選手権大会」が6日、そして東京2020大会のテスト大会「READY STEADY TOKYO カヌースプリント&パラカヌー」が12日から15日まで、オリンピック・パラリンピックの会場となる海の森水上競技場で開催された。

東京湾の臨海部に位置する海の森水上競技場

<日本パラカヌー選手権大会>東京2020につながる海外派遣選手一次選考

「2019年度SUBARU日本カヌースプリント選手権大会」と同時開催の「2019年度日本パラカヌー選手権大会」は、30度を超える残暑の中で行われた。

東京パラリンピック内定後初のレースに臨んだ瀬立 ©X-1

最も注目を集めたのは、8月の世界選手権の女子KL1で5位になり、東京2020パラリンピック内定の座をつかんだ瀬立モニカだ。内定後、初めてのレースに臨み「少し気持ちに余裕をもってレースができた」。東京パラリンピックのレース日程も発表され、「来年のメダルという目標に向かって貪欲に向かっていきたい」と力を込める。

その彼女がこの冬、厳しいトレーニングを課す上で大きな励みになるのが、この日の客席の応援だろう。会場と同じ江東区出身の瀬立に、人一倍の温かい声援が送られ、「幸せな時間を過ごせました」とトレードマークの笑顔を見せた。

瀬立以外の選手はこれから厳しい選考レースを戦わなければならない。東京への切符を自力で獲得するには、来年5月のワールドカップでパラリンピック出場枠を獲得しなければならないが、その日本代表になるには今回もしくは来年3月に石川県小松市で開催される記録会で好タイムを残すことが条件となる。

今回4位だった堀江航(男子KL3)は「バランスのとり方やスタートなど改善点が多くある。いいほうのタイムが採用されるので、もう今回のタイムは関係ない」と次回にかける思いをのぞかせた。

次のレースでの巻き返しを誓った堀江 ©X-1

<READY STEADY TOKYO カヌースプリント&パラカヌー>25ヵ国の選手が出艇

「READY STEADY TOKYO カヌースプリント&パラカヌー」では、25ヵ国から選手がエントリーし、来年に迫った東京パラリンピック会場の特徴を確認した。

男子KL2で優勝したRUFINO de PAULO Fernando

先の世界選手権王者に勝った2人のチャンピオン、男子KL2のルフィーノ(ブラジル)、女子VL2のチッピントン(イギリス)は、「素晴らしい会場。美しいし、運営も最高」という手放しで海の森水上競技場を賞賛していた。

ただし、2人が気にしたのは海風だ。チッピントンは「海が近いからどうしても風が強い。こういう環境は珍しいわね。来年はやりにくさとかはあまり考えず、風をモノにして2つのメダルが欲しいわ」と目標を口にした。

笑顔で応える女子VL2のチッピントン

淡水でレースを行うことがほとんどの選手にとって、海水でのレースも違和感につながっていた。男子KL2で8位だった日本の加藤隆典は、「水を舐めると塩辛い(笑)。国内外のいろんな会場に行きましたけど、完全な塩水は初めて。選手によっては、いつもより浮力を感じる選手と、あまり気にしない選手がいるようですね」と振り返っていた。

男子KL2で8位だった日本の加藤隆典

男子KL1を制したエステバン(イタリア)は、「海での訓練はしてこなかったので初めは戸惑った」と打ち明け、今後は海水でのトレーニングを積んでいくことを示唆した。

暑さ対策の実験。雪が降った会場

テスト大会中の13日には、会場の一部に雪が舞った。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、暑さ対策の一環で、午前10時10分、300kgの氷の塊を降雪機で粉砕し、5分間雪を降らせる実験を行った。号音とともに煙突からみぞれのような塊が噴き出し、「わ~」と歓声が上がったが、この日は観客席のごく一部にしか、雪は届かなかった。

会場の一部に降雪機で降らせた雪が積もった

降雪後も、降雪前の観客席の気温25.1度、熱中症の危険度を示す暑さ指数(WBGT)21.9度の数字に変化は見られていない。

岡村貴志メイン・オペレーション・センター総括部長は、「降雪機は8月中旬に出てきた案。できることはすべて試してみようと、短い時間で準備した。全体を冷やすものではなかったが、清涼感は与えられた。観客に楽しんでもらう要素もある」と述べた。

最大約2000人を収容できる海の森水上競技場は、観客席すべてに屋根が設置される予定だったが、経費削減のため、半分しか屋根を覆えず、暑さ対策が求められていた。岡村総括部長は「本大会で使うかは、費用対効果を考え、他の暑さ対策とともに検討する」と今後について話している。運用費は明らかにされていない。

日差しの差し込むスタンド ©X-1

多目的トイレの増設やトレーニング施設の要望も

海外選手の多くは「会場のバリアフリーに関し、困ったことはない。艇への乗り降りもスムーズにできた」と話したが、日本の加藤は多目的トイレの少なさについて懸念していた。「すべてのトイレの数を把握できているわけではないが、選手エリアの2階も一つだけ。レース前にトイレに行きたい選手は多いので、仮設でもいいので大会中は数を増やしたほうがいいのかも」と指摘していた。

また、大会期間中もウエイトトレーニングをコンディショニングに取り入れている選手が多く、「会場か宿泊先にあればいいが……」という心配する声が加藤の耳に届いたという。

競技場は下肢まひの選手でもカヌーに乗り込みやすいバリアフリー設計だ

そして、観客にとっては、会場へのアクセスが容易でないことも問題になりそうだ。

日本選手権を観戦した石川県に住む40代の女性は、「いろんなカヌー競技場に行ったけれど、競技のスタートからフィニッシュまでがよく見える素晴らしい会場だと思う。東京大会も有効活用してほしい」と述べ、瀬立を応援に来た2人組の女性は「開放感がありロケーションがいい。間近で見られて競技の迫力も感じられた」と話した。ただ、会場へは公共交通機関で行けず、多くの人がアクセスの悪さを指摘していた。本大会中は、シャトルバスのスムーズな運行が期待される。

レースを一望できるスタンド(右)の位置は、訪れた人たちに好評だった ©X-1
【2019年度日本パラカヌー選手権大会 リザルト】

男子KL1:1位 高木裕太
男子KL2:1位 辰己博実
男子KL3:1位 小山真
男子VL2:1位 辰己博実
男子VL3:1位 今井航一
女子KL1:1位 瀬立モニカ
女子KL2:1位 宮嶋志帆
女子KL3:1位 加治良美
女子VL1:1位 瀬立モニカ

【READY STEADY TOKYO カヌースプリント&パラカヌー リザルト】 男子KL1:1位 FARIAS Esteban(イタリア)
男子KL2:1位 RUFINO de PAULO Fernando (ブラジル) 
男子KL3:1位 YEMELIANOV Serhil(ウクライナ)
男子VL2:1位 MOURAO Norberto(ポーランド)
男子VL3:1位 McGRATH Curtis(オーストラリア) 
女子KL1:1位 MAZHULA Maryna(ウクライナ) 3位 瀬立モニカ
女子KL2:1位 HENSHAW Chariotte(イギリス) 
女子KL3:1位 SUGAR Laura(イギリス) 
女子VL2:1位 CHIPPINGTON Jeanette(イギリス)

text by TEAM A
photo by Haruo Wanibe

東京2020本番会場・海の森水上競技場で初開催! パラカヌー公式戦で見た会場運営

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