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大逆転劇に観客熱狂! 里見紗李奈&山崎悠麻V2・ジャパンパラバドミントン国際大会

大逆転劇に観客熱狂! 里見紗李奈&山崎悠麻V2・ジャパンパラバドミントン国際大会
2019.11.20.WED 公開

「ヒューリック・ダイハツJAPAN パラバドミントン国際大会 2019」は、11月13日から17日まで、東京2020パラリンピック会場になる渋谷区・国立代々木競技場第一体育館に35ヵ国・地域から219名が集まり開催された。

東京パラリンピック出場に必要なポイントが獲得できるだけに熱戦となり、日本は女子ダブルス(WH1+WH2/車いす)の里見紗李奈/山崎悠麻、女子シングルス(SU5/立位上肢)の鈴木亜弥子が劇的な展開で優勝した。

里見&山崎はライバルに大逆転勝利!

涙をにじませる里見(右)と山崎

頂点への思いはひと際強かったのだろう。世界選手権で優勝したイン・モンルー/リウ・ユートン(中国)との58分に及んだ激闘に決着をつけると、21歳の里見紗李奈の目から涙が伝った。パートナーで二児の母でもある山崎悠麻は、その頭をくしゃくしゃにし、優しい笑顔を浮かべていた。

「緊張が続いていたので、ホッとして泣いてしまいました」(里見)

2018年7月から2人が組み始めたときから、速さにまさる中国勢は最大のライバルと見られていた。昨年の大一番、インドネシア2018アジアパラ競技大会でもその速さに屈している。

しかし、そんなライバルに2人が見出した対抗策は「ローテーション」。車いすバドミントンは、2人が横並びになる「サイド・バイ・サイド」が基本の陣形だが、2人が前後になる攻撃の陣形「トップ&バック」に変わる動きを身に付けようと練習を重ねてきた。

「動く速さでは中国に勝てなくても、2人でローテーションしてコートを広くカバーできるなら効率がいい。それがいまの私たちの強みなんです」と山崎。

弱冠15歳のリウ・ユートン(中国)

中国勢でもっとも手ごわいイン・モンルー/リウ・ユートンとは、世界選手権の準決勝で当たるはずだったが、山崎の体調不良で棄権し、今回が初対戦。決勝戦は2人のプレーが世界王者にどこまで通じるか、という一戦だった。

だから里見/山崎はローテーションを重視した戦略を展開していくかと思われた。しかし2人が選択したのは「サイド・バイ・サイド」。里見は「中国ペアにはローテーションが通用しないかなと思い、私から“サイドバイ”でいこうと提案しました」と思いを明かす。

それが弱気だったと気づくのは、がけっぷちに追い込まれてからだ。1、2ゲームを分け合い、迎えた3ゲームは4-14まで差を広げられた。コートを見守る観客だけでなく、2人の頭にも敗戦がよぎり始める。一方で、この瀬戸際は2人に開き直りを与えた。「どうせ負けるならローテーションしていこう」

2人が前後になってローテーションする陣形

すると息を吹き返した。里見が渾身のクリアーを連打し、要所で山崎がカバーに回る。攻める心も取り戻し、驚異の10連続得点に成功すると、勢いは止まらず一気に頂点へ。信じられない逆転劇に、会場は大きな拍手を送り、山崎は「ローテーションあっての自分たちだと気づきました」と驚いた表情を見せた。

なお、女子シングルスで里見は3位。準決勝で、世界選手権で優勝を争ったタイのスジラット・ポッカムに敗れたが、「対策してきたことは通用した」とさっぱりした表情を浮かべ、東京パラリンピックでは「2種目で金メダルを獲りたい」とあらためて誓っていた。

鈴木亜弥子も接戦でライバルを攻略

優勝を決め、地元の歓声に応える鈴木

鈴木亜弥子もまた接戦に勝利し、地元の意地を見せた。決勝戦で当たったのは、世界選手権の決勝で敗れた中国のヤン・チウシャ。互いにしか負けたことがないという相手だが、ここ2年、連敗中の分の悪い相手だった。

それでも勝ったのは、世界選手権後、取り組んできたフットワーク強化にある。これまでヤンの角度あるカットはノータッチにさせられることが多く、世界選手権後は歩数の効率化を図ってきたという。

決勝戦は、その足を使うプレーが光った。どちらも主導権が握りきれないスリリングな展開だったが、1、2ゲームとも鈴木が大事な場面でしっかり足を動かし、ラリーに耐えた。2ゲーム20オールでも、4隅に配られた球をしっかり拾い、ヤンからアウトを引き出した。スコアは21-19、22-20。努力の末、宿敵に勝てた喜びは大きく、鈴木は「ここで勝てたことは自信になります」と力を込めていた。

鈴木は課題を克服し決勝でライバルに勝利した

さらに鈴木は続く女子ダブルス(SL3―SU5)で伊藤則子と準優勝。東京パラリンピックの出場権はダブルスのランキング上位者に優先的に与えられるため、また一歩、夢に近づいた形だ。

女子ダブルスは伊藤則子(手前)と準優勝!

女子シングルス(SL4/立位下肢)で準優勝を飾った藤野遥もまた東京パラリンピックへ前進した。世界選手権2位の中国のチェン・フ―ファンには、11-21、12-21と完敗だったが、「東京パラリンピック会場となる場所で、決勝まで行けたことはよかった。来年、決勝でファンファン(チェン・フ―ファン)と戦いたい」と希望を膨らませていた。

藤野は女子シングルスで決勝に進んだ

車いす・男子ダブルスは日本対決を村山&梶原が制す

一方、東京パラリンピック出場権獲得に向け、厳しい戦いを強いられたのは、車いすの男子ダブルス陣だ。各ダブルス種目は1ヵ国から1組のみしか出場できないため、実質、日本は世界選手権3位の長島理/渡辺敦也と同8強の村山浩/梶原大暉が東京行きの切符を争う形になっている。

シングルスでも3位に入った新鋭の梶原

そんな2ペアが準々決勝で激突した。21-19、21-9で勝ったのは村山/梶原。この1戦を「すごい緊張した」と高校生の梶原は明かし、27歳年上の村山は「まだ出場権が確定したわけではない。これからも気を抜かずに戦いたい」と気を引き締めた。

敗れた長島は「ダブルスでは、残りの大会で全部優勝しないとダメかも。冷静になってからこれからの戦略を考えたい」と厳しい顔で語った。

このほか、東京行きの切符をつかめるチャンスが残るのはSU5(立位上肢)で、銅メダルを獲得した男子シングルスの今井大湧と女子シングルスの豊田まみ子、同8強の亀山楓。SL3(立位下肢)の男子シングルス8強の藤原大輔、混合ダブルス(SL3-SU5)3位の末永敏明/杉野明子、女子シングルス(WH2/車いす)の小倉理恵もまた東京パラリンピックを目指して戦い続ける。ポイント対象となるのは残り3大会で、3月末まで気が抜けない日々が続きそうだ。

東京パラリンピックへの出場が期待される今井

公式テストイベントとしては成功裏に閉幕

なお、今大会は東京2020大会のテストイベントとして開催された。世界バドミントン連盟のシャーミー・サブロン氏は「大会中は車いす選手の利便性、トイレの数、輸送がスムーズに行われているかなどをチェックした。体育館が古いので、心配な面もあったが、改修工事によって問題は解決されていることが確認できた」と話している。

本大会は東京本番と同じ国立代々木競技場第一体育館で行われた

国内外とも選手からは「ライトがまぶしくてプレーしづらい」という声が多く上がっていたが、「風はあまりなくてよかった」という意見も多かった。日本の里見は「動きやすい床面。確認できてよかった」と語り、本番でプレーする場面を頭に思い描いていた。

【ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2019 リザルト】

■車いす
WH1男子シングルス:
1位QUZimao(中国)/2位CHOIJung Man(韓国)
WH1女子シングルス:
1位Sujirat POOKKHAM(タイ)/2位YINMenglu(中国)/3位里見紗李奈
WH2男子シングルス:
1位KIMJungjun(韓国)/2位CHANHo Yuen(香港)/3位梶原大暉
WH2女子シングルス:
1位LIUYutong(中国)/2位XUTingting(中国)/3位山崎悠麻

■立位下肢
SL3男子シングルス:
1位Daniel BETHELL (イングランド)/2位Pramod BHAGAT(インド)
SL4男子シングルス:
1位Lucas MAZUR(フランス)/2位Siripong TEAMARROM(タイ)
SL4女子シングルス:
1位CHENGHefang (中国)/2位藤野遥

■立位上肢
SU5男子シングルス:
1位CHEAHLiek Hou(マレーシア)/2位Suryo NUGROHO (インドネシア)/3位今井大湧
SU5女子シングルス:
1位鈴木亜弥子/2位YANGQiuxia(中国)/3位豊田まみ子

■低身長
SH6男子シングルス:
1位Nagar KRISHNA(インド)/2位Krysten COOMBS(イングランド)
SH6女子シングルス(エキシビジョンマッチ):
1位Carmen Giuliana POVEDA FLORES(ペルー)/2位CAIYi Lin(台湾)

■ダブルス
WH1―WH2男子ダブルス:
1位MAIJianpeng&QU Zimao(中国)/2位KIM Jungjun(韓国)&LEEDong Seop/3位村山浩&梶原大暉
WH1―WH2女子ダブルス:
1位里見紗李奈&山崎悠麻/2位LIU Yutong&YINMenglu(中国)
SL3―SU5女子ダブルス:
1位CHENGHefang&MAHuihui(中国)/2位伊藤則子&鈴木亜弥子/3位山田麻美&亀山楓
SL3―SU5混合ダブルス:
1位Lucas MAZUR&Faustine NOEL(フランス)/2位Ilker TUZCU&Halime YILDIZ(トルコ)/3位末永敏明&杉野明子
SH6混合ダブルス(エキシビジョンマッチ):
1位Nagar KRISHNA&Carmen Giuliana POVEDA FLORES(インド&ペルー)/2位CHENYi-Ying &CAIYi Lin(台湾)

混合ダブルス(SL3-SU5)3位の末永&杉野(左)ペア

text by Yoshimi Suzuki
photo by X-1

大逆転劇に観客熱狂! 里見紗李奈&山崎悠麻V2・ジャパンパラバドミントン国際大会

『大逆転劇に観客熱狂! 里見紗李奈&山崎悠麻V2・ジャパンパラバドミントン国際大会』