日本財団パラリンピックサポートセンター

久々の実戦での成長をW杯への足がかりに。第33回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会

久々の実戦での成長をW杯への足がかりに。第33回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会
2020.11.12.THU 公開

11月7日~8日、nexライフル射撃場(宮城県・石巻市)にて「第 33 回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会」が開催された。新型コロナウイルス感染症が流行してから、国内外の試合が次々と中止や延期となる中、パラ射撃の全国レベルの試合と しては約8ヵ月ぶり。試合は昨年の同大会以来という選手もいる中、東京2020パラリンピックでの活躍が期待される水田光夏(エアライフル伏射混合SH2)をはじめとした強化指定選手とともに、東京以降 を狙う次世代の選手たちも参加し、緊張感あふれる戦いを繰り広げた。

1年ぶりの試合でも安定感

さすがの安定感を見せたのが、水田だ。「試合は1年ぶり。試合の日や試合の前って何をするのかなと思い出しながら、という感じだった」と振り返るが、終わってみれば、昨年の同大会の記録をわずか0.1点下回る633.2点でフィニッシュ。「いつも通りできた」とはいうものの、常に自己ベスト更新が目標というだけに、今回の結果にも満足していないと語る。

自己ベスト更新が目標と語る水田

「(自粛期間中に)装備などちょこちょこと変更したので、若干、しっくりこない感じがありましたが、時間をかけて戻していけるかなと思います。(射撃では)60発(すべてで)同じように構え、安定した状態で撃つことが大事なのですが、まだできていない。また、今回に限らずいつも時間がかかってしまう(のが課題)。もう少し早く撃って、余裕を持てるようにしたい」
と反省の弁。最終の第6シリーズで少々崩れはしたものの、安定した点を撃てることについては、「ど真ん中に当てなきゃという意識はしていなくて、『一発ごとに10.6点以上ならOK、それ以下ならダメ』という感覚でやっています。それがいいのかもしれません」と自己分析した。

東京パラリンピック出場を目指す選手たちに明暗

自力で東京パラリンピックの出場権獲得を目指す選手たちは悲喜こもごもの結果となった。

佐々木はメンタル面での成長を結果に結びつけた

水田同様に好調さをアピールしたのが、佐々木大輔 (エアライフル伏射混合SH1)だ。予選に当たる本射では634.3点、決勝にあたるファイナルで250.1点を記録し、優勝した。試合は2月の2020年度強化指定選手選考会以来のため、「こんなに緊張したのは久しぶりで、疲れました」というものの、その表情は明るく、充実感がみなぎっていた。その一因は、自粛期間中の読書にあったという。

「試合中に緊張し過ぎることが課題だったため、練習できない期間はメンタルトレーニングに関する本をたくさん読みました。今日の試合でも本から学んだことを実践してみたら落ち着けました。リズムよくポンポンとは撃てませんでしたが、それをどう立て直すかという練習になったと思います」

また、味の素ナショナルトレーニングセンター・イースト(NTCイースト)で練習できるようになったことも自身の競技力向上につながっていると語る。

「(NTCイーストでの練習は)相当のプラスになっています。一番のメリットは、健常者のトップ集団にアドバイスを聞けること。目が疲れたらすぐに休む、など実践しているアドバイスはたくさんあります」

山内は「世界で戦えるようになりたい」と力強く語った

一方、開口一番、「今までにないぐらいダメな結果」と反省の弁を述べたのは、山内裕貴 (エアピストル男子SH1)だ。途中、0点を撃つなど最後まで弾が的の中心に集まらず、3名中3位に沈んだ。

「久しぶり(の試合)ということで、ちょっと気合いの入れ方を間違えました。点数を取りに行き過ぎてトリガーの引き方が慎重になっていたのですが、(0点を撃ったシリーズでは)いつも通り、攻めることを意識しました。そのため、シリーズの前半はよかったのですが、攻め過ぎたゆえに0点を撃ってしまったのだと思っています」

コーチからはいい射撃もたくさんあった、それを増やしていこうとのフィードバックがあったという。本人も反省しながらも、決して表情は暗くなかった。自粛期間中に、自身の手に合わせるためにグリップを削って調整したり、グリップの握り方を見直したり、体幹トレーニングに取り組んだりと、できる限りのことをやってきた自信の表れとも考えられる。「点数を取りに行き過ぎた」というのも、それゆえ自分に期待していた、ということなのかもしれない。

「今日の結果は自分の実力ということは間違いないです。でも、560点以上撃てるように実力をつけないと世界では戦えないので、もう一度基本からしっかり力をつけていきたい」と、力強く語った。

出場枠の行方は

射座の間にアクリル板を設置したり、看護師を配置するなど、入念なコロナ対策を行って開催された

射撃の場合、東京パラリンピックに出場するには、まずは、定められた基準点を公認大会で2回撃っていることが最低条件となる。そのうえで、指定の大会で結果を出し、ダイレクトスロット(自力獲得枠)を獲得しなければならない。水田は2019年10月のシドニー世界選手権でこのダイレクトスロットを獲得し、出場が内定したわけだ。

コロナ禍で状況が混とんとする中、次にダイレクトスロットを獲得する機会は、2021年5月にリマ(ペルー)で開催されるワールドカップとなる予定だ。佐々木と山内をはじめとした強化指定選手たちも、このワールドカップに向けて照準を合わせて調整を行うとしている。

田口は選手として出場することで、東京パラリンピックに向けて多くの収穫を得たと語った

今回の大会がなければ、強化指定選手たちにとって自粛期間後初めての試合が3月のワールドカップとなる可能性もあった。その点について、選手として試合にも出場した田口亜希日本障害者スポーツ射撃連盟理事は、「選手にとって、(久しぶりの)試合がいきなり海外というのはすごくしんどいこと。試合を何度も経験することで、緊張とどう付き合うかなどを学んでいくため、選手にとって試合は大切。コロナ禍で他県の人を受け入れる決断をした宮城県ライフル射撃協会には感謝したい」と語った。

なお、ダイレクトスロットが獲得できなかった場合、開催国枠(男子1枠、女子は水田が自力で獲得したため、なし)と補欠順位を巡って国内選考会が開催され、そこで決定されることになる。 東京パラリンピックに向けて新たなスタートを切った射撃の選手たち。改めて、出場枠獲得をかけた争いの火ぶたが切られた。

選手たちは皆、久しぶりの試合を楽しんでいた

【第 33 回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会】 リザルト
AR60M-SH1:1位 望月貴裕 /2位 大島直丈 /3位 三重野寛
AR60MW-SH2:1位 木下裕季子 /2位 桑田泰寛
AP60M-SH1:1位 森脇敏夫 /2位 齋藤康弘 /3位 山内裕貴
AR60PRMW-SH1:1位 佐々木大輔 /2位 渡邊裕介 /3位 片山友子
AR60PRMW-SH2:1位 水田光夏 /2位 鈴木努 /3位 木下裕季子
FR3X40W-SH1:1位 武樋いづみ
FR60PR40MW-SH1:1位 渡邊裕介 /2位 大滝健太郎 /3位 片山友子
BR60TMW-SH1:1位 佐伯龍之介
BR60TMW-SH2:1位 増田眞美子
BR40FMW:1位 黒田恭亮 /2位 池口裕介 /3位 松本裕司
BP60MW-SH1:1位 鈴木努 /2位 長谷部信夫
BR40FMW団体:1位 神戸市障害者射撃協会(佐伯龍之介、清水颯基、松本裕司)/2位 大阪府立稲スポーツセンター(黒田恭亮、池口裕介)

エアライフル伏射混合SH1優勝の渡邊裕介も東京パラリンピック出場を狙う

text by TEAM A
photo by X-1

久々の実戦での成長をW杯への足がかりに。第33回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会

『久々の実戦での成長をW杯への足がかりに。第33回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会』