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東京2020パラリンピックの有力候補が躍動! 第6回日本障がい者バドミントン選手権

東京2020パラリンピックの有力候補が躍動! 第6回日本障がい者バドミントン選手権
2020.12.24.THU 公開

コロナ禍で多くの大会が中止されるなか、第6回日本障がい者バドミントン選手権大会は、12月19日から20日まで、滋賀県YMITアリーナ(くさつシティアリーナ)でシングルスのみ開催された。男子7種目、女子6種目には、24都道府県から84名がエントリー。ここでは、東京2020パラリンピックへの出場が有力視される6人の戦いを振り返る。

男子で唯一の初優勝は、「ミドルの星」村山浩!

2年連続、同じ顔合わせになった男子WH1(車いす)の決勝。準決勝を終えた2人の言葉はこうだった。

まず挑戦者の村山浩。
「決勝戦で長島選手と戦って勝ったことがないので、明日は、彼を叩いて優勝することしか考えていません」

そして長年、日本の車いすバドミントンを引っ張ってきたディフェンディング・チャンピオンの長島理。
「明日、レベルアップした村山さんには、チャレンジャーとして臨みたい」

東京パラリンピックに向けてレベルアップを図ってきた村山

――勝ったのは、挑戦者だった。

すでに東京パラリンピックの代表を手中に収めている、村山の真価を証明した戦いだった。1ゲームこそ、競り合うが、村山が11-10で前半を折り返すと、そこからは一方的な展開に。

光ったのは、相手をコート奥へしっかりと押し込むハイクリアーだ。野球ややり投げの経験があり「肩に自信がある」という村山は、パワフルに長島を奥へ、奥へと動かした。さらに好機を見てすかさずネット前へドロップ。長島のミスを誘い、13本、10本で初優勝を引き寄せた。

「今まで追いかけていた人に追いつけました」

こうはにかんだ村山は、1974年生まれの46歳。車いすバドミントン歴は8年だが、2019年3月から組み始めたWH2梶原大暉との27歳差ペアで、東京出場の夢を実現させている。いわば「ミドルの星」だ。

長きに渡り、車いすバドミントンをけん引してきた長島

ペア結成当初、長島/渡辺敦也の背中を追っていたが、2019年10月のデンマークオープンで初優勝すると、東京パラリンピックを争う世界ランキングも上昇し、日本に与えられる出場枠「1」をほぼつかんだ。今回のパワフルなプレーでの初優勝は、「なぜ村山が東京行きの切符をつかめたか」という答えを示すものでもあった。

車いすバドミントンの普及にも尽力してきた村山は「東京では金メダルを獲りたい。活躍することで、この競技の知名度を上げたいです」と静かな情熱を燃やしていた。

19歳・梶原大暉は東京パラの頂点めざして進化中

ガッツポーズを見せて喜ぶ梶原

この村山のダブルスパートナーである梶原は、WH2で2連覇を飾った。2019年に急成長した19歳は、180㎝を生かした鋭いカットを有効に使い、速いラリーを構築。予選リーグを1位で通過すると、決勝戦では、渡辺に21ー10、21―14で圧勝した。

安定した戦いぶりは、レース中にはなかなか取り組めなかった課題と向き合ったおかげだという。今春、日体大に入学したものの、コロナ禍で一度も大学に足を運べず、「ずっと福岡の実家にいて、チェアワークの改善や、体のひねりを強く意識する打ち方に取り組みました」と話す。

中学時代、野球のトップチームにいた梶原は、いまも練習や試合で感じたことをノートに綴る習慣があり、課題を見つけ、解決する能力が高いと評価されている。

2021年は、これまで遠距離ペアだった村山と、一緒に練習できる時間が増えるため、梶原のバドミントン研究は進み、東京パラリンピックでライバルになる中国や韓国ペアを倒す糸口も見つけていきそうだ。

なお、村山/梶原に東京パラリンピックの出場権がわたる見通しにより、長島/渡辺ペアでの東京出場の可能性は消え、現在、長島はシングルスでの東京出場を目指している。

WH2で2連覇を飾った梶原。村山のダブルスパートナーでもある

草井篤スーパーバイザーは、「長島選手が、東京パラの出場権をつかむには、2021年3月のスペイン国際で一定以上の人数が揃い、上位へ進むことが条件になってくるでしょう」と説明する。

決して簡単なことではないが、それでも車いす界の功労者は、「ラリーを長く続けることを課題に練習してきた」と、長丁場のシングルスに役立つ強化を図ってきた。長島が競技者人生で最大の山場をどう乗り切るかにも注目だ。

東京パラでメダルを目指す4人の女子も制覇

SL3で連覇を果たした伊藤

東京パラリンピック出場がすでに見えている女子選手は4人いる。WH1里見紗李奈、WH2山崎悠麻、SL3伊藤則子、SU5鈴木亜弥子だ。2019年、欠場だった鈴木を除き、3人が連覇を成し遂げた。

なかでも世界ランキング1位の里見は圧倒的で、決勝では福家育美に8本、5本で勝利。ネット前に落とすドロップと遠くへ打つクリアーの打ち分けが絶妙だった。

世界女王の里見も進化中

「今回、戦術に関するキーワードをいくつか決めていたんです。ひとつだけいうと、“相手を見る”。ラリー中に思い出しては、相手の位置を確認し、いないところに打っていきました」

こうして伸び続ける22歳は、「東京パラリンピック当日になっても、まだまだできることはあったな、と思うだろうけど、そこを減らせるように全部頑張っていきたい」と、東京2冠に向け、晴れやかな笑顔を浮かべていた。

明るかったのは、里見のダブルスのパートナーで、6連覇の金字塔を打ち立てた山崎も同じだ。決勝戦で小倉理恵を16本、8本で退けることに成功した。

里見のダブルスパートナーの山崎は、6連覇の偉業を達成

「1ゲーム、緊張しすぎて点をどんどんとられましたが、その後、小倉さんをネット前に引き出し、後ろへ打つ流れをつくれました。今後は、試合数を積んで、試合勘を取り戻したい」

山崎がこう語ったのは、コロナ禍で今大会が1年ぶりの実戦だったいう事情がある。また同様の理由で、山崎と里見は、今年、ダブルス練習をする時間を多く取れなかった苦境にも見舞われた。だが、それでも前を向くため、「いまは個々の力を高めていこう」と約束を交わしていたという。2人のシングルス連覇は、誓いを果たした証にもなった。

一方、東京パラリンピックでダブルスに立つ見込みの伊藤と鈴木も優勝し、存在をアピールした。コロナ自粛中、2人が力を入れてきたのはフットワーク強化だった。

SL3決勝戦で山田麻美にストレート勝ちした伊藤は、「義足でない左足に頼りがちだったので、右脚を使うように意識した」と話し、腱足の負担を減らす取り組みをしたすえでの勝利だったことを明かした。

鈴木は東京パラリンピックの金メダル候補だ

そして、1ゲームも落とさない完勝を収めた世界シングルス2位の鈴木は、「動き続けてもブレない体づくり」を目指してきた成果を出しきった。「去年まで多かったネット前でのノータッチが、今回は少なかったです」と振り返る。

東京パラリンピックで、最大のライバル楊秋霞(中国)に勝つためには、フットワークの効率化が欠かせず、努力を続ける鈴木からは「楊さんとは必ずラリーが長くなる。そのとき、絶対に負けたくない」という決意がにじんでいた。

3月のスペイン国際での活躍に期待がかかるSL3の藤原

なお、バドミントンの東京パラリンピックへの出場権をかけたレースは、残り1試合を残すのみとなっている。当落線上にいるSL3の藤原大輔、SU5の今井大湧、WH2の小倉理恵にとって、2021年3月のスペイン国際が運命を分ける分岐点になりそうだ。

今井は激戦のSU5で東京パラリンピック出場切符をつかめるか
【第6回DAIHATSU日本障がい者バドミントン選手権大会 リザルト】

■車いす
WH1男子シングルス:
1位村山浩(初優勝)/2位長島理/3位西村啓汰/4位大濱真
WH1女子シングルス:
1位里見紗李奈(3年連続3回目)/2位福家育美/3位川森弥生/4位大津千佳
WH2男子シングルス:
1位梶原大暉(2年連続2回目)/2位渡辺敦也/3位松本卓巳/4位望月悠生
WH2女子シングルス:
1位山崎悠麻(6年連続6回目)/2位小倉理恵/3位河瀬優花/4位江上陽子

■立位下肢
SL3男子シングルス:
1位藤原大輔(6年連続6回目)/2位末永敏明/3位広井拓/4位谷口貴之
SL3女子シングルス:
1位伊藤則子(2年連続3回目)/2位山田麻美
SL4男子シングルス:
1位山本勝洋(3年連続3回目)/2位中村海斗/3位濱田健一/4位竹内俊平
SL4女子シングルス:
1位藤野遼(2年ぶり3回目)/2位澤田詩歩

■立位上肢
SU5+男子シングルス:
1位今井大湧(4年連続5回目)/2位浦哲雄/3位馬場大地/4位正垣源
SU5+女子シングルス:
1位鈴木亜弥子(2年ぶり5回目)/2位杉野明子/3位亀山楓/4位豊田まみ子

■低身長
SH6男子シングルス:
1位畠山洋平(5年連続5回目)/2位鈴木彪河/3位上野智哉/4位山﨑海斗

■知的障がい
ID7男子シングルス:
1位中野林太郎(5年連続5回目)/2位田中和弥/3位小野紘汰/4位武藤知真
ID7女子シングルス:
1位花澤杏奈(初優勝)/2位大村悠佳

WH2の小倉も勝負のときを迎える

text by Yoshimi Suzuki
photo by X-1

東京2020パラリンピックの有力候補が躍動! 第6回日本障がい者バドミントン選手権

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