座位の森井が平昌パラを想定したレースで圧巻V ジャパンパラアルペンスキー

座位の森井が平昌パラを想定したレースで圧巻V ジャパンパラアルペンスキー
2018.02.10.SAT 公開

2月2日から4日まで菅平高原パインビークスキー場で開催されたWorld Para Alpine Skiing公認「2018ジャパンパラアルペンスキー競技大会」には、一ヵ月後に開幕を控えた平昌2018冬季パラリンピックに出場するトップスキーヤーが出場した。

日本チームは今シーズン、9月にチリに遠征し、その後シーズンの幕開けとともにワールドカップを転戦。だが、雪不足や悪天候の影響でレースのキャンセルが相次ぎ、思うように実戦を積めていないのが現状だ。もともと3月の平昌パラリンピック後に別のゲレンデで予定されていたジャパンパラが前倒しになったことで、今大会を好機と捉え、スキーの調整や細かい技術の確認に取り組む選手たちの姿が見られた。

チェアスキーのセッティングも仕上げの段階

この平昌のリハーサルともいえる大会には、現在、日本代表に決まっている6人全員が出場。平昌でコースをセッティングすることが決まっている日本代表の志度一志ヘッドコーチによる“本番を意識した舞台”と“ヨーロッパに通用する硬いバーン”で、それぞれが手ごたえを確かめた。

大会を通して充実感を漂わせていたのが、平昌で5度目のパラリンピック出場となる座位の森井大輝(LW11)だ。軽量化した新チェアスキーを自身に合ったセッティングにしようと追求中で、今大会もエンジニアらと本番に向けて調整を重ねていた。初日の大回転は2本目で転倒し、応援に駆け付けた所属企業の社員50人の前で優勝を見せられず悔しがった。しかし、さらにセッティングを変えて挑んだ2日目の回転で神がかり的な滑りを披露。1、2本目ともに46秒台で、回転を得意とする鈴木猛史((LW12-2)よりも2本の合計タイムで4秒38も上回る記録で優勝を飾った。
「マテリアルと滑りがリンクしている」と手ごたえをはっきりと口にする森井。あくなき追及の先に、どんなパフォーマンスを見せてくれるか。平昌がますます楽しみになるレースだった。

ベテランならではの落ち着きを見せる狩野

パラリンピック3大会連続金メダルを期待される狩野亮(LW11)は、大回転で優勝、回転で森井、鈴木に次ぐ3位に。初日の1本目は「久しぶりのレースで感覚が鈍っていたからか、アウトリガーがひっかかるミスが出た」。だが、2本目ではシートを変えることでフィーリングも良くなったといい、逆転V。実は、年末に破損したシートを新調して挑んでおり、そんななか競技歴20年のベテランはさすがの適応力を見せた

得意種目は、高速系のスーパー大回転と滑降。今シーズン、ワールドカップの高速系レースがすべてキャンセルになっていることについて、「サスペンションとスキー、カウルのテストを淡々とこなしたかったので、もどかしさはある」と本音をもらしたものの、「平昌までまだ1ヵ月もある」と話し、焦りはない。

女子座位は、唯一の日本代表・村岡桃佳(LW10-2)がV2。今回のコースは、合宿などで滑り慣れた場所だが、高い位置からポールを立てて滑ったことはほとんどなく、最初の1本は「想定外のポイントに、少し焦った」と明かす。だが、2本目を終えると「(弧を描くような)カービングターンや攻めが足りないなどまだまだと思うけれど、滑っていて楽しいと思った」とコメント。日ごろから、「レースで実力を出せない」、「2本そろえるのが難しい」と課題を述べる村岡だけに、安定した滑りを見せた今大会は大きな収穫になったに違いない。

代表の座を争う熾烈な戦いも

復帰を見事な優勝で飾った三澤は充実の表情を浮かべる

メダルの期待がかかる座位の面々が注目を浴びる中、圧巻のパフォーマンスでインパクトを見せた男がいる。立位のエース、三澤拓(LW2)だ。右足一本で滑る三澤は昨年12月、海外遠征中の転倒で左足を骨折した。4年前のソチは本命の回転で転倒して終わっただけに、平昌にかける思いは強い。そこで、フィジカルトレーニングに力を注いできたことが幸いし、「ケガをしても積み上げてきたものは簡単に消えなかった」。ケガからの復帰戦となった今大会は、想定していたより冷静に滑れたといい、急斜面はある程度制御したものの緩斜面では攻めた。その結果、2日間とも優勝。日本代表選出に大きくアピールした。

本人はすでに平昌の表彰台を見据えており、「平昌はコースが長く、そこで戦い抜くために、滑りというよりフィジカルが重要と考えている。あとは雪上の感覚を戻せば何とかなる」と持ち前のポジティブな姿勢でケガの不安を吹き飛ばす。平昌では三澤の“黄金の右足”から繰り出される迫力の滑りが見られるだろう。

今大会で涙したものもいる。「スキー人生のすべてを注ぐ」。そう意気込んでいたソチパラリンピック日本代表の小池岳太(LW6/8-2)は、2種目ともに復帰明けの三澤に首位を譲った。レース後は「平昌はきっとない。過去に3回パラリンピックに出場しているが、今回ほど厳しい大会はない……」とうつむいた。小池と同様に平昌出場の可能性を残す座位の夏目堅司(LW11)は、大回転こそ表彰台入りしたが、回転では転倒し、見せ場なく大会を終えた。

選手たちが本番直前に収穫と課題を得た今大会は、メダルラッシュを狙う日本チームの格好の予行練習になったはずだ。
だが、知的障がいカテゴリー、聴覚障がいカテゴリーも含めたエントリー者の総数は31人で、「欲をいえばもう少し掘れたバーンでレースができればよかったかな。本番では50から60番目にスタートすると思うので」と参加者の少なさを嘆く選手もいた。

平昌には、2022年の北京冬季パラリンピックを見据えて日本代表に選ばれた17歳の高橋幸平(LW9-2)も出場するが、同時にベテラン選手たちは「選手の高齢化」や普及への危機感も口にする。
3月10日に始まるアルペンスキー競技で日本選手が活躍し、そのニュースが波及することで、また新たな選手が出てくることを期待したい。

ラグビーで鍛えた足が武器! 平昌パラリンピックに出場する大学生の本堂杏実
大回転で転倒し「先輩たちと競り合ういい機会だったのに……」と悔しがった髙橋幸平は17歳

text by Asuka Senaga
photo by X-1

座位の森井が平昌パラを想定したレースで圧巻V ジャパンパラアルペンスキー

『座位の森井が平昌パラを想定したレースで圧巻V ジャパンパラアルペンスキー』

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