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観客の応援もチカラに 東京パラリンピック会場で再び熱戦! 自転車トラック・全日本選手権

観客の応援もチカラに 東京パラリンピック会場で再び熱戦! 自転車トラック・全日本選手権
2021.12.17.FRI 公開

自転車トラックレースの国内最高峰・全日本自転車競技選手権大会が12月9日から13日までの4日間にわたって開催された。

舞台は、静岡県の伊豆ベロドローム。東京2020大会の会場だ。この夏のオリンピックでは有観客だったが、パラリンピックでは無観客だった。そんな聖地で行われた今回の全日本選手権。パラサイクリング含め約130人のトップ選手が出場し、事前に無料のチケットを予約した観客から熱い拍手が沸いた。

東京2020大会会場でもある伊豆ベロドローム

「パリこそメダルを」“一瞬の世界記録保持者”川本

12日と13日に計5種目が実施されたパラサイクリング。トラックで最大の注目は、片足で自転車を漕ぐ川本翔大(C2)だった。

充実の表情を浮かべる川本(右)と藤田

東京パラリンピックでは、個人パーシュート(3㎞)の予選で3分36秒117の世界記録をたたき出した。テレビを通して、力強いガッツポーズを見せた川本の姿を記憶している人もいるかもしれない。その後、世界記録は更新が相次ぎ、最終順位は4位だった。メダルまであと一歩届かなかったが、世界に歯が立たなかったリオ大会から5年間、大きな成長の跡を刻んだ。

パラリンピック以来、このバンクに帰ってきた川本は、大会最終日の個人パーシュートで驚くべきことに世界記録を狙っていた。

「『また世界記録を更新して、ずっと残るくらいのタイムを出したい』と思っていますし、今回は、なにか行けそうな体調だったので、体のケアに力を入れて臨みました。パラリンピックは無観客でしたが今回は所属企業の社長も応援に来てくれていたし、気合いも入りました。結果はダメでしたが、これからもベストが出るように頑張りたいです」

体力も気力もみなぎっているようだった。だが、後半のタイムが落ち、自己ベストから8秒遅れた。

「調整も課題ですし、後半は、体幹もブレていたような気がした。今日、帰ってまた動画を見直したいですね」

東京パラリンピックのあった特別な1年を2冠で終え、ガッツポーズの川本

次のターゲットとなる世界選手権の日程はまだ見えない。「パラ後、少し休憩しようと考えていたが、次のパリに向けてトレーニングしていきたいと思った」と明かし、パリ大会で「次こそはメダルを」という強い思いも口にする。その日本代表出場枠を決めるポイント獲得、そして世界大会での表彰台を見据え、「いつ大会が来てもいいように準備したい」と話す。

この夏、大舞台で覚醒した川本は笑顔でベロドロームを後にした。

ロードの第一人者・藤田も2種目で大会新

その川本と国内で高め合っているのは両足義足の藤田征樹(C3)だ。1㎞タイムトライアルは1分12秒587、個人パーシュートは3分38秒254とともに大会新をマーク。クラスは異なり、実走タイムに係数がかけられるため、両種目とも比較的障がいの重い川本に表彰台の中央を譲った。しかし、ロードをメインに戦う藤田は、東京パラリンピック後、すでにロードで3大会に出場。10月に行われた全日本選手権・ロード大会ではタイムトライアルで3年ぶりに川本に勝利している。

伊豆ベロドロームのバンクにはうっすらと五輪のマークが残っている

今回のトラック全日本は、例年秋に行われていたものが後ろ倒しになっており、藤田もこの大会に向けて1日機材を合わせた程度だというが、そんななかしっかりと好タイムを刻んだ。

「いまの状態でどこまで記録を出せるか。自分でも楽しみに全日本に出てきている。トラックのトレーニングをしていないので、満足できるタイムではないけど、大会記録は超えることができました。ロードのトレーニングを積めている成果なのかなと思っています」

北京からリオまで3大会連続でメダルを獲得してきた。東京大会ではメダルに手は届かなかったが、すぐに再始動。それは、自転車選手として、もっと強く、もっと走れる手ごたえがあるからに他ならない。

「東京大会後、自問自答し、『まだ行ける』というのが答えでした」

笑顔でインタビューに応える藤田

とりわけ義肢装具士とともに取り組んだ自転車競技用義足づくりは常に究極を求めてきただけに、次のステップを目指すには相当の覚悟がいるだろう。それでも藤田は「まだできることはある」と言葉に力を込めて話した。

練習のスタンスは変わらないが、現在はトレーニング量も増やしているという。東京大会まで控えてきたラーメンや自宅での晩酌も楽しみながら、すでに次のステップを目指してエネルギーを蓄えている。

東京パラリンピック・ロード金の杉浦も好調

力強い走りを見せた杉浦

そして、東京パラリンピックのロード2種目で金メダルを獲得した杉浦佳子(C3)も今大会を大いに沸かせた。トラックの再始動となる大会で、2種目で大会記録を更新。パリ大会での「最年長金メダル記録」更新を公言しているが、変わらぬ女王の健在ぶりを見せつけた。

今大会が急遽決まると、コーチが練習メニューを急ごしらえ。個人パーシュートは4分8秒台を目標にしていたというが、記録は4分5秒台で優勝。「トラックの大会に出場し始めたのは2018年。2019年頃とは走り方が変わっているので、その時より速ければいいなと思っていたんですけど」と、コーチも自身も思わぬ好タイムに驚きの様子だった。

東京パラリンピックで活躍した杉浦。「パリに向ける挑戦も楽しめたら」

「外バンクで練習することが多いので、屋内のベロドロームはまるで走り方が違う。(オリンピアンでトラックコーチの)飯島誠さんに『ベロドロームの走り方』を教わったのも大きかったです」

前回は同種目で思うような記録を出せずに悔しがったが、今回は好タイムをマークしたゆえ表情も明るい。「毎回、レース前は自信がなくて帰りたいって思います。でも、終わったら次もがんばろうという気持ちになるんです」と、結果が良くても悪くてもレースの経験が原動力になっていることを明かした。

その杉浦は、東京大会の活躍で一躍、時の人になった。その分、応援する人も増えている。

杉浦は2種目で大会新をマークし会場を沸かせた

「私、結構長く生きていますけど(笑)応援してもらえる経験って、あまりしてきませんでした。今日の応援もそうですが、こんなにたくさんの人に応援してもらえたらいい結果を出したいと思います。それに、応援していただいた残像がつらいときに蘇るんです。そういう意味でも今日、私が見た映像を記憶に残し、困難を乗り越えていこうと思います」

観客の応援について、藤田もこう話す。

「今回、観客の方が来てくださってうれしかったです。スタートゲートに入るときに、見に来てくださった方が視界に入って心が震えました。僕らの挑戦する姿を楽しんでもらえるというのが何よりうれしいですし、ワーっと言ってもらいたいから頑張るというのはありますよね」

観客を前に集中力を高めてレースに臨む両足義足の藤田

自転車を愛する人たちの中でパラサイクリングを初めて観るという人は、もう少ないのかもしれない。「障がいがあるのにすごい」という見方ではなく、特定の選手を名前で応援する人がいる。杉浦が活躍した、東京パラリンピック後の変化を感じる全日本選手権だった。

パラは今年も健常者の全日本と同時開催。全日本の会場となった伊豆ベロドローム

text by Asuka Senaga
photo by Atsushi Mihara

観客の応援もチカラに 東京パラリンピック会場で再び熱戦! 自転車トラック・全日本選手権

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