日本財団パラリンピックサポートセンター

スポーツボランティアから始まった第二の人生・日本ウェルチェアーラグビー連盟 竹城摂子さん

スポーツボランティアから始まった第二の人生・日本ウェルチェアーラグビー連盟 竹城摂子さん
2018.08.02.THU 公開

総合商社で多様なキャリアを積んできた竹城さん。分岐点は50代で乳がんを患ったこと。パラアスリートと出会いパラリンピック競技・ウィルチェアーラグビーの魅力に目覚め、早期退職に踏み切ったことで、人生が大きく転換しました。
≪前編はこちらから≫

<パラアスリートを支える女性たち Vol.02>
たけしろ・せつこ(57歳)
一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 事務局

乳がんの手術後、何かに“貢献できる”人生を模索

ウィルチェアーラグビーに出合う前の竹城さんは、総合商社で働くキャリア女性。定年まで長く働ける会社を選び、入社後は鋼材輸出を扱う部署に配属されます。その後営業アシスタントや本部付総務、子会社立ち上げプロジェクト等々多岐に渡る業務に携り、挫折も味わいながら任務を与えられれば着実に成果を出し、その達成感からまた新たな部署での活躍を求め続けて35年。ふと気づけば早期定年退職可能な年齢となり、人生後半の生き方について思いをめぐらすようになったと語ります。

−−セカンドキャリアのビジョンは、どのように描いていたのですか?

それまでは女性の社会進出に理解のある夫とふたり、互いにやりたい仕事に打ち込む社会的充足感の高い人生を送ってきました。でも50代になったとき、ふと「このままでいいのかな」という思いがよぎったんです。転機は51歳で乳がんになったことでした。今でこそ平気な顔をして話していますが、その当時はやはりショックでした。

手術を受けるにあたり、主治医の先生には、再発のリスクが少ないこと、放射線治療は受けたくないこと、できるだけきれいに治して欲しいという希望を伝えました。すると部分摘出ではなく全摘出を勧められ、左胸の全摘に踏み切ることに。同時に乳房再建手術も行ったので術後の違和感は少なく、幸いリンパ節の転移もなかったので汗腺も残りました。

術後は同じ乳がん患者である友人たちと一緒に自分の心のケアを進めながら、社内のボランティア活動にも参加を始めました。そこでウィルチェアーラグビーを知り、その独特な魅力にハマって、仕事とボランティア活動を並行する日々が始まったのです。

それまでは、ただひたすら自分の人生に邁進してきました。社会に対して何か貢献できたことはあったかというと、自信をもってYESと言うことはできなかったと思います。たとえば子どもを産んで育てることは大きな社会貢献です。でも私はそれができていない。仕事も自分の楽しみのためにやってきた。じゃあ、今後何か少しでも人の役に立つためにはどんな形があるんだろうと模索していたときに「連盟で事務をやる人がいなくて困っている」と聞き、それなら自分にも手伝えるかもしれないと思って手を上げたんです。会社を辞めることに、それほど躊躇はありませんでした。

体育館内には、タイヤが軋む音やぶつかり合ったときの激しい衝突音が鳴り響く。

今の課題は“アスリートの気持ち”の理解

−−ボランティアから始めて約2年。今、何か課題に思っていることはありますか?

私はスポーツをやる人の気持ちが今ひとつ理解できていないな、と感じることでしょうか。私自身非常に運動オンチなので、これまでスポーツとはまったく縁のない人生を送ってきたんです。たとえば“100時間練習してこの技を習得しました”という経験がない。だから選手たちとは、ものごとを見る次元や肌感覚からして違っているんじゃないかなと感じるときがあるんです。

具体的には、努力している選手に対して不用意な言葉がけをしてしまわないように注意をしています。運動経験をもつ人のように“スポーツあるある”がわかって、一緒に盛り上がれればいいんですが(笑)。自分なりにより深い理解や寄り添いができるよう、これからノウハウを蓄積していけたらいいですね。

事務局の職員としては、自分がいることで少しでも連盟や選手の困りごとが解決できるようにありたいと考えています。多忙な中でも定例会議をきちんと開催したり。海外遠征の際、選手たちにとって便がよいエリアに車を止められるよう、空港に依頼したこともありました。日本のウィルチェアーラグビー連盟の母体としての強度や質を上げていくことで、選手たちがより安心して競技に専念できる環境をつくっていければと願っています。

「事務の方は、僕らが忘れがちな手続き関係のことをきっちりやってくれる大切なサポーターです」(島川慎一選手)
集中して事務を行うデスクの横にはトロフィーや掲載紙が並ぶ。

パラアスリートを支える活動で人生に彩りが

−−人生の後半で新たなフェーズに飛び込まれたわけですが、そんなウィルチェアーラグビーとの出合いは、竹城さんにとって何をもたらしましたか。

まず、人脈が広がりました。試合に携ることでアメリカチームのマネージャーと友達になるなど、今まで知り合うことがありえなかった人との出会いやつながりが増えましたね。そもそも自分が「JAPAN」と書かれたポロシャツを着るとは思ってもいませんでしたし(笑)、それだけでも身を置く環境が会社員時代とは大きく変わったと思います。

なんといっても、選手たちとの関わりの影響は大きいです。よく「練習ができる人が才能がある人です」と言うじゃないですか。彼らを見ていると、練習できる才能ってこういうことなんだと実感するんです。あの障がいがある手で一生懸命、競技用の車いすをこいでいる。その独自のこぎ方を編み出すまでに、いったい何十時間の練習を積んできたのかと。それだけの練習を積めることは才能ですよ。そんなふうに今まで見聞きできなかったことを見て、聞けて、知ることができる。人生の彩りが非常に豊かになりました。夫の理解とサポートのおかげで日々の業務に集中できていることも、とてもありがたいなと感じています。

これから初めて競技を見る方には、ぜひ一度体験会に来て、競技用の車いすに乗ってみることをおすすめします。私もやってみましたが、最初は思いどおりにできません。でもやっていくうちにうまく動かせるようになってくると、やっぱり楽しいんですね。彼らは障がいがあることがわからないぐらい巧みなプレーを繰り出しますが、いざやってみるとドリブルだってパスだって、私たちにとっても難しい。いかに彼らがすごいことをしているのか、体感することで“見える世界”が違ってくると思います。

2016年、企業ボランティアとして参加した、ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会にて。

text by Mayumi Tanihata
photo by Yuki Maita(NOSTY)

一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟
https://jwrf.jp/
*競技用車いすに乗ることができる体験会は随時開催

*今後の主な大会
2018年8月5日〜10日 世界選手権大会(シドニーオリンピックパーク)※NHK BS-1にて全戦放送が決定!
2018年12月14日〜16日 第20回ウィルチェアーラグビー日本選手権大会(千葉ポートアリーナ)
2019年10月16日〜20日 ウィルチェアーラグビー・ワールドチャレンジ2019

ウィルチェアーラグビーについて詳しくはこちら

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