山内裕貴・東京2020パラリンピックを狙う射撃のホープ

山内裕貴・東京2020パラリンピックを狙う射撃のホープ
2018.08.10.FRI 公開

現在、最も東京パラリンピックに近いアスリートが、エアピストルの山内裕貴(SH1/銃器を自分の腕で保持できる人のクラス)だ。はじめて射撃の体験をしたのは5年前。2017年にはワールドカップに初出場し、短期間で腕を磨いてきた。実はダーツをしていた経験もあるという彼の素顔と競技への思いに迫ってみた!

<AMAZING PLAYERS Vol.2>
射撃・ピストルのホープ 山内裕貴(やまうち・ゆうき)

――山口県出身の山内選手。どんな子ども時代を過ごし、アスリートになったのか。彼を形成したバックグラウンドを聞いてみよう。

出身は、瀬戸内海に面した山口県・防府市。魚がおいしい地域ですよね。

いまは仕事の都合で広島に住んでいるんですが、実家が寿司屋で、いつも帰ると実家に寄り、フグの白子をいただきます。好物はマグロ。小さいころは魚が苦手だったんですけど、いまはありがたいかぎりです(笑)

どんな子どもでしたか?

外で遊ぶのがすごい好きでした。川遊びも好きでしたし、田んぼの細いところを走ったり、泥を投げたりとか。ちょっと忍者に憧れていましたね。

幼いころからカラダを動かすのが好きだったんですね。何かスポーツはしていましたか?

ほとんど長続きしたなかったんですけど……水泳、サッカー、ハンドボール、陸上の400mとかいろいろやってきました。いちばん楽しかったのは中学時代の卓球で、熱のある先生の指導もあり、団体戦で県一位になった思い出がありますね。陸上も、そんなにタイムが速いわけじゃないんですが、とにかく走るのが好きでした。

その後、事故で右腕まひの障がいが残りましたが、左手でも何かスポーツに挑戦したとか……?

17歳のとき、バイク事故で神経が引き抜かれ、右の肩から下の機能を失いました。腕が動かなくてもできる仕事はパソコンを使う事務かなと考え、専門学校に通っていたのですが、その学生時代にハマったのがダーツです。もともと遊び感覚で始めたのですが、社会人になってからも仕事帰りに週5日とか練習して。プロを目指して、地域の大会にも出場しました。そのころの記憶は楽しいことばかりで、右利きを左利きに直したりした苦労は感じませんでしたね。

的を狙うというのが射撃と似ていますね。

そうですね。狙うのが好きだったみたいですね(笑) ダーツに夢中だったころは、射撃なんて全然考えていなかったんですが。ダーツで伸び悩んで足が遠のいてから、ニュースの「東京パラリンピック」とか「射撃」というキーワードが気になりだしたんです。

ついに射撃に出会ったわけですね!

えっと……実は、おじいちゃんが地元ではちょっとした猟の名手で。子どものころから仕留めたイノシシや鹿を鍋にしたりしてくれて、かっこいいなという思いを抱いていました。心のどこかで興味のあった銃をはじめてみたいと思い、インターネットで調べたら日本障害者スポーツ射撃連盟の事務局の方が同じ山口県にいらして。さっそくコンタクトを取り、(光センサーを使用する)ビームライフルの体験会に足を運んだのがはじまりです。今から約5年前、28歳のときのことでした。


―― 28歳でスタートした射撃人生。日本ではなじみのないスポーツだが、競技生活は順調なのだろうか。

日本では銃を保持するのも大変だと聞きます。

障がいに合った種目エアピストルを始めることになったのですが、まずビームピストルの試験を受けて、その後1年くらい銃を保持できる順番を待ちました。2016年から国内の大会に出場するようになり、2017年11月のワールドカップ(バンコク)で国際大会に初めて出場しました。

海外戦デビューでは、実力を発揮できましたか?

会場入りし、周りを見渡したら海外選手ばかり。完全に雰囲気にのまれていました。なんとか気持ちを立て直して試合に臨んだつもりだったんですが、結果は24位。コーチと話しても、どういう感情でどんな撃ち方をしたのか、あまり思い出せなかったくらいです。

帰国後、取り組んだことは?

射撃自体に動きはないんですけど、1時間15分の間、立って撃つ体力が必要だと感じたので、ランニングを始めましたし、銃を構えるトレーニングもしっかり意識して行うようにしました。うまい人を目の当たりにして、より安定する自然な構えや姿勢に変えたりもしました。いまは練習が楽しくて仕方ないですね。

メンタル面はどうですか?

目標は東京2020パラリンピックですが、ワールドカップの決勝を見て「あの舞台に立ちたい」という気持ちも湧きました。世界のトップとまだ差があるなと痛感しましたが、でも同じ人間ですし、やれないことはないと考えを巡らせ、普段のモチベーションにしています。

強豪選手の特徴を教えてください。

強い選手は同じリズムで同じ動作で撃ってるので、そのあたりはピストルの見どころと言えますね。あとはフォロースルーも大事で、強い選手は撃った後もしばらくそのままトリガー(引き金)を引き続けていますね。


―― そして、今年5月に行われた世界選手権で東京2020パラリンピックのMQS(出場資格獲得のための標準点)を突破。今後も、アジアや世界の大会で実績を積みながら、世界の順位を上げていくつもりだ。

練習のとき、ノートとペンをお持ちでしたね。

普段は練習メニューを書き出したりするんですけど、それ以外に「手首を固定する」「まっすぐトリガーを引く」というような体にしみこませたいことを書きます。いい記憶だけ記してライブラリーとして残すようにしているんです。世界選手権に行った際にはノートを見返して「これだけ練習してきたんだ」と心を落ち着かせて臨みました。

最後に、東京パラリンピックの目標を聞かせてください。

やっぱり出られたら最高の結果を求めたいと思うので、金メダルは、目指したいところです。射撃の大会の決勝は他とは違い、太鼓や音楽がガンガン流れてたりしてにぎやかなんで、応援もしやすいはず。だから、皆さんに楽しんでもらうためにもぜひ決勝の舞台に立ちたいですね。


text by Asuka Senaga
photo by X-1

山内裕貴・東京2020パラリンピックを狙う射撃のホープ

『山内裕貴・東京2020パラリンピックを狙う射撃のホープ』

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