熱闘の10日間が閉幕! 北京冬季パラリンピック閉会式レポート

熱闘の10日間が閉幕! 北京冬季パラリンピック閉会式レポート
2022.03.14.MON 公開

3月13日、北京冬季パラリンピックの閉会式が、開会式と同じ北京の国家体育場(愛称「鳥の巣」)で行われ、次の冬季パラリンピック開催都市であるミラノ・コルティナダンペッツォへと、パラリンピック旗が引き継がれた。

閉会式の演出を務めたのは、北京冬季オリンピックの開閉会式、および今大会開会式と同じく、チャン・イーモウ監督。会場の中央の床に大きなレコードの映像を映し出し、そこに中国の長い歴史や人々の記憶に、アスリートたちの活躍やボランティアたちの献身的なサポートの様子が刻まれていく様子を描いた。

「すべてのアスリートに拍手を」

午後8時(日本時間午後9時)、北京大会の閉会式がスタートした。会場の真ん中に現れたのは巨大な茶色のレコード。パラリンピックのマークであるスリーアギトスと、北京大会のシンボルカラーである赤、緑、黄色、水色などの服を着た人たちが、巨大なレコードの針をレコードの上に落とすと、レコードが回り始め、演奏が始まった。同時に、レコードの針がレコード上に冬季パラリンピックの6競技のピクトグラムを描き出す。ピクトグラムが浮かび上がると、今度はレコード盤いっぱいに大会のハイライト映像が映し出された。「すべてのアスリートに拍手を」とのアナウンスが流れると、会場から拍手がわき起こった。

巨大なレコードを表現 photo by Getty Images Sport

中国国歌の演奏に合わせて、中国国旗が掲揚されたあと、ベートーヴェンの交響曲第9番の演奏とともに、北京大会のマスコット、シュエ・ロンロンたちと、水色と白の衣装を着たパフォーマーたちが、ジャンプや手拍子をしながら入場した。

人気者となったシュエ・ロンロン photo by Getty Images Sport

金メダリストとなって川除大輝が再び旗手

会場の床に描かれたレコードの映像が地球に変わると、46の国・地域の旗手が入場し、他のアスリートたちは観客席で閉会式を楽しむ形で行われた。日本は2番目に登場。クロスカントリースキー男子20キロクラシカル(立位)で金メダリストとなった川除大輝が、開会式に続き旗手を務めた。

閉会式の旗手を務めた川除大輝 photo by AFLO SPORT

最後に入場したのは、開催国の中国。今大会に向けて、海外の指導者を招くなど強化を図った成果が表れ、金18個を含む61個のメダルを獲得。前回大会の1個から大躍進し、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長が「中国はパラリンピック冬季スポーツ大国となった」と評すほどの成功を収めた。

1万8000人のボランティアを代表し、6人が登壇。新たにIPCのアスリート委員となったカナダとノルウェーの2人のアスリートから、花束とシュエ・ロンロンの小さなあみぐるみが贈られた。あみぐるみは、中国の障がいのある人たちによる手づくりで、メダルのように首からかけられるようになっている。

ボランティア活動の様子も映像で紹介された。障がいのあるボランティアも数多く参加し、選手や関係者の誘導、雪かき、選手の用具のセッティングのサポートなど、あらゆるところで献身的に尽力したようだ。

IPC旗は4年後の開催地へ

その後は再び、会場の床に巨大なレコードの映像が登場し、パフォーマンス「愛の呼びかけ」が披露される。視覚に障がいのある4人の歌手が『YOU RAISE ME UP』を歌い上げるのに合わせて、聴覚に障がいのある人たちがパフォーマンスを披露。円の中には、障がいのある子どもたちが描いた絵が次々と映し出される。最後は、円が大きな笑顔の絵となり、その上に「LOVE」の文字が浮かび上がった。

視覚に障がいのある4人が歌声を披露 photo by Getty Images Sport

フラッグハンドオーバーセレモニー。IPC旗は、北京の陳吉寧(ちんきつねい)市長からパーソンズ会長へ、そして2026年の開催都市、ミラノ市のAnna Scavuzzo(アンナ・スヴッツォ)副市長とコルティナダンペッツォ市のGianpietro Gedina(ジャンピエトロ・ゲディナ)市長へと手渡された。イタリアの歌手が歌い上げるイタリア国歌に合わせて、イタリア国旗が掲揚。イタリア国歌は、このセレモニーのために特別にアレンジされたものだそう。なお、二つの都市による冬のパラリンピック共同開催は初となる。

北京からイタリアの2都市へバトンタッチ Photo by AP/AFLO

イタリア大会への招待状として、「WE ARE THE LIGHT」と題した映像が披露される。強い意志や勇気を内に秘め、そのエネルギーで世界を照らすアスリートたちを光にたとえた。光輝くアスリートたちのパフォーマンスから力をもらう人たちを描き、「ミラノ・コルティナで会いましょう」と呼びかけた。

パラリンピアンを見よ

最後にスピーチしたパーソンズ会長は、東京大会から続く夏冬連続のパラリンピック開催を「7ヵ月で2大会開催は快挙」と評価した。そして、現在の困難な世界状況を強く意識して、こう締めくくった。

「最も困難なときに皆さんのパフォーマンスはまぶしく輝いた。選手村では異なる考え方やできることの違いが見られたが、違うことで分断されることはなかった。人は対話ができる世界に生きることを望んでいる。パラリンピックムーブメントは、世界のリーダーたちが誇り高きパラリンピアンの行動に倣(なら)うことを望む。謝謝! サンキューベリーマッチ! ムーチョ・オブリガード!」

力強くメッセージを発信するパーソンズ会長 photo by Getty Images Sport

そして迎えるフィナーレ。中国国内の障がいのある人たちが笑顔で音楽やダンス、スポーツを楽しむ姿が映し出される。レコードが時計に変わり、その中央部分に大会のハイライトが映し出され、時計の中に吸い込まれていく。古代中国の日時計や暦も描かれ、今大会が中国の長い歴史の中の新たな1ページとして刻まれたことが示される。バイオリンのソロ演奏とともに、会場の高い位置に掲げられていた聖火がゆっくりと降下。雪の結晶が小さくなると、最後に聖火が消され、大会は静かに幕を閉じた。

今大会も数々の名シーンが生まれた photo by Getty Images Sport

今大会は、コロナ禍、そしてロシアによるウクライナ侵攻という、激動する世界情勢のまっただ中での開催。予定通り無事に全日程を終えたが、共生社会を目指すパラリンピックとパラスポーツが果たす役割は、これからますます大きくなるだろう。

text by TEAM A
key visual by Getty Images Sport

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