【Road to 2026】笑顔あり涙あり! 選手たちが車いすカーリング“チーム中島”のパラリンピック壮行試合を実施

【Road to 2026】笑顔あり涙あり! 選手たちが車いすカーリング“チーム中島”のパラリンピック壮行試合を実施
2025.12.15.MON 公開

カーリング界がオリンピック最終予選で盛り上がる12月の週末、どうぎんカーリングスタジアム(北海道札幌市)では、パラリンピックを見据えた壮行試合が行われていた。

主役は、世界車いすミックスダブルスカーリング選手権の優勝ペアとして、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会に挑む中島洋治小川亜希。2人の強化などを目的に開催された壮行試合は、2人のチームワークに加え、長い競技歴で高めてきたカーリング仲間との連帯感を感じるものだった。

メダルが有力視される“チーム中島”の壮行試合が行われた

初対戦の相手と実践練習

2日間にわたって行われた壮行試合は、ミックスダブルスを中心に4人制のゲームも行われ、健常者も車いすカーラーも参加した。

ドローの技術が“チーム中島”の強み

ミックスダブルスの“チーム中島”は、ストーンが滑るアイスに苦しみながらも2日間で6試合をこなした。対戦相手は初顔合わせのペアであり、格好の練習相手だ。スウィープなしの“チーム中島”に対して、健常のペアはスウィープあり。負けも経験しながら、カーリング漬けの2日間を終え、中島は「一ヵ月分の練習ができた感覚」と充実感でいっぱいの様子。小川も「パラリンピック本番の氷はどうなるかわからないので(今回のようなスピードの出るアイスでも)ウエイトのコントロールができるようにならないといけない。残りの練習でやるべき課題が見つかり、気合いが入りました」と気持ちを新たにした。“チーム中島”は、1月のカナダ遠征を経て3月に本番を迎える。

“チーム中島”に帯同する荻原もミックスダブルスの試合に出場

車いすカーラーの交流の場に

今回の壮行試合は、日本車いすカーリング協会のアスリート委員会主催による初のイベントだった。
「楽しく、フランクにカーリングができる機会を作りたかった」と話すのは、委員長の高橋宏美。地元である札幌カーリング協会の協力も得て6月から準備を重ねてきた。

アスリート委員会の委員長を務める高橋

高橋は、開催の経緯を話す。
「車いすカーリングにおいて、全国の選手が集まるのは、年に1回の日本選手権だけ。アスリート委員をしていると、いろいろな選手の声が集まるのですが、他のチームの選手とカーリングをしたり、健常者と対戦したりする交流の場がほしいという意見がありました。経験の浅い選手にとっても参加しやすく、いい機会になります。一方、今年度は3月にパラリンピックがある。選手として“チーム中島”を送り出す壮行会もしたかったので、交流の機会と壮行試合を抱き合わせる形で実施しました」

次回の開催については、アンケートの結果をもとに検討するというが、アスリート委員会としては意義のある最初のステップとなった。


2日間、3シートで次々と試合が組まれた

今回の壮行試合は、車いすの選手だけではなく、健常のカーラーにとっても学びの機会になったという。ジュニアスクールで練習に励み、ユースオリンピックを目指す、中学生の青山瑛太さんは“チーム中島”と対戦し、「ドローが決まっていてうまく試合を作っていたところは勉強になった。世界で活躍している選手と対戦できて貴重な経験だった」と話す。ペアの藏本千花さんも「ガードもすごかった。めちゃくちゃ楽しかったです」と笑顔で語った。

中学生ペアと対戦した“チーム中島”

強豪として知られる「北海道コンサドーレ札幌カーリングチーム」の大内遥斗は、“チーム中島”のコーチでもある荻原詠理とペアを組んで大会に参加した。
「アイスの変化を読む力を含め、車いすの選手たちの技術の高さに驚いた」と話したうえで、「“チーム中島”の2人はリラックスして試合に臨んでいるが、どんな大会でもいつものコンディションでできる要因は2人の雰囲気づくりにある。カーリングを楽しんでいるから、結果を出しているのだと間近で感じられました」と納得の表情で語った。

寄せ書きにメッセージを書く大内

関係者からの熱いエールに……

試合中の“チーム中島”の笑顔も印象的だったが、すべての試合を終えた後に行われた壮行会も笑顔であふれていた。

KiT CURLING CLUBの柏原一大が「カーリングを始めたときから尊敬の念を抱き、2人の背中を追いかけてきた」という2人に応援メッセージ入りの日の丸を贈り、「(2人が4人制代表として出場したバンクーバーパラリンピックから)世界の中島が復活ということで、体調を崩さないで頑張ってください。そうしないと(オルタネートである)僕たちが行くことになってしまうので」とスピーチし、参加者たちはどっと沸いた。

ライバルであり、車いすカーリング仲間の柏原が寄せ書き入り日の丸を贈呈した

その後、“チーム中島”に向けた応援動画がモニターに映し出され、15組約45人のメッセージが流れると、「世界選手権で金メダルを獲っても泣かなかった」という中島が思わず涙。それぞれの人たちとの思い出が呼び起こされ、熱いものがこみ上げたと言い「こんなはずじゃなかったのに。感動してしまった」とまた涙。小川の頬にも大粒の涙が伝い、「いい仲間がいてカーリングを続けてきてよかった」と言葉を詰まらせながら感謝を述べた。

カーリング界から動画で熱いメッセージが集まった

動画メッセージは、昨年からチームに帯同する荻原が自身の伝手で関係者に依頼したり撮影したりしたもの。この日参加できなかった全国の車いすカーラーに始まり、日本カーリング協会会長や各都道府県協会の重鎮、小穴桃里・青木豪ペアなど海外遠征中の日本代表もメッセージを寄せた。

中島と小川は、涙を流しながら応援を呼びかけた

最後は、「パラリンピックの最終日まで残れるように頑張っていきたい」と中島がスピーチ。

2人の挑戦の軌跡は、世界の舞台を目指す車いすカーリング選手たちの歴史でもある。“チーム中島”に温かい拍手とエールを送った車いすの選手たちは、5月の日本選手権で再会することを誓い、それぞれの帰路についた。

text by Asuka Senaga
photo by Takamitsu Mifune

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