日本財団パラリンピックサポートセンター

非アスリートな稲垣吾郎が語る、役者としてのモチベーション維持術。

非アスリートな稲垣吾郎が語る、役者としてのモチベーション維持術。
2018.11.30.FRI 公開

text by Number編集部(Sports Graphic Number)
photograph by Takuya Sugiyama

※本記事はSports Graphic Number との共同企画です。


8月30日発売のNumber960号よりスタートした連載、「語ろう! 2020年へ 新しい地図×Paralympic Athletes」。稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人がパラリンピアンと対談していくシリーズ企画だ。

その第2回目のホストは稲垣さんが務め、ゲストには日本のパラ競泳界の第一線を走り続けるおふたり、木村敬一選手と山田拓朗選手を迎えた。

木村選手は生まれてから一度も視力を持ったことがない、全盲のスイマーだ。北京パラリンピックに初出場してから3回パラリンピックに出場し、これまでに合計で銀メダル3個、銅メダル3個を獲得。2020年東京パラリンピックでは「いい加減、獲りたいです」と金メダルに向けて日々邁進している。


「見えたことがないのにどう泳ぎを?」

山田選手は13歳、中学一年生のときアテネパラリンピックに出場、史上最年少スイマーとして脚光を浴びた。障害は右前腕の欠損だ。「腕が1本ないからって甘えるわけにはいかない」と幼い頃から健常者の選手に混じって練習を重ね、リオパラリンピックでは銅メダルを獲得している。

稲垣さんは小学生のころスイミングスクールに通っていたことがあるものの、ヘルパー(浮き袋)がとれるくらいにしかならず、今も泳ぐことはできないという。

「13歳でパラリンピックってどんな感じなんですか?」

「見えたことがないのにどうやって泳ぎを覚えたんですか?」

 何度も世界の舞台で戦ってきた選手に次々と疑問を投げかけ、また新たにパラスポーツの楽しさや奥深さを発見した様子だった。

稲垣がアスリートによくされる質問。

選手のおふたりからは稲垣さんには、こんな質問が飛び出した。

「どのように仕事のモチベーションを保っているんですか?」

「この質問、実はアスリートの方によくされるんですよね。僕は13、4歳からこの仕事をしているので、モチベーションを保つというより、まるで息を吸うかのように仕事しているんですけど……」

稲垣さんはそうはにかみながら、長きにわたり芸能界で活躍し続ける秘訣を語ってくれた。

「僕のような仕事は、普段の成果を発揮するのが、アスリートのように『ある瞬間』というわけではありません。アスリートの方々は、とある試合に標準を定め、そこに向かって努力を重ねていきます。そしてトレーニングの成果が発揮されるのは、試合の一度きり。常に『瞬間』の勝負をしていますよね?

でも僕らの場合、ちょっと違うんです。仮に生の舞台で失敗したとしても、明日も公演は続いていく。ですから、ゆるやかに、でも長くモチベーションを保てるように心がけています。調子が出ない日は『こんな日もあるかな』くらいの気持ちで無理をしないようにしていますね」

「勝負所」に「力み」は厳禁。

「ここぞ」という時の気合いの入れ方を問われると、こんな答えが返って来た。

「僕は『ここが勝負所だ』とか考えて力んでしまうと失敗することが多いんですよ。スポーツ選手には絶対に向いていないな(笑)」

アスリートにとっては毎試合すべてが「勝負所」である。しかしだからといって「力み」は競泳選手にとって大敵だという。

木村選手の場合、「リオの時は気合いが入りすぎてしまい、思うように力を発揮できなかった。泳いでも泳いでも1位に届かず、イライラもしていた」そうだ。2020年はメンタルのコントロールも上手くしていくことが課題であると話してくれた。

山田選手は水中では目は「半開きくらい」。

水泳は水を使って力を伝えていく競技。無駄な動きや力みを減らすことがスピードに繋がる。山田選手は力みを減らす意外なコツを教えてくれた。

「僕の場合は、泳いでいる時にゴーグルの中で目をしっかりと開けていると力んでしまうので、半開きくらいで泳いでいるんです。選手によって目の開け方は違うと思います」

するとゴルフが大好きだという稲垣さんがこんなエピソードを思い出した。

「これは僕の主観ですが、ゴルフの達人も球を見るときはしっかり見るのではなく、ボヤっと見ている気がする(笑)」

どんな分野であれ、成功の秘訣は「力まない」ことにあるのかもしれない。

Number964号の誌面では、それぞれの障害ならではのテクニックや、世界で戦うにあたっての心構え、日本のパラ競泳界の現状などが、日本のパラ競泳界の現状に危機感を持つ山田選手、木村選手の口から語られている。


本連載は約2カ月に1度の掲載、次回は12月掲載の予定です。

Number Web
非アスリートな稲垣吾郎が語る、役者としてのモチベーション維持術。

『非アスリートな稲垣吾郎が語る、役者としてのモチベーション維持術。』