日本パラ水泳選手権、今年最後の全国大会に523選手が集結

日本パラ水泳選手権、今年最後の全国大会に523選手が集結
2018.12.06.THU 公開

12月1日から2日にかけ、「第35回日本パラ水泳選手権大会」が三重県鈴鹿市のスポーツの杜鈴鹿水泳場で行われた。これまで「日本障がい者水泳日本選手権」として行われてきたが、親しみやすさを重視し大会名称を変更。参加人数は過去最多で、全国から参加標準記録を突破するなどした男子355人、女子168人の総勢523人がエントリーし、今年最後の全国大会に臨んだ。

日本選手権の会場となった、三重県鈴鹿市の「スポーツの杜鈴鹿水泳場」

22歳・辻内彩野が200m自由形でアジア新!

大会2日目、女子200m自由形(S13/視覚障がい)の辻内彩野が9月のジャパンパラ競技大会で自らが作ったアジア記録を5秒以上短縮する2分17秒27のアジア新記録で優勝。前日の女子100m平泳ぎの日本新記録に続く記録更新で2018年を締めくくった。

 

今回の躍進には、今年10月、初めて出場したインドネシア2018アジアパラ競技大会で銅メダル4つに留まった悔しさがあった。栄えある結果だが、辻内には反省点が多く、帰国後は上半身の筋力を上げるトレーニングに取り組んだという。

「もともと私の泳ぎは大きいんですが、筋力や体力不足で泳ぎが小さくなっていたので、大きく水をかき速く戻すという練習をしたんです。今回はアジアパラほどバテず、成果を感じました」

今シーズン、大きく飛躍した辻内彩野は、自由形が専門だ

そんな22歳は、2017年にパラ水泳界にデビューして以来、国内では他の追随を許さない存在になっている。今年は国際大会を数多く経験し、国内では「怖いものがなくなってきた」と度胸がついてきたとも話す。

自信を印象づける言葉もあった。柔道整復師の資格取得を目指す辻内は、国家試験を受験するため、3月のパラ水泳春季記録会(静岡県)2日目に出場できない。2019年に行われる世界選手権の選手選考会も兼ねている大会へのエントリー数が減ることはプッレシャーのはずだが、「調子をうまい具合に合わせて、タイムを出したいです」と屈託のない表情を崩さなかった。

「(パラ水泳春季記録会には)前日入りして土曜日の朝イチの試合に出て、すぐ東京帰って試験を受けてきます!」

東京2020パラリンピック出場権にも大きく関わる世界選手権の出場権をつかむため、来年3月、辻内は数少ないチャンスにかける。

アジアパラ5冠の鈴木孝幸が日本新!

アジアパラ5冠の鈴木孝幸は、初日の男子50m背泳ぎ(S4/運動機能障がい)で日本新記録をマークした。「日ごろ、背泳ぎは泳がないので、このタイムは悪くもないけど、すごくいいわけではない」と振り返ったが、多くの選手が平凡な結果に終わるなか、50秒79とこれまでの日本記録を大幅に縮める成績で貫禄を見せた。

選手宣誓した細川宏史を笑顔で迎える鈴木孝幸(前列右から4人目)

鈴木にとってシーズンの切れ目はアジアパラ後で、すでに次に向かって始動している。来年3月の記録会、さらには世界選手権での表彰台を見据え、もうワンステップ上がることが目標だ。

とはいっても鈴木は、「いまテクニックを変える予定はない。泳ぎも筋トレも今までやってきたトレーニングを続けていく」と現状維持を強調している。前シーズンが「いいタイムを出せた1年だった」と感触がよかっただけに、留学先のイギリスと日本を往復しながらこれまでのペースを守っていくつもりだ。

パラリンピックに4度出場している31歳は、「1日1日しっかりトレーニングして、まだまだ結果を出せるように頑張ります」と前を見据えていた。

世界記録保持者の富田はフォームを改善中

「4種目すべてのフォームを大胆に変えている」と打ち明けたのは、2018年6月のドイツ大会で男子800m自由形の世界記録を叩き出した富田宇宙(S11/視覚障がい)だ。

富田宇宙は来季を見据えてフォーム改造中だ

「これまで手をかききったところで顔を上げていたんですが、今は手をかき始めるところで顔を上げています。わずかな差ですが回転が速くなり、今までより前に突っ込んだ姿勢で上下動少なく泳げるんです」

しかし、新しいフォームはまだ体に定着しておらず、今大会は「もう一歩」という結果に終わっている。男子50mバタフライは28秒83、同100mは1分03秒34と、大会記録を塗り替えるのが精いっぱいだった。

だが、富田の雰囲気は明るい。今後については「年内はフォームを見直して年明けからしっかり泳ぎこみ、来年もどんどん調子を上げていきたいです」と語った。3月の記録会ではよりパワーアップした新生・富田を披露してくれるだろう。

平泳ぎのスペシャリスト中村智太郎は巻き返しを誓う日本新

9月に行われたジャパンパラの男子100m平泳ぎ(SB6/運動機能障がい)でアジア新を出した中村智太郎は、直後のアジアパラでその記録を中国選手に塗り替えられた悔しさがある。今回はその悔しさを胸に挑んだ大会だったが、結果は自身がアジアパラで樹立した日本記録を更新する1分24秒85をマークした。

「アジパラの結果が嫌やったんで、帰ってきてから休まずガンガン練習していました。今回、調整をかけずに臨んだので結果はまずまず。でも現在のアジア記録である1分21秒23には届かなかったので、ちょっと頑張りが足りなかったですね」

悔しさをバネに練習し、日本記録を更新した中村智太郎

34歳のベテランの口からは、終始悔しさがこぼれた。さらに上へ、という思いが尽きないのが頼もしい。「今、中学生の女子の強い選手と切磋琢磨している。足の蹴りを課題にしています」と進化を誓った。

世界&アジア記録ホルダーたちの思い

日本記録などには及ばなかったものの、2018年に世界&アジア新記録を樹立した選手たちは、それぞれ来年3月の記録会や世界選手権に目を向ける言葉を残していた。

知的障がい者クラスのエース中島啓智

1月に男子400m個人メドレーで世界新記録を樹立した中島啓智(S14/知的障がい)は、男子200m個人メドレー、男子100mバタフライで優勝。タイム的には満足いかないと言うが、「全種目で東京に出場することが目標なので、苦手の平泳ぎで一歩ずつタイムを縮めていきたい」と改善点を口にした。

一方、6月に男子100mバタフライ(S14)で世界記録を塗り替えた東海林大は、スタート台で極度の緊張に襲われ男子200m個人メドレーは2位、男子200m自由形は3位に留まった。レース後はうなだれて涙目になっていたが、3月の記録会までにはしっかりと調整したいと宣言。「私はいつも選考会には弱くて、毎年、何回やっても選ばれなかったんですけど、普段の練習から不安を打ち消すようにして、これからスピード練習を頑張りたい」と最後は気丈に振る舞った。

3月の記録会での活躍を誓う東海林大

今年、5種目でアジア新記録を叩き出した池あいり(S10)は、女子200m個人メドレーについては「久しぶりのレースでドキドキしてしまい、思った以上に遅かった」と苦笑。高校生スイマーで、今年アジア記録ホルダーになった小池さくら(SB6)と宇津木美都(SB8)も思うようにタイムは伸びなかったが、進化の過程にあることを強調した。

力強い泳ぎを見せた若手のホープ宇津木美都

6月に女子100m背泳ぎ(S5)でアジア新を出したベテランの成田真由美はひたすら明るく、「50m背泳ぎは自分の記録を塗り替えること、100m平泳ぎは他の選手の記録を塗り替えることが目標でした。最後の日本選手権でこのようなタイムで終わることができてホッとしています」と笑顔で大会を総括した。

ベテランの成田真由美は笑顔で大会を終えた

text by Yoshimi Suzuki
photo by X-1

※本事業は、パラスポーツ応援チャリティーソング「雨あがりのステップ」寄付金対象事業です。

日本パラ水泳選手権、今年最後の全国大会に523選手が集結

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