日本財団パラリンピックサポートセンター

老若男女が笑顔で激戦「全国横断パラスポーツ運動会」中四国ブロック大会

老若男女が笑顔で激戦「全国横断パラスポーツ運動会」中四国ブロック大会
2019.01.17.THU 公開

昨年12月より日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)が全国7ブロックで開催している「平成30年度スポーツ庁委託事業 全国横断パラスポーツ運動会」。3回目の中四国ブロック大会は1月12日、広島県の廿日市(はつかいち)市スポーツセンターサンチェリーで行われた。会場にはこれまでで最多となる16チーム244名の参加者が詰めかけ、5種目のパラスポーツで得点を争った。優勝チームは3月17日にパラサポが主催する日本一決定戦(於:東京都)に招待されるとあって、これまで以上!?の熱戦が繰り広げられた。

広島のシンボルである原爆ドーム
会場となった廿日市市スポーツセンターサンチェリーには多くの参加者が詰めかけた
これまでで最多の16チーム244名の参加者が集った
<全国横断パラスポーツ運動会 中四国ブロック参加チーム>
株式会社NTTドコモ、NTT西日本、グランドプリンスホテル広島、呉市、
県立広島大学、株式会社JTB、廿日市市、株式会社 八天堂、
パナソニック株式会社、Hanaと花舎、広島県、広島県中古自動車販売組合、
広島パナソニックファミリー会、深川医療器株式会社、マツダ株式会社、
株式会社マツダE&T

ウォーミングアップで体と心を暖める

準備運動の後、行われたのはパラスポーツ運動会では恒例となっている「アイスブレイク」。これは参加者全員が目隠しをした状態で、血液型や名前などの与えられたテーマに合わせてグループを作るというプログラム。普段、人間が情報の8割を得ているという視覚を制限した状態で行うことで、五感をフルに使ってコミュニケーションを図るようになるという効果がある。実際に今日初めて顔を合わせる参加者同士も、チームの枠を超えた絆が深まり、会場が一気に打ち解けた雰囲気となっていた。

まずは参加者全員でラジオ体操を行い準備運動で体を暖める
同じグループの仲間が見つかったら、手を取り合ってお互いが離れないように。触覚を使った
コミュニケーションが大切
アイマスクを装着し、視覚を制限された中でもついいつものクセで手を挙げてしまうもの
年齢や性別、それに障がいの有無なども関係なく、参加者同士の垣根が一気になくなる

静寂の中で白熱した闘いが繰り広げられるゴールボール

1種目目はゴールボール(ソフトボールを使用)。これは1チーム3人で参加者全員がアイマスクを装着。その状態で自陣からボールを転がし、相手側のゴールラインを割ることができれば得点が入る。視覚を制限された状態でゴールラインに向かってボールを投げるには、自分の位置や向いている方向を正確に把握することが不可欠。そのため、プレーヤーは床にテープで貼り付けられたタコ糸を触って常に自分の向きを把握しておく必要がある。ゲーム中には、方向を見失ってしまってオウンゴールを決めてしまうシーンもあった。

オフェンス側は目隠しをした状態で相手側のゴールラインに向けてボールを転がす
ディフェンス側はボール内の鈴の音を頼りに体を投げ出し、ボールを阻止する
全身を使ってボールを阻止するため、体の動きはかなりダイナミック!
競技中は床面のタコ糸を触り、自身の位置と方角を把握しておくことが大切
ボールの内部に入れられた鈴の音が頼りのため、競技中は常に静かにする必要がある
見る側もプレー中は声を出すことができないので、心の中で精一杯の声援を送る

今大会には「パナソニック株式会社チーム」と「広島パナソニックファミリー会チーム」の2つのパナソニックの名を冠したチームが参加していたが「どちらもパナソニックのグループ会社で、普段から交流のある若手で構成されたチームです」と語るのは「パナソニック株式会社チーム」の中村さん。競技では、お互いに対戦する場面もあったが、試合の前後はお互いにハイタッチを交わすなど良い雰囲気で会場を盛り上げた。「ゴールボールは初めて体験しましたが、見ている側もかなり白熱しますね。静かにしなければならないのに、ついつい声が出そうになりました」(中村さん)と競技の面白さを語ってくれた。

初体験でも楽しめるシッティングバレーボール

2種目目はお尻の一部をコートに着いた状態で行うシッティングバレーボール(ソフトボールを使用)。6人チームでローテーションをしながらプレーする点は通常のバレーボールと共通だが、コートは狭く、ネットも低いため、初心者でもプレーしやすい。この競技からは声を出して応援できることもあり、会場は一気にヒートアップ。多くのルールがバレーボールと共通のため、馴染みやすい点も魅力の1つだろう。

お尻を着いた姿勢で行う以外は多くの点でバレーボールと共通するルールで行われる
コートにお尻を着けたまま、素早く移動できるよう事前にみんなで練習
着座したままでもダイナミックなプレーが頻発
誰かがミスをしてもお互いにフォローしやすく、みんな笑顔でプレーしていた
チームや競技を問わず、試合後はみんなでハイタッチするのも、この日よく見られた光景だった

この競技を3戦全勝で終えたのが「株式会社JTBチーム」。同社の広島支店の若手社員が中心に構成されたチームだが、ゼッケンが入ったおそろいのTシャツを着用し、チームワークも抜群だった。同チームの中岡さんは、「パラスポーツの経験者は誰もいないですし、運動経験者も半分くらいしかいませんが、それでも楽しめる点が面白いですね。初心者ばかりなので、みんな同じレベルで楽しめたことが結果にもつながったのではないかと思います」とにっこり。その後は「体験する機会のあまりない競技ばかりなので、今日は1日楽しみたい」と足早にコートに戻って行った。

昼休みにはパラスポーツの体験会も

今回、初の試みとして行われたのが昼休みの時間を利用したパラスポーツ体験会。運動会に参加している両親と一緒に会場へ来ていた子どもたちが集まり、2つのパラスポーツを楽しんだ。はじめに体験したボッチャでは、簡単にルールの説明を聞いてすぐにプレー開始。子どもたちの飲み込みは早く、夢中でボールを投げている姿が印象的だった。年齢を問わず楽しめるところもパラスポーツの魅力だ。

小さな子どもも一緒になってゲームを楽しんでいた
簡単な説明だけでルールを把握し、真剣な表情でボッチャをプレーする子どもたち

続いて行われたのが競技用車いすの体験。子どもたちはすぐにコツを掴み、思いのままに車いすを操っているようだった。競技用車いすは動きが軽く、操作に対する反応も良いため、大人が初めて乗るとコントロールに戸惑うことが多い。理屈で考えるより、感覚で動く子どもたちのほうが、こうした競技は上達が早いのかもしれない。

競技用車いすを使った鬼ごっこでは、大人顔負けの動きで、逃げるスタッフをあっという間に捕まえてガッツポーズ
体験会の最後には、柔らかいボールを使ったミニゲームを楽しんだ
小さな子でも、車いすを操るのは楽しいようで、ずっと動き回っていた
ロビーに設けられた東京2020パラリンピックへの応援メッセージを集める「応援-OENフラッグ」コーナーではたくさんの寄せ書きが集まった

パラスポーツの奥深さを感じられるボッチャ!

午後の競技はボッチャで幕を開ける。3人ずつのチームで的となる白色のジャックボール(目標球)に向けて6球ずつを投げ合い、どちらがより近くに寄せられたかを競う。一見すると単純なルールで、体力も必要としないが、ジャックボールや相手の球をはじき出すことも認められており、ゲーム性が高く、奥が深い競技だ。また、一球ごとに逆転するゲーム展開も多いため、見ている側も楽しめて、応援にも力が入る。

パラリンピック競技ボッチャはボールをよりジャックボールに近づけたチームが勝者となる
狙い通りにボールを投げたり転がすコントロールの正確性が求められる
どちらのボールがより近いかの判定も厳密性が求められるため、計測は慎重に行われる
体力よりも正確な投球やゲームの戦略が求められるため、誰もが同じ土俵で楽しめる
一球ごとに展開が変わり、一発逆転もあり得るだけに応援する側も息を呑んで見つめる

この種目で逆転続きのゲームを制し、全勝で競技を終えたのが「マツダ株式会社チーム」。とくに車いすユーザーである大原さんと黒川さんの活躍が目立った。この2人、同社の福祉車両の使い勝手などを検証しアドバイスする業務に就いているとのことだが、ボッチャは2人とも初体験。「これまで陸上競技や車いすテニスは経験したことがありましたが、ボッチャもゲーム性が高くて面白い!」と語ってくれたのは、逆転のスーパースローを決めていた大原さん。ゲームを決定付ける一球を投げた黒川さんも「ルールも今日初めて知りましたが、誰もが同じレベルでプレーできるのが楽しいですね」とボッチャの面白さに開眼していたようだった。

狙い通りのところにボールが行き、ゲームをひっくり返せばガッツポーズも
初めてでも十分に競技を楽しめるところもボッチャの魅力

会場が一体となって盛り上がる車いすポートボール

このパラスポーツ運動会で、毎回盛り上がるのが車いすポートボール。車いすバスケットボールのルールをアレンジし、ゴールの代わりに台の上に乗ったゴールマンがボールをキャッチすることで得点になるため、初心者でも得点が入りやすく応援にも力が入る。カギとなるのはボールをつなぐための戦略性と車いすのコントロールで、その点に優れていると誰もがヒーローになることができるのだ。

通常のバスケットボールと同じくティップオフでゲームがスタート!
ポートボール方式のため、ゴールマンも含めたチームワークが勝敗のポイント
激しいボールの取り合いの中でも、どちらのチームも笑顔が耐えない
わかりやすいルールもあって、応援する側も含めて会場が一体となって盛り上がる
もちろん“勝負”なので、真剣な表情で力が入ったプレーが見られる場面も

この競技で強さを見せたのが「県立広島大学チーム」。国立広島大学と広島国際大学の3大学に跨るパラスポーツサークルのメンバーによるチームで、実は大学横断で結成されているとのこと。メンバーはそれぞれ得意とするパラスポーツがあり、その普及活動に関わっているが、普段から車いすバスケットボールをプレーしている南都さんは卓越した車いすコントロールで多くの得点シーンを演出していた。「車いすバスケットボールの普及活動をしていますが、これだけの規模で参加者がみんな楽しんでいるイベントは初めて。今後の活動にも参考になりますし、大きな刺激をもらいました」と、この大会の意義についても語ってくれた。

チームワークも重要な車いすリレー

最終競技は車いすをバトン代わりに走者が乗り換えていく車いすリレー。車いすの扱いはもちろんだが、バトンタッチの際にいかに車いすをスムーズに乗り換えられるかが勝敗を大きく左右するため、チームワークが問われる競技だ。予選はコートを往復する形で行われ、4つのリーグそれぞれの1位のチームが決勝に進出できる仕組み。決勝レースはオーバルコースで行われるため、コーナリングのスムーズさも問われる。予選と決勝でそれぞれポイントが入るため、総合優勝争いにも大きく影響する種目だ。

予選はコートを往復する直線コースで争われる
車いすを乗り換えるバトンタッチのスムーズさなど、チームワークの良さも問われる
オーバルコースで競われる決勝レースには、4チームのみが出場できるシステム
カーブの処理の上手さも勝敗を分けるポイントだけに、応援するほうも力が入る
圧倒的な速さを見せて優勝を決めたのは「深川医療器株式会社チーム」
もう1人、会場を盛り上げたのが「マツダ株式会社チーム」の大原さん(写真左)。1人でトップの座を奪い返し、独走を許さなかった

ここで強さを見せたのが「深川医療器株式会社チーム」。福祉用品の製造販売を手がけ、オーダーメイドでの競技用車いすも作っているメーカーらしく、自社製の車いすを持ち込む力の入り方で「車いす競技で負けるわけにはいかない!」と、レースを大いに盛り上げた。決勝では2位以下を周回遅れにする速さを見せて優勝を決めたものの、参加者の越智さんは、「車いすは経験者が多いですが、それ以外の競技は全然ダメでした。ルールなどは知っていましたが、実際にやってみるとイメージと大違い。あらためてパラスポーツの難しさと面白さを感じました」と謙虚なコメントを残してくれた。

なんと同点で4チームが並ぶ! 東京行きを決めたのは!?

全競技を終了し、得点が集計された結果、なんと「県立広島大学チーム」「株式会社JTBチーム」「マツダ株式会社チーム」「株式会社マツダE&Tチーム」の4者が280点で同点1位という前代未聞の結果に。多くのチームと参加者、それに応援団が駆けつけた今大会のレベルの高さを象徴する結果だが、3月17日に東京で行われる日本一決定戦に出場できるのは1チームのみ。最後はじゃんけんで東京行きの切符を争うこととなり、出場権は「マツダ株式会社チーム」が手にした。

じゃんけん勝負は一発で勝者が決まる驚きの展開。勝者である
「マツダ株式会社チーム」本橋さんも驚きの表情

日本一決定戦への切符を手にした「マツダ株式会社チーム」

2人の車いすユーザーを含むチーム構成で、各種目で安定した成績を収め、見事に日本一決定戦への参加権を手にした「マツダ株式会社チーム」。「パラスポーツの存在は知っていましたが、実際にプレーするのは初めて。誰もがプレーできますが、実は高度な技術が必要だったり奥が深い競技であることが感じられました」(吉鶴さん)、「それぞれの種目に特徴があり、楽しめましたがとくに面白かったのがボッチャ。一発逆転があるし、もっと練習を積みたいので、会社に練習場を設置できるように働きかけたいと思います」(本橋さん)と、その目はすでに日本一決定戦に向けられているようだ。

準優勝となった「株式会社マツダE&Tチーム」

マツダの福祉車両など特装車の製作を手がけ、優勝チームも「この分野では我々の先生」と認めるのが「株式会社マツダE&Tチーム」。表彰式でも「マツダ株式会社チームだけには負けたくなかった」とライバル心をのぞかせていた。「どの種目も面白かったですが、車いすポートボールは誰もが楽しめるようにルールがアレンジされていて良かった。過去に車いすバスケットボールを経験した際には、車いすの人たちに勝負にならない差を見せつけられたので……」(山本さん)とコメントしてくれた。

安定した強さを見せた「株式会社JTBチーム」

序盤の種目から安定した結果を残し、同点での準優勝となった「株式会社JTBチーム」は女性も多く、競技を楽しんでいる姿が印象的だった。「日ごろからスポーツはしていますが、今回は初めての種目ばかりで新鮮でした。どれもスポーツとしての面白さや醍醐味があって、楽しめましたが、見えない中で行うゴールボールが一番印象に残っています。自分が楽しむことがチームメイトや応援してくれる人たちにも楽しんでもらうことの出発点になると思うので、今日は目一杯楽しませてもらいました」(中岡さん)とパラスポーツ運動会のコンセプトである”i enjoy”を体現するコメントを残してくれた。

パラスポーツ普及に取り組む「県立広島大学チーム」

普段からパラスポーツの普及にも取り組んでいるという「県立広島大学チーム」は、それぞれのメンバーが得意とする種目で力を発揮し、やはり同点での準優勝という結果を残した。「自分たちも日ごろからパラスポーツに関わっていますが、今日参加して改めて障がいの有無や年齢に関わらず誰もが楽しめる魅力を持っていると体感することができました。また、自分が楽しむことでチームメートや対戦相手も競技を楽しむことにつながるのだと感じたので、今日の結果を今後の活動に活かしたいと思います」(落合さん)と語ってくれた。

≪次回記事≫
第4回 近畿ブロック 1/14(月) @西宮市・関西学院大学
「全国横断パラスポーツ運動会」特設サイトはこちら

text by TEAM A
photo by Kazuyuki Ogawa

老若男女が笑顔で激戦「全国横断パラスポーツ運動会」中四国ブロック大会

『老若男女が笑顔で激戦「全国横断パラスポーツ運動会」中四国ブロック大会』