修学旅行でパラスポーツ! 中学生が体験した新しい学びの形とは?
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普段は東京2020パラリンピック出場を目指す選手たちが集まる日本財団パラアリーナ(東京・品川区)。5月29日、修学旅行でアリーナに訪れたのは兵庫県の豊岡南中学校3年生だ。
この日、修学旅行のプログラムとして日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)のパラスポーツ体験プログラム「あすチャレ! 運動会」を体験した175人は、各クラスの各グループに分かれてそれぞれの勝負を楽しんだ。
午前9時すぎ、一行は大型バスでパラアリーナに到着。到着するなり、体操服に着替えた生徒たちは、グループごとに色とりどりのビブスを被って整列し、代表生徒が「今日は短い時間ですが、よろしくお願いします!」とあいさつ。その後、“ブッキー”ことパラサポの推進戦略部 伊吹祐輔プロジェクトリーダーが軽やかに競技用車いすを漕いで登場した。
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ブッキーが「パラスポーツを知っている人!」と挙手を呼びかけると、ほとんどの生徒が手を挙げ、具体的な競技名についても「ボッチャ」、「車いすバスケットボール」、「ブラインドサッカー」などと答えていく。
実は3年生の生徒たちは2年生のときに「総合的な学習の時間」で自分の気になるパラスポーツについて調べたり、ミニ新聞をつくったりしている。修学旅行の前にも、「保健体育」の授業でボッチャと車いすバスケットボールのルールを学んだ。そんな経緯もあり、生徒たちは臆することなくパラスポーツ運動会のプログラムに取り組んでいった。
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目隠しをしてドキドキの<アイスブレイク>
はじめに行われたのは、生徒たちのコミュニケーションを促す「アイスブレイク」。今回は生徒を半数ずつ2回に分けて行ったが、初回の生徒たちは“視覚障がい”の状態を体験することになる。まず参加者にアイマスクが配布され目が見えない状態になると、ブッキーからお題を出される。
「“血液型”ごとのグループに分かれてください!」
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「O型! O型!」と自分の血液型を大きな声で連呼する者もいれば、目隠しした恐怖からかゆっくりと歩を進める者もいる。近くにいる人同士が次第にグループになっていき、生徒の笑顔も広がっていく。同じ血液型の人同士は、離れてしまわないように手をつないだり肩を組んだり。視覚を頼りにできない状態にもかかわらず、手を大きく上げて同じ血液型の人を呼ぶ生徒の姿もあった。
「目をつぶっているのになぜジェスチャーする人が多いかというと、普段から目を使って情報を得るクセがついているから。五感のうち、聴覚や触覚など残された機能を使ってみてくださいね」
そうブッキーは呼びかけた。
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誰もが楽しめる<ボッチャ>
第1競技は生徒たちの知名度も高かったパラリンピック競技のボッチャ。最初に投球する白いジャックボールに向かって赤いボールのチームと青いボールのチームがそれぞれボールを投げたり転がしたりする。ゲーム性の高いシンプルなルールが魅力だが、相手のボールやジャックボールをはじき出すといった派手な投球もあり、観ている人にも面白い。コントロールが問われるため、真剣な表情でプレーする生徒も多かった。
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「ボッチャは宿題で調べたことがあり、ルールなどを知っていましたが、思っていたよりボールを投げる力加減が難しかったです。ジャックボールが動くから、最後まで勝負がわからないという魅力も改めて感じることができましたし、運動ができるとかできないとか関係なく、応援も含めてみんなで楽しめたのがよかったです」
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応援も盛り上がる<車いすポートボール>
約10分の休憩を挟んだ後、第2競技の車いすポートボールがスタート。パラリンピック競技の車いすバスケットボールではなく、初心者も比較的得点を決められるようにポートボール形式で行う車いすポートボールは、両エンドの台の上に乗ったゴールマンがボールを受けると得点になる学生たちにおなじみのルールだ。ほぼ全員が車いすバスケットボール用車いす(通称:バスケ車)に乗るのは初めてということで、車いすバスケットボールのトラベリング(ボールを持って車いすを3回以上漕ぐバイオレーション)はなくし、参加者は小回りの利くバスケ車を漕ぐ面白さと難しさを体験した。
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最後に、まだ車いすに乗っていない生徒や車いすバスケットボール経験のあるブッキーらスタッフによる「パラサポチーム」と、豊岡南中学校教員による車いすポートボール対決が行われ、生徒たちはこの日一番の歓声で両チームを盛り上げた。
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「車いすバスケットボールはテレビで見たことあるけれど、実際に車いすに乗ってみると想像とは違い、簡単にはスピードを出せないし、漕ぐにつれて腕の力がなくなっていくのを実感しました。また、目線も異なり、かがまなければ落ちたボールを処理できない難しさも感じました」
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<車いすリレー>で一致団結!
最終競技は、生徒たちがバスケ車に乗り、その車いすをバトン代わりにつなぐ車いすリレーだ。コートを往復するシャトル形式でスピードを競うが、直線でも車いすのコントロールは難しく、大きく蛇行する生徒も……それでも必死に車いすをプッシュさせたり、ストップさせたりして、この日の“勝負”を楽しんだ。
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「車いすリレーでは真っすぐに漕ぐことを意識したほか、他の人が走るときは相手が乗りやすいよう、車いすの方向を正してアシストすることを心がけました。そのかいあって、第2試合でトップでフィニッシュできて、すごくうれしかったです。やはり勝負をするからこそ燃えるし、スポーツは楽しいです」
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最後のリレーでチームの一体感が増し、盛り上がりも最高潮に達したところで約3時間のプログラムも終了。終わりに、ブッキーが「ここはパラリンピックで金メダルを目指している選手がトレーニングをしている体育館です。地元に帰ったら『パラリンピック選手が使っているパラアリーナに行ったよ』と広めるとともに、東京パラリンピックのときは今日の日を思い出して、ぜひ応援してください」とメッセージを述べた。
午前中、2020年に向けて気持ちを高鳴らせる“特別な時間”を過ごした一行は、修学旅行の定番である千葉にあるテーマパークへと再びバスを出発させた。
「1、2年生のときにパラスポーツについて学んでいたので、パラスポーツを体験できるプログラムはより深い学びにつながると思い、修学旅行のプランに組み込みました。タイムリーかつ新鮮で保護者の反応もよかったですし、なにより東京2020パラリンピックが行われる東京でパラスポーツ体験ができたことは、生徒たちにとってより深い味わいになったと思います」
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「私自身は特別支援学校に勤めていたことがあり、パラスポーツはなじみのあるテーマでした。生徒たちには、修学旅行前の体育の授業でボッチャと車いすバスケットボールのルールを学ぶ機会を作ったのですが、実際に楽しんでいる姿を見てうれしく思います。同時に、来年のパラリンピック本番をテレビで応援しようと思う、いい機会になったのではないかと感じました」
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text by TEAM A
photo by Haruo Wanibe