障がい者とのコミュニケーション学ぶ 2020 に向けた新事業「あすチャレ!Academy」の第1回講座

障がい者とのコミュニケーション学ぶ 2020 に向けた新事業「あすチャレ!Academy」の第1回講座
2016.12.31.SAT 公開

障がいのある当事者が講師となり、インクルーシブ社会を推進していくために、障がい者への対応やコミュニケーション方法を学ぶ、社会人や大学生向けのセミナー「あすチャレ!Academy」。その第一回講座が11月24日、協賛企業であるNEC(日本電気株式会社)で行われ、社員ら約50人が参加した。

「公平な社会の実現に貢献し、2020年以降もレガシーとしていきたい」とNECの菅沼正明氏
「公平な社会の実現に貢献し、2020年以降もレガシーとしていきたい」とNECの菅沼正明氏

はじめに、2020年東京オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナーでもある同社から執行役員の菅沼正明氏が登壇。「スポンサーは、オリンピック・パラリンピックのファミリーで、ともに大会を作っていく役割がある。選手が安心安全に最大限の力を発揮できるようサポートし、その大会を障がいのある方を含めあらゆる人が楽しく平等に観戦できる環境づくりに一役買いたい」と協賛の目的を語り、「ここで得たことを家族や周りの方に広めて」と社員に呼びかけた。

パラサポ推進戦略部ディレクターの本山が挨拶。視察したリオパラでは「障がい者も高齢者もベビーカーを使用する方もキラキラした目でパラスポーツを観戦していた」
パラサポ推進戦略部ディレクターの本山が挨拶。視察したリオパラでは「障がい者も高齢者もベビーカーを使用する方もキラキラした目でパラスポーツを観戦していた」

「あすチャレ!Academy」は、様々なバックグラウンドのある講師がその体験などを伝え、受講者とのコミュニケーション方法を学ぶ。続いて挨拶に立った日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)の本山勝寛は、「たんに知識を得るだけではなく、心で気づき、またコミュニケーション体験を通じて理解を深め、グループワークを通じて明日から行動に移せるようにとの願いを込めて構成した。受講をきっかけにインクルーシブな社会づくりの担い手になっていただけると嬉しい」と期待を込めた。

全盲の原口講師がリアルに語る
イヤホンで音声を聴いてPCを操作。プロジェクターを使用しながら、受講者に語りかける講師の原口氏。幼い頃からスキーをしたり自転車に乗ったりするなど、チャレンジ精神旺盛で「両親や周りの人に、『ケガが危ないからやめなさい』と言われたことはなかった」と自己紹介した
イヤホンで音声を聴いてPCを操作。プロジェクターを使用しながら、受講者に語りかける講師の原口氏。幼い頃からスキーをしたり自転車に乗ったりするなど、チャレンジ精神旺盛で「両親や周りの人に、『ケガが危ないからやめなさい』と言われたことはなかった」と自己紹介した

「あすチャレ!Academyへようこそ。このセミナーでは、普段、触れ合うことの少ない障がい者とのコミュニケーション方法を学びます」。

記念すべき第一回目の講師を務めたのは、生まれつき全盲でブラインドサッカーの選手でもある原口淳氏。

「障がい者とのコミュニケーション、なぜ必要なのでしょうか」などと問いかけながら、2020年を契機にバリアフリー化が進み、「障がい者と何気なくコミュニケーションを取る。これからの時代において、それが日常生活においてもベーシックなスキルになる」と柔らかな口調で話した。

続いて、パラリンピックのムーブメントに大きな成果をもたらしたロンドンパラリンピックを例に挙げながら、自国開催のパラリンピックに向ける課題や期待を語った。

後半は、ワークシートを使用。気づき(「障がい」とは何かに気づく)、理解(コミュニケーション方法を理解する)、グループワーク(行動するための想像力を養う)の3パートに分かれたカリキュラムで、障がい者とのコミュニケーション(インクルーシブ・コミュニケーション)のポイントと方法を学んだ。

「ロンドンではパラリンピックの開催で障がい者への態度や考え方が変わった」。パラリンピックのもたらす影響の大きさに、受講者は興味津々
「ロンドンではパラリンピックの開催で障がい者への態度や考え方が変わった」。パラリンピックのもたらす影響の大きさに、受講者は興味津々
「ハード(施設、設備)は変えられなくても、ハート(気遣い、心遣い)は今から変えられる」。参加者らは多くの気づきをワークシートに書き込んだ
「ハード(施設、設備)は変えられなくても、ハート(気遣い、心遣い)は今から変えられる」。参加者らは多くの気づきをワークシートに書き込んだ

また、講師の原口氏と同様の視覚障がいだけでなく、聴覚障がい、肢体障がい、知的障がい者それぞれとのコミュニケーション方法についても理解を深めた。

「『障がい』と聞いたら皆さんは何をイメージしますか?」 講師から投げかけられる問いに対し、隣の人とペアを組み意見交換
「『障がい』と聞いたら皆さんは何をイメージしますか?」 講師から投げかけられる問いに対し、隣の人とペアを組み意見交換
障がいごとに知っておきたい、移動のサポートについても具体的に学んだ
障がいごとに知っておきたい、移動のサポートについても具体的に学んだ
「車いすの人とデートするならどの場所を選ぶ?」「火災など緊急時に障がい者を含む全員が避難するには?」など少し難しい設問も。ワークやロールプレイングを通して想像力を養った
「車いすの人とデートするならどの場所を選ぶ?」「火災など緊急時に障がい者を含む全員が避難するには?」など少し難しい設問も。ワークやロールプレイングを通して想像力を養った
「想い」を必ず「行動」に。 終了後には、修了証書の授与式も。参加者は「今日気づいたことを家族に話し、子どもたちが見ていると思って実戦していきたい」、「今まで困っている人を見ても具体的に何をしたらいいかわからなかったけどこれからは声をかけるなど行動に移したいと思う」などと感想を述べた。
受講後には修了証書を授与。「パラスポーツの観戦やボランティアの機会に、この日学んだことをぜひ実践してみて」
受講後には修了証書を授与。「パラスポーツの観戦やボランティアの機会に、この日学んだことをぜひ実践してみて」

セミナーを終え、原口氏は「初回で緊張感あったが、受講者に聞いていただいたというより、対話することができ、楽しみながらお伝えすることができた。もともと意識の高い方が多く、私自身の解説を超える回答が出るのではないかとワクワクしながら進められました」と手ごたえを語った。

この日をスタートとし、パラサポは「あすチャレ!Academy」を東京と大阪で展開中。今年度中に1000人の受講を目標としている。

text&photos by Parasapo

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