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【Road to Beijing 2022】日本チーム、次のステージへの挑戦!世界車いすBカーリング選手権2019

【Road to Beijing 2022】日本チーム、次のステージへの挑戦!世界車いすBカーリング選手権2019
2019.12.19.THU 公開

「世界車いすBカーリング選手権2019」が11月27日から12月2日までの6日間、フィンランド・ロホヤで開催された。本大会はBプールにあたり、上位3チームが来年スイス・ヴェッツィコーンで行われる「世界車いすカーリング選手権」(世界選手権Aプール)の出場権を獲得できる。北京2022冬季パラリンピックに出場するには、まずはAプールに上がり、そこでパラリンピック出場のためのポイントを積み重ねる必要がある。そのため、2010年のバンクーバー大会以来のパラリンピック出場を目指す日本は、本大会でのメダル獲得を目指した。

今回出場する日本代表は、5月に国内で行われた「第15回日本車いすカーリング選手権」で優勝した北見フリーグスを主体としたチーム。北見フリーグスが日本代表として派遣されるのは2016年以来3年ぶりである。

白星スタートも地元フィンランドに惜敗

2016年に優勝したフィンランドチームとの一戦

今大会に出場したのは、カナダ、フィンランド、イタリア、日本、ポーランド、スウェーデン、トルコ(以上グループA)、チェコ、デンマーク、イングランド、ドイツ、ハンガリー、リトアニア、スロベニア、アメリカ(以上グループB)の15ヵ国。各グループで総当たり戦を行い、それぞれ上位3チームがプレーオフに進出できる。

車いすカーリング世界選手権は、AプールとBプールに分かれており、前大会のAプール下位3チームと、Bプール上位3チームが入れ替わる。今回、Aプールから降格してきたのはカナダ、ドイツ、アメリカの3ヵ国。日本(世界ランキング23位)は、格上ばかりを相手にどんな戦いを見せたのか。

ストーンをリリースするサードの柏原

大会2日目、日本初戦の相手はイタリア。初戦ということもあり緊張のためか、日本の立ち上がりはアイスの状態を読むのにてこずり、第1エンドでいきなり5点を失う。それでもうまく気持ちを切り変え、続く第2エンドで3点、先攻となった第3エンドでも2点を取り同点。試合後に小林勉コーチが「本来、先攻は不利だが、そこで3点取れたのは大きい」と語ったように、これらのエンドでゲームを振り出しに戻したことがプラスとなった。第4エンドと第5エンドは両チームそれぞれ得点し、同点で迎えた第6エンド。サードの柏原一大のテイクが決まり、このエンドで一気に4点を獲得。第7エンドではイタリアの得点となったものの、日本の選手4人がそれぞれテイク(※1)を決める見せ場もつくった。最終エンドでは柏原のヒット・アンド・ロール(※2)でストーンをティー(※3)に寄せ、逃げ切って13-9で白星スタートとなった。

イタリア戦で指示を出すスキップの坂田谷

リードの松田華奈は、「初戦を勝ってほっとしている」と安堵の表情を浮かべ、スキップの坂田谷隆は、「大雑把な試合にはなったけど、勝ててよかった。ウエイト(※4)や滑り方など、アイスの状況に対応しきれなかったところはあるので修正したい」と振り返った。

※1 テイク:相手のストーンをプレーエリアからはじき出すショットとのこと。
※2 ヒット・アンド・ロール:自分のストーンを目標のストーンに当て、なおかつ自分のストーンも目標の位置に置くこと。
※3 ティー:ハウス(ストーンを投げ入れる同心円)の中心点。
※4 ウエイト:投げたストーンに与えられた力のことで、滑るスピードを表す。

同日に行われた2戦目は、今回のメンバーが出場した3年前の大会で敗れている地元フィンランド戦。小林コーチの「リードからゲームを上手く組み立てていくことが大事。このフィンランド戦で勝利し、波に乗れるか乗れないかが勝負どころ」という言葉通り、重要な一戦となった。

フィンランド戦は、リードの松田と代えて「あまり気負わず楽しく戦いたい」と話していたリザーブの高橋宏美を投入。試合は、イタリア戦後のミーティング通り、(ストーンがハウスにたまらないようにする)クリーンゲームを展開させ、フィンランドに先制を許したものの、第2エンドで坂田谷のドロー(※5)で1点を返し、第3エンドも得点。同点で迎えた第5エンドはフォースの坂田谷がきっちりテイクを決めて2点を挙げ、日本がリード。しかし、後半はフィンランドの精度を欠いたショットにつけ込むことができず、第6エンド、第7エンドで得点を許し、試合は振り出しに。1点でも取れば勝利となった第8エンドだったが、日本はコミュニケーション不足や残りの持ち時間が少なくなったことが戦略と判断に響き、4-5と僅差で大事な試合を落とした。

2戦目のフィンランド戦は高橋がリードとして登場した

サードの柏原は厳しい表情で振り返る。
「自分も含めて、個々のショットの精度が足りなかった。同じミスをしていたら勝ち上がれない。ミスは自分で気づいて考えて、個々で修正していかないとダメ」

セカンドの岩田勉も「1戦目よりテイクの精度が落ちた。精度が低くなってしまったところで展開が苦しくなり、それをみんなでカバーしきれなかった。何より勝てる試合に勝てなかったというのが悔しい。でも負けは負け。明日はリセットしたい」と話し、気持ちを切りかえた。

※5 ドロー:ハウスの前か中にストーンを止めるショットのこと。

強豪と接戦するも戦略、経験、精度に差

翌日はトルコ戦とポーランド戦。なんとしても白星を勝ち取りたい日本だが、トルコ戦ではアイスの状況を読むのに苦戦し、得点はしたものの流れを変えられず6-8で敗戦。続くポーランド戦は、密なコミュニケーションを図ったことで試合の主導権をキープし、7-1で勝利した。

カナダとは初対戦。強豪との一戦は得るものが多かった

大会4日目、第5戦の相手は初対戦となる強豪カナダ。カナダは、パラリンピック過去3大会で金メダルを獲得しており、セカンド、サード、フォースの3名が金メダリスト。日本は序盤から重いアイスにてこずり、第1エンドで4失点。第2エンド目は両者無得点となったものの、日本は、アイスの状況をよく読んでいるうえ、テイクとドローの精度も高いカナダに、ガードを置くもテイクされる展開が続く。第4エンドでは、岩田のドローが決まり、柏原のテイクでティーに寄せ、4点のチャンスはものにできなかったものの、何とか3得点。必死で食らいついたが、第5エンドと第6エンドで合計5失点し、6エンドでコンシード(※6)した。

※6 コンシード: このまま競技を続けても勝てないと判断したチームが、相手の実力に敬意を表し、勝ちを譲って握手を求め競技を終了すること。

試合を終えた選手たちは、「力が入りすぎた」「空回りした」「カナダはどんなショットも圧倒的にうまい」など、“強豪”を意識しすぎたと口々に述べた。

カナダ戦後「力が入りすぎてしまった」と話した松田

今大会に帯同した荻原久美子アナリストは語気を強めて語る。
「日本のショットの選択に『あれ?』という場面があった。強豪チームとカーリングの世界で対等に戦うには、セオリーを知らないといけない。相手によって作戦を変えるということを学んでいかないと成長はない」

小林コーチも「(格上ということで)萎縮してしまったせいか、本来であれば取らない作戦をとって、自分で自分の首を絞めるようなショットが続いた。普段通りのシンプルな試合をしたほうがよかった」と惜しんだ。

「カナダを倒すのを楽しみにしてきたが、実力差があった」とはスキップの坂田谷

この試合が終了した時点で、グループAはすでに4勝しているカナダがプレーオフに進出を決めたが、7位のポーランドを除く他チームは残り1戦を残し、3勝2敗もしくは2勝3敗と混戦模様。日本を含む5チームにプレーオフ進出のチャンスが残されていた。

そして迎えた予選最終戦のスウェーデン戦。グループ3位内で予選を終えるためにも絶対に落とせない一戦。カナダ同様、スウェーデンも初めての対戦となり、クリーンゲームを狙った日本。第1エンドを0-0にし、続く第2エンドで1点に抑えると、3エンドで2得点しリード。第4エンドで再び得点されるも、前半のエンドが終了した時点で1点差と我慢の時間が続く。第5エンドで柏原の好ショットが出るも、日本はガードを上手く置けなかったことでスウェーデンに1点を追加されてしまう。その後は点を取り合い、第6エンドで日本は1点を返したが、同点に追いつけなかったことが響き、接戦をものにできなかった。これで日本の予選敗退が決まった。

「出場して満足」ではなく「代表として勝ちに行く」チームへ

前回は最下位に沈んだ日本だが、今大会は12位(2勝4敗)と順位を上げた。また、大差で負けることはほぼなく、シーソーゲームで負けるというパターンが多かった。

選手たちは言う。

「Aの大会に出るのが目標だったので悔しい。まだまだ勉強不足。作戦面、体力面、ウエイトを調節するトレーニングをして、次回はもっと上に行きたい」(松田)

「最終戦で貢献できなかったことに責任を感じている。上位のチームはショットの質が全然違う。今大会は作戦面で学ぶことが多かったので、しっかり持って帰りたい」(高橋)

「決勝に進むことができず悔いが残る大会になった。ショットの精度を高める練習、試合をこなして経験を積んでいきたい」(岩田)

「負けて悔しいが、勉強もできた。だが決勝を見ているとカナダは別格。日本はBの大会を勝ち抜くチャンスはあると思うけど、今の状況では(よりハイレベルな)Aの大会で上位に入ってポイントをとれるかどうかはわからない」(坂田谷)

個々のショットの精度を上げる、チームのコミュニケーションをしっかり取る、作戦を見誤らない……基本的な課題に加え、対戦相手に関する情報収集・分析をしっかり行い、それらを十分に活かせるかどうかも大事になってくる。

「カーリングをただやりたいなら国内で楽しくやっていればいいけど、僕たちは勝たなきゃいけない大会に来ている。これまでの何十倍もトレーニングして、過去の大会の動画も何回も見たけど、それでも足りなかった。もっと頑張らないと勝ち上がれない」(柏原)

一方、ライバル国も力をつけてきている。
「4位のスロベニア、7位のトルコは、弱小チームだったが1年でガラッと変わって強くなった。日本もカナダ、スウェーデンとも中盤まで互角に戦えたと思うし、Aプールに上がれる可能性はある」(小林コーチ)

レベルの違いを見せたカナダ対スウェーデンの決勝戦

帯同した日本車いすカーリング協会の小穴昭彦会長は「選手たちを見て日本代表としての自覚が増したと思うし、出場したことに満足せず、勝ちに来ていることが伝わってきた。ただ、カナダ対スウェーデンの決勝戦を見ると日本の3段階上のレベルの試合をしている。メダル争いに入ることを目標に、次こそは結果を残して日本国内の車いすカーリングの盛り上がりにもつなげたい」と総括した。

来年もBプールからAプール昇格を目指す日本が、北京2022冬季パラリンピックに出場するには、2021年開催見込みの世界選手権Aプールで並みいる強豪を抑えて上位に入ることが求められる。その道はかなり険しいものになるが、発展途上にある日本の挽回劇を期待せずにはいられない。

(後列左から)小林勉コーチ、佐藤弘也トレーナー
(前列左から)高橋宏美、松田華奈、岩田勉、柏原一大、坂田谷隆
© Japan Wheelchair Curling Association

【世界車いすBカーリング選手権2019 リザルト】
1位:カナダ
2位:スウェーデン
3位:チェコ
4位:スロベニア
5位:イタリア
6位:ドイツ
7位:トルコ
8位:デンマーク
9位:イングランド
10位:フィンランド
11位:アメリカ
12位:日本
13位:リトアニア
14位:ポーランド

カナダ、スウェーデン、チェコがトップ3に。日本は目標の表彰台に上がれなかった

※文中の世界ランキングは大会前の順位

text & photo by TEAM A

【Road to Beijing 2022】日本チーム、次のステージへの挑戦!世界車いすBカーリング選手権2019

『【Road to Beijing 2022】日本チーム、次のステージへの挑戦!世界車いすBカーリング選手権2019』