日本財団パラリンピックサポートセンター

参加者の笑顔が寒さを吹き飛ばした「全国横断パラスポーツ運動会」北海道ブロック大会

参加者の笑顔が寒さを吹き飛ばした「全国横断パラスポーツ運動会」北海道ブロック大会
2018.12.27.THU 公開

この12月より日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)が全国7ブロックで開催中の「平成30年度スポーツ庁委託事業 全国横断パラスポーツ運動会」。その第2回目となる北海道ブロック大会が12月23日、札幌市の北海道科学大学で行われ、道内から8チーム119名の参加者が集まった。普段はなかなか体験することのできない5種目のパラスポーツで得点を競い、優勝チームは2019年3月17日にパラサポが主催する日本一決定戦(於:東京都)に招待されるとあって、雪で足元の悪い中、集まった参加者たちのモチベーションは高く、パラスポーツを思う存分楽しみながら各種目で勝利を目指した。

この時期の北海道としては雪は少ないそうだが、それでも寒い中、多くの参加者が集まった
大会が行われた北海道科学大学の体育館は、119名の熱気に包まれた
<全国横断パラスポーツ運動会 北海道ブロック参加チーム>
旭川大学短期大学部、一般財団法人さっぽろ健康スポーツ財団、札幌市、
一般社団法人ソーシャルスポーツマネジメント、北海道、北海道科学大学、
北海道新聞社、北海道ハイテクノロジー専門学校

体だけでなく心もウォーミングアップ

参加者たちは準備運動の後、「アイスブレイク」と呼ばれるプログラムでお互いのコミュニケーションを深める。これは参加者全員がアイマスクをした状態で血液型や名前の文字数など、与えられたテーマに合わせて自分たちでコミュニケーションを取りながらグループに分かれるというもの。視覚を制限された中で、お互いに声を掛け合い、手をつなぐなど五感のほかの感覚をフルに使って取り組むことで、コミュニケーションを深める狙いがある。

目隠しをした状態で、声を掛けながらグループ分けをする「アイスブレイク」
仲間を見つけたら、しっかりと手をつないで離れないようにすることが大切
視覚が制限される分、それ以外の感覚を研ぎ澄ませてコミュニケーションを図る
“ブッキー”ことパラサポの推進戦略部 伊吹祐輔プロジェクトリーダーとともにアイスブレイクを振り返る

静寂の中、熱い闘いが展開されるゴールボール

1つ目の種目はアイマスクをした状態でボールを転がし、相手側のゴールラインを割れば得点が入るゴールボール(ソフトボール使用)。お互いに目が見えない状態で競い合うため、ディフェンス側はボールに入った鈴の音を頼りに全身を投げ出すようにしてコースを塞ごうとする。ボール内の鈴の音だけを頼りにプレーするため、観客も声を出さずにいることが大切で、会場は静寂に包まれる。
普段、頼りにしている目からの情報を遮断された状態で行うので、自分が今どこに立っていて、どちらを向いているのかを把握することが非常に大切となる。そのため、各チーム3人のプレーヤーの位置には、タコ糸を床にテープで止めて位置と方角がわかるようにされており、攻撃側はその情報を頼りにディフェンスの間を抜くようにボールを投げる。静かな中で五感を研ぎ澄まし、全身を使ってプレーするため会場はその静けさとは裏腹に、一気に温度が上がったように感じられた。

手前の白いゴールラインを割ると攻撃側の得点となる
ボールが見えないため、緩やかなボールがゴールラインを割ることも
ディフェンス側は全身を投げ出すようにして、シュートコースを塞ぐのがポイント
オフェンス側も視覚を遮られた状態で方向を定めてボールを転がし、得点を狙う
視覚が遮断された状態で、自分の位置を把握するためにはコートに埋め込まれたタコ糸が頼りになる
常に静寂を保つ必要があるため、応援する人たちも声を出すのは厳禁。それでも思わず声が出そうになることも

この競技で好成績を収めたのが地元の「北海道チーム」。普段からオリンピック・パラリンピックを担当するメンバーが中心に集まったチームで、今年3月に行われたイベントでゴールボールを経験しているメンバーがいることが強みだ。鈴の音に敏感に反応し、何度もボールを止めていた本田さんは「自分の位置がわからなくなると、何もできないので、まずはきちんと位置を把握することが大切です」と語る。また、ボールを止めたら仲間に「止めたよ」と声をかけるなど、コミュニケーションを図ることも大事だと教えてくれた(プレーしているメンバーの声出しはOKだ)。北海道には冬季競技で活躍するパラリンピアンは多いが「夏季の東京パラリンピックに出られるような選手を育てていきたい。そのためには自分たちも競技を体験して知ることが大切だと思います」と言葉に力を込めていた。

誰もが楽しめるシッティングバレーボール

2種目目に行われたのは、ソフトなボールを使用するシッティングバレーボール。1チーム6人で、3回以内のタッチでボールを相手陣に返すなどの基本的な流れは通常のバレーボールと同様だが、全員がコートにお尻を付けた状態でプレーするのが特徴だ。そのため、ネットも低く、ジャンプをしなくてもいいため、体力に自信のない人でも楽しめる。先程までの静けさとは一転して、大きな声を出して応援でき、ルールもわかりやすいため、会場が一気に加熱する競技だ。

サーブによって試合が始まるところも通常のバレーボールと同様だが、選手は座ったまま
競技に先立っては、参加者全員で座った状態ですばやく動くための練習も行った
レシーブやトスなどの動作は通常のバレーボールと同じ。足を使ってもOKだ
実際に下肢に障がいのある参加者も一緒にプレーして、他の参加者もこの競技の醍醐味を知った

この競技を全勝で終えたのが「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」。札幌市内のスポーツ施設を管理する団体のチームだけあり、スポーツ経験者が多いとのこと。バレーボール経験者だという同チームの田頭さんは「ジャンプをしないから誰でも楽しめるところが魅力だと思います。座ってプレーするというだけで、全く別のスポーツになりますね。それでいてゲーム性の高さは通常のバレーボールと同じ。すごく楽しむことができました」と息を弾ませていた。

見ている側も展開に息を呑むボッチャ

続いて行われたのはボッチャ。3人1チームで赤・青の2チームで対戦し、ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、赤・青のボールをそれぞれ6球ずつ投げたり、転がしたりして、いかに近づけるかを競う。体力に関係なく誰もが楽しめる競技で、相手チームのボールやジャックボールに当ててはじき出す投球も認められており、ゲーム性が高いことから、見ている側もかなり楽しめるのが特徴だ。

はじめに基準となるジャックボールを投げて、ゲームが開始される
投球の正確さと戦略が勝敗を分けるカギとなるため、体力に関わらず楽しめる
車いすでプレーするのは、パラアイスホッケー日本代表ゴールキーパーとして活躍した永瀬充さん。パラリンピックには1998年長野大会から4回連続で出場し、2010年バンクーバー大会では銀メダルを獲得した
障がいの有無や老若男女を問わず、誰もが力の入るゲーム性の高さが魅力
見ている側も息を呑むゲーム展開。すばらしい投球には惜しみない拍手が

この競技でなかなか出ない6-0というパーフェクトゲームを展開するなど、スーパープレーを連発していたのが「旭川大学短期大学部チーム」。女子だけのチームで経験者は誰もいないとのことだったが、会場の注目を集めていた。1年生の藤代さんは「持ち玉が1人2つずつあるし、一度失敗しても後があると思えるから思い切りよく狙って投げられました」と語るように、際どいコースを狙った投球を決め、会場を大いに盛り上げていた。

この日一番の盛り上がりを見せた車いすポートボール

ここからは車いすを使った競技が続く。4種目目の車いすポートボールは、パラリンピック競技の車いすバスケットボールではなく、台に乗ったゴールマンがボールをキャッチするポートボール方式で行われる。ボールの扱い以外にも車いすを自在に操るテクニックが求められる競技だが、馴染みのある人も多く、ロングシュートも結構決まるため、見る側もかなりヒートアップしていた。

両サイドにゴールマンの立つポートボール方式で、誰もが楽しめるゲーム性を持つ
ドリブルは膝にボールを乗せて移動してもトラベリングにはならないルール運用
ゴールマンがキャッチしてくれるので、ゴールも入りやすくゲームが盛り上がる
車いすの操作や落下したボールの対応が、相手チームと差がつくポイント
ゴールが決まったらハイタッチで喜びをわかち合うのは、どんなスポーツも同じだ
会場を盛り上げたのは、やはりパラリンピアンの永瀬さん

この競技で1人、ずば抜けた動きを見せていたのが、パラリンピアンであり「北海道新聞社チーム」の永瀬充さん。現在は、記者として働きながら、パラスポーツの普及イベントにも積極的に参加しているとのこと。車いすを巧みに操り、マークを振り切りながら、最後のシュートはチームメイトに任せて花を持たせるなど余裕ある動きが光った。「こうしてパラスポーツを多くの人に経験してもらえる、またとない機会だと思います。欲を言えば、どのチームにも1人くらい障がい者がいると、一緒に楽しめて、意義が深まると思いました。競技者が増えないとパラスポーツは盛り上がりませんから」と語ってくれた。

白熱のデッドヒートが繰り広げられた車いすリレー

最終種目は車いすを使ったリレー競技。車いすをバトン代わりに使い、次の走者へとつないでいく競技だ。予選、決勝のそれぞれでポイントが入るため、優勝決定に大きく関わる競技でもある。決勝に進出した4チームには、ここまで1位〜3位までのチームが顔を揃え、最終種目にふさわしいレース展開となった。

優勝のかかった競技だけに、各チームとも大いに気合いが入る
予選は直線コースを往復するレイアウトで行われ、この時点から熱戦に
オーバルコースを周回する決勝レースはコーナーリングの操作が勝敗を分ける
決勝レースでも最初から最後まで熱いデッドヒートが繰り広げられた
ラストの接戦を制した「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」が優勝を決めた

北海道ブロック優勝は「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」!

予選ではビデオ判定まで行われるほど白熱した展開となったレースは、決勝でも序盤から最終走者まで順位の入れ替わるデッドヒートに。そして、第3走者からトップに立った「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」がそのままゴールまで逃げ切り、最終種目での勝利と同時に総合優勝を決め、来年3月に東京で行われる日本一決定戦への切符を手にした。

「今年の3月に一度競技を経験し、3位に終わったので悔しさを感じていたのが今回の優勝につながったと思います」と勝利のポイントを挙げた優勝チームは、日本一決定戦に向けても「練習できない競技が多いので、普段からイメージトレーニングを積んでおきます。あと、車いすの乗り換えをスムーズにできるようにしたいですね」と意気込みを語ってくれた。

また、今大会の”i enjoy!”というキーコンセプトについても「”i enjoy!”とは言っても、自分1人だけでなくチーム全員で楽しめることが大切だと思います」とコメント。日本一決定戦での活躍が楽しみだ。

北海道ブロックの盛り上げ役!「旭川大学短期大学部チーム」

また、今大会の雰囲気作りに貢献していたのが女子だけで参加した「旭川大学短期大学部チーム」。同大学の幼児教育学科の佐藤貴虎教授のゼミ生で構成されたチームだ。「障がいの有無や医療ケアの必要な子どもたちまで含めて”すべての子どもたちに遊びを”というゼミのテーマとも合致した大会だったと思います。今回の体験を通して、彼女たちの今後の学びにつなげていけるのではないでしょうか」と佐藤教授は話す。何よりも、どの競技でも笑顔を絶やさず、常に楽しむ彼女たちの姿勢こそが”i enjoy!”という今大会のコンセプトを体現しているように感じられた。

≪次回記事≫
1/12(土)第3回 中四国ブロック大会@広島県・廿日市市スポーツセンターサンチェリー
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text by TEAM A
photo by Kazuyuki Ogawa

参加者の笑顔が寒さを吹き飛ばした「全国横断パラスポーツ運動会」北海道ブロック大会

『参加者の笑顔が寒さを吹き飛ばした「全国横断パラスポーツ運動会」北海道ブロック大会』