日本財団パラリンピックサポートセンター

車いすテニス世界ランキング1位の国枝慎吾、2019年は加速の年に!

車いすテニス世界ランキング1位の国枝慎吾、2019年は加速の年に!
2019.01.01.TUE 公開

1年前のインタビューで“車いすテニスの挑戦者”だった国枝慎吾が、1年後、世界王者となって姿を現した。
「そろそろ勝ってもいい、タイトルを手にしてもいい」という言葉どおり、2018年の第1戦目で優勝、続く全豪で3年ぶりのグランドスラム優勝。そして全仏でも優勝を果たし、実に2016年1月以来の1位に返り咲いた。
ITF(国際テニス連盟)ワールドチャンピオンとして2018年シーズンを締めくくった国枝は、2019年も、さらなる高みを目指す。

ケガさえなければ、まだ負けない。それを証明できた

2018年シーズン、再び世界王者に返り咲いた国枝慎吾

右肘の痛みを克服するために、2017年の1年間、バックハンドのフォームの改造を続けてきた国枝。その年末には手応えを感じ、自ら「そろそろ勝てる」と“予言”していたが、2018年、その予言どおりのスタートを切った。


国枝慎吾(以下、国枝)  2017年、1年間フォームの改造に努めて、2017の年末くらいからだいぶ手応えが出てきました。さらに2018年1月の全豪オープンの前哨戦のシドニーで優勝することができて、自信を深めて全豪に乗り込み、そこでしっかりと優勝できたので、本当に忘れられないグランドスラムになりましたし、周りにも復活をアピールできた大会になったと思います。

それから6月に全仏オープンがあってグランドスラムで立て続けに優勝することができ、世界ランキングも久しぶりに1位に返り咲きました。リオパラリンピックの後に「ケガさえなければ若い選手たちにも負けないぞ」と思っていましたが、それをしっかり証明できて、最高の1年になったと思います。


全豪オープン優勝後、国枝は17年間師事してきた丸山弘道氏との関係を解消し、岩見亮氏を新しくコーチとして迎え入れる決断をした。


国枝 コーチの変更は、シドニー大会のときに僕だけでなく、他の選手もケアするために、練習拠点のひとつであるTTC(吉田記念テニス研修センター)から岩見コーチが派遣されていました。そこで、メンタルトレーナーのアン・クイン氏ともセッションがあったり、岩見コーチからも新しい技術のアドバイスなど、いろいろためになることがありました。全豪オープンが終わって、アン・クイン氏をスペシャルバイザーとして迎えてやっていきたいと思っていたのですが、英語が堪能な岩見コーチなら、アン・クイン氏との連携もスムーズになるというのと、ちょっと新しい風も入れたいと思っていたところもあったので、そういった思いが全て重なってコーチを変えるという決断に至りました。

コーチが変わったことで、間違いなくネットに出る機会が増えたと思います。
今まで培ってきた国枝のテニスというのは変わらないですけど、それをガラっと変えるんじゃなく付け加えるということを僕自身もしたかったので、うまくコーチの移行はできたかなと思いますね。

東京パラリンピックを見据えたダブルス

アジアパラではシングルスで優勝し、東京パラリンピック一番乗りを決めた

2018年シーズンはふたつのグランドスラムタイトル以外にも、ワールドチームカップ(国別対抗戦)で、2007年以来の優勝を手にした。また、インドネシア2018アジアパラ競技大会で優勝し、東京2020パラリンピックも内定を決めた。東京パラリンピックまで2年を切った今、国枝の中には東京でのイメージは描けているのだろうか。


国枝 2018年10月のアジアパラ優勝で東京パラリンピックに「内定した」というのは、オマケ程度にしか思っていないところもあります。健康でいれば、ランキング的に選ばれるはずなので。ただ、東京パラリンピック出場が保証されたということで、精神衛生上いいかなとは思います。過去、ロンドンとリオのあった年には肘の手術をしていますから。そういったトラブルがないことを祈ってますけど。

あと、1年半後ということもありますから、まだ東京の「と」の字も見えていないですね。2019年の年末には「と」くらい見えて、年明けて「う」が見えてくるかもしれないです。

今年はワールドチームカップでも優勝できて、日本の層の厚さというものを見せることができたと思います。(国内2番手、世界ランキング9位の)眞田(卓)選手も、すごく調子のいいパフォーマンスで、まず1戦目のシングルスを必ず取ってくれていました。僕もあの大会は相当調子もよかったので、予選から「これはいけるかな」と思っていました。


2018年11月には、ワールドチームカップをともに戦い、アジアパラのダブルスで金メダルを獲った眞田とは、11月にオランダで開催された「ユニクロ車いすダブルスマスターズ(以下、世界ダブルスマスターズ)」にも出場し、準決勝まで進出した。


国枝 2018年は、眞田選手とダブルスを組んで世界ダブルスマスターズにも出場できました。世界のトップレベルで眞田選手と組んで戦ったのは初めてだったので、これから1年半の間でどういったプレーがお互いに必要なのか、話しながらやっていく必要はあるなと思います。

外国の選手とダブルスを組むと、「この試合に勝つため」でしかないですけど、日本の選手と1年半後を見据えて戦えるっていうことになると、将来的にこうしていきたいからそれを目指して今はこうしようというプレーができる。そこが違うところかなと思います。パラリンピックを目指してやるのであれば、「今はもしかしたらこっちの選択肢のほうがポイントが取れるかもしれないけど、ゆくゆくはこっちにしていきたいからこっちの戦術、戦略でとりあえずやらない?」ということができるので、これからの期待感はあると感じています。

照準はウィンブルドンのタイトル!

まだ手に入れていないウィンブルドンのタイトルへの思いは強い

ウィンブルドンでは、車いすテニスのダブルスは2009年から開催されているが、シングルスは2016年から開催されるようになった。グランドスラムを達成したことのある国枝だが、ウィンブルドンシングルスのタイトルは手にしていない。


国枝 芝のサーフェスは、自分のプレースタイルとマッチングしないのは分かっているんです。でも、優勝できるチャンスはゼロではないと思っています。自分と同じようなスピン系のグスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン、3位)も、ウィンブルドンの決勝まで進出しましたし、僕も決して悪いプレーをしているわけでもないと思うのでチャンスはあると思います。

ウィンブルドンは、やはりバウンドが難しいですね。イレギュラーがものすごく多いですし、ボールが滑ってくるという感覚がすごく強いです。どちらかというと、僕はスピンタイプのテニスをするので、それよりもフラットやスライスでの戦い方がハマるのは間違いないとは思います。でも、そこに特化してしまうと、自分のリズムを失ってしまう可能性がある。芝が苦手な選手は絶対そういうところに陥いると思います。

2018年は、岩見コーチも芝で車いすテニスを見るのは初めてだったので、どれくらい車いすで動けるのかということなども見てもらいました。一緒にウィンブルドンに行ったことでいろんな気づきもあったので、今シーズンに活かせればいいかなと思います。このまま引退すると「ウィンブルドンだけ残ったな」と、絶対に思ってしまうと思うので、ウィンブルドンへの思いというのは結構強いですね。それくらいウィンブルドンで勝ったらガッツポーズすると思います。

2019年の年末に1年を振り返って、「ウィンブルドン優勝」となっていたら満足できた年になっていると思います。

グランドスラム獲得を目標に2019年シーズンへ

常に有言実行し続けている国枝の2019年は、どんな年になるのだろうか。


国枝 2019年は、4個のグランドスラム全部獲ります! いや……2個くらいかな?
全豪はいつも欲しいんですよね。年明けた一発目の全豪のタイトルを獲ると、だいぶその年が楽になるところもあるので。まずは全豪で成績を残せるようにしたいと思います。あとは、ウィンブルドンのタイトルが欲しいですね。

(※ランキングは2018年12月25日付け)

text by Tomoko Sakai
photo by X-1、Haruo Wanibe

車いすテニス世界ランキング1位の国枝慎吾、2019年は加速の年に!

『車いすテニス世界ランキング1位の国枝慎吾、2019年は加速の年に!』