日本財団パラリンピックサポートセンター

メダルを狙っているのに、全速力でゴールしてはいけないランナーって?

メダルを狙っているのに、全速力でゴールしてはいけないランナーって?
2019.02.04.MON 公開

世界中が注目する4年に一度のスポーツの祭典・オリンピック、パラリンピック。選手ならば誰もが全力で戦い、メダルを競い合う。そんな中、陸上競技において、メダルを狙っているのに全速力でゴールしてはいけないランナーがいるという。一体どういうことだろうか?

そのランナーというのは、実はガイドランナーと呼ばれる伴走者のことだ。伴走者は、視覚障がいのある選手と共に走り、コースや距離の状況を伝えながら一緒に走る存在なのだが、その、まさに一心同体となったサポートぶりが神業と言われている。

速く走ることよりも大事な「同調」と「伝える」技術

Photo by Matthew Stockman/Getty Images

1本のロープで繋がれた絆

まず、視覚障がいのある選手がどのように伴走者と走るのか? が、素朴な疑問だが、原則として輪になった1本のロープを互いに持って走るというルールがある。しかし、伴走者が好き勝手に腕を振ると当然、選手の走りの妨げになってしまう。自分の走りやすさよりも、選手のフォームを崩さないよう細心の注意を払い、いかに同調させて走るかが伴走者の腕の見せ所だ。

当然ながら選手を引っ張ったり、選手より極端に前を走ったり、と速く走るのを助けていると見なされる行為は、失格となる。呼吸さえもピタリと合わせる、完璧なパートナーとなって選手の走りを最大限にサポートするのが仕事だ。

伴走者は選手の「目の代わり」

マラソンなどでは、「10メートル先に45度の左カーブ」など、具体かつ的確な指示が必要だ。「あっちの方」などといった曖昧な指示では当然伝わらない。加えて選手の性格や走りの特徴、好みも多様。そういったことも全部含め、選手のペースに合わせて走りながら、コースの状況を見て的確な指示を出す。これには相当の走力と状況判断力、伝える技術がいる。伴走者とは、速く走れるだけでは務まらない、並大抵の仕事ではないのだ。


伴走者とのドラマも見逃せない!パラリンピック 陸上競技の面白さとは?

Photo by Alexandre Loureiro/Getty Images
2020年の東京パラリンピックで、選手と伴走者が一緒に走る陸上競技は、100mから 5000mまでのトラック種目と、42.195kmを駆け抜けるマラソン種目がある。視覚障がいの程度によりクラスが分けられるが、伴走者と共に出場できるのは、T11(全盲)とT12(弱視)の一部の選手だ。

※視覚障がいのクラスは、T11、T12、T13があり、1の位の数字が小さいほど障がいが重いことを意味する。

トラック種目の見どころ:「オリンピックの記録を超える!?」

2016年のリオパラリンピックでは、男子1500m(T13・伴奏者なしで走る弱視)に出場した上位4名全ての記録が、リオオリンピック男子1500mの金メダル(記録3分50秒)を上回るという結果になった。
実は1500mは戦略が重要と言われ、駆け引きの結果とも言われているが、いずれにせよ、近年、オリンピックとパラリンピックの実力差が縮まってきていることは確かだ。2020年の東京パラリンピックでは、新たなオリンピック超えの記録にも期待したい。

瞬発的なスピードが問われる短距離(T11/T12)は、スタートからゴールまで、選手と伴走者のフォームが一体となった美しい走りにも注目しよう。
写真:視覚障がいクラスのトラック種目では、T11の選手とT 12の一部の選手が伴走者(ガイドランナー)と並んで走る。Photo by Lucas Uebel/Getty Images

マラソン種目の見どころ:「単独走、ペア走が混在する!?」

マラソン種目では、伴走者と必ず一緒に走るT11(全盲)クラスの選手と、単独で走るか伴走者とペアで走るかを選択できるT12(弱視)クラスの選手が混在する。そのため、選手の単独走とペア走、両者の健闘を一度に観戦できるのも面白い。また、気象状況や路面状況などマラソンならではの様々な困難がある中、42.195kmという長距離を伴走者と共に走り抜く姿は想像以上に見ものだ。

ちなみに、選手と一緒に伴走者もメダルはもらえるのか?

伴走者のサポートは、まさに陰ながらの偉業と言えるが、選手がメダルを獲得しても、必ずしも一緒にメダルをもらえるわけではないという。
というのも、伴走者は原則1人だが、5000メートル以上の競技の場合は伴走者が2人認められ、途中で交代できるというルールがある。パラリンピックなどの大会で伴走者がメダルをもらうためには、途中交代せず、同じ伴走者が通して走るという条件のもとで3位以内に入賞しなければならない。
現在の日本チームは、長距離走においては伴走者のコンディション維持を考え、2名体制が基本。選手の最高のパフォーマンスを引き出すガイドとして、誇りを持って伴走している。

伴走者の力量によって勝敗が大きく左右される視覚障がい者の陸上競技。伴走者は、選手にとっては欠かせないパートナーであり、応援する側にとっても、実は選手と同じくらい注目すべき存在なのだ。

2020年 東京パラリンピックで伴走者が出場する陸上競技

100m T11(男子/女子)
100m T12(男子/女子)
200m T11(女子)
200m T12(女子)
400m T11(男子/女子)
400m T12(男子/女子)
1500m T11(男子/女子)
5000m T11(男子)
マラソン T12(男子/女子)

text by Parasapo Lab
photo by Getty Images

メダルを狙っているのに、全速力でゴールしてはいけないランナーって?

『メダルを狙っているのに、全速力でゴールしてはいけないランナーって?』