知的障がい者卓球・女子シングルスは16歳 芹澤瑠菜が初の栄冠! 男子シングルスは加藤耕也が2連覇

知的障がい者卓球・女子シングルスは16歳 芹澤瑠菜が初の栄冠! 男子シングルスは加藤耕也が2連覇
2018.06.23.SAT 公開

6月9~10日、「2018FID*ジャパン・チャンピオンシップ卓球大会」は、神奈川県横浜市・平沼記念体育館で行われた。知的障がい卓球の競技力向上のためにスタートした今大会は、史上最多となる164人が参加。男子上位12名、女子上位8名には、来年度の日本代表入りにつながる「ジャパン・チャンピオンリーグ大会」への出場権が与えられ、東京2020パラリンピックを見据えた熱き戦いが展開された。
※FID=For players with an Intellectual Disability

男子若手有望株・木川田優大(左から2人目)、女子の昨年優勝者・美遠さゆり(右端)も健闘

男女シングルス決勝は、王者VSティーンエイジャーの構図

シングルス準決勝が終了すると、館内に並んだ20台の卓球台は、決勝戦と3位決定戦が行われる4台を残し、すべて片付けられた。今大会より決勝戦のインターネット中継が始まり、FID卓球の王者を決める特別な舞台として演出されたのだ。
この決勝戦に上がってきたのは、昨年の男子シングルスチャンピオンの加藤耕也と18歳の木川田優大、同じく昨年の女子シングルスチャンピオン美遠さゆりと16歳の芹澤瑠菜だ。男女ともに若手が王者に挑戦する構図になり、男子は加藤が2連覇、女子は芹澤が初優勝を飾った。

男子シングル優勝の加藤耕也(左)と、女子シングルス優勝の芹澤瑠菜(右)

決勝まで昨年のチャンピオンたちは悠然と駒を進めていた。
ダブルス決勝こそ、加藤(パートナーは福井昂孔)は宮内良・高橋利也ペアに、美遠(パートナーは木村はるみ)は伊藤槙紀・川﨑歩美ペアに敗れ2連覇ならなかったが、肩を落とさずシングルスに気持ちを切り替えた。
その甲斐あり、加藤はリオパラリンピック日本代表の竹守彪との男子シングルス準決勝をストレートで突破。美遠も木村はるみ戦、松井真由戦で1ゲームを落とすが、ラリーしては好機に打って危なげなく、女子シングルス決勝進出を決めていた。

男子ダブルスで優勝した宮内良(左)・高橋利也(右)ペア
女子ダブルスは、伊藤槙紀(左)・川﨑歩美(右)ペアが制した

若手有望株の木川田は男子シングルス準々決勝で、今大会の優勝最有力候補で、長崎の名門・瓊浦高校に席を置く浅野俊に勝利。準決勝では昨年12月のチャンピオンリーグ優勝の高橋に逆転勝ちし、「どうして負けたのか分からない……」(浅野)、「いつもだったらつないでくる場面も攻めてきて、攻める手がなくなってしまった」(高橋)と、ライバルたちを嘆かせた。

そして今回が初出場の16歳芹澤は、女子シングルス決勝トーナメント1回戦から決勝までの相手5人が強化指定選手という不運に見舞われた。しかし、速いテンポでラリーを構築し、次々と強豪たちを撃破。「ベスト8まで行ければいいかな」という当初の目標を達成して迎えた準決勝では世界選手権代表の古川佳奈美をも最終ゲームで下した。

「古川選手は芹澤と似たプレースタイル。古川選手につきあって速いラリーにしたら分が悪いので、わざとゆっくりしたリズムを作りました」と準決勝戦を振り返るのは加藤幸司コーチだ。ただ、この35分の激闘を制しても芹澤にはまだ優勝する自信はなかった。

女子は芹澤がチャンピオンを退け初優勝

男女同時に始まった決勝戦。先に優勝を決めたのは芹澤だった。奪っては奪い返される展開で、試合は準決勝に続き、最終ゲームにもつれた。
このどちらも主導権を奪いきれない苦しい戦いで、芹澤を支えたのは、ポジティブな言葉だった。小声で「大丈夫! 大丈夫!」と自分に言い聞かせると、準決勝とは一転、今度は得意な間を作らない速いラリーを展開。5ゲーム9-8から3連続得点に成功し、初Vを決めた。

16歳の新鋭、芹澤

「まさか優勝できるなんて。決勝トーナメントは全員、勝てるかどうかわからない方たちばかりだったのでうれしいです!」

芹澤は中学1年から卓球を始め、現在は静岡県の国体の強化指定選手に選ばれている。今回の結果をきっかけにINAS(国際知的障害者スポーツ連盟)選手資格認定の申請を進める予定で「今まで考えたことはありませんでしたが、世界大会に出てみたいし、できれば東京パラリンピックにも出たいです」と夢を膨らませた。

男子は加藤が王座を守って2年連続V

芹澤が優勝して両手を挙げたとき、男子決勝も佳境を迎えていた。ゲームカウント加藤2-1で迎えた4ゲーム目は、木川田リードで進んだが、加藤がじわじわと追いつき、12-11で初めてマッチポイントをつかんだ場面だった。ここから加藤はミスして再び同点にされたが、以降は辛抱強くラリー。逆にここまで手堅いラリーが光った木川田だが、最後はミスが出て、ウイニングポイントを捧げた。

強い気持ちで逆転した加藤

この瞬間、床に転がって大の字になり、雄たけびを上げた加藤はこう振り返る。

「浅野くんが決勝へ来るのかなと予想していたなかで、木川田くんが来て焦って1ゲームを取られました。木川田くんは、高橋くんにも勝っていたので勢いがありました」

こうして2連覇を遂げた25歳の加藤がいま、目指しているのはもちろん東京パラリンピックでの金メダルだ。昨年12月からより強くなることを願い、卓球日本代表の平野美宇を輩出した平野卓球センターへ週に2回、通うようにもなった。報道で平野の妹、亜子さんに発達障がいがあることを知って自ら門を叩いたという。

「平野卓球センターでプレーが成長しているだけでなく、意識も変わりました。日本代表にもなった亜子さんを見て、自分も頑張らなければと。知的障がいは見た目で障がいがあると分からないので、この障がいのことを知らない人が多く、苦しんでいる人は多い。でも、僕も亜子さんのように頑張って結果を残せば、多くの人にこの障がいを知ってもらえるようになるはずと思うようになったんです」

――だから東京パラリンピックで金メダルを獲りたい、と加藤ははっきり断言した。

2018年の最大の目標は、10月に開催される世界選手権での優勝だ。ここで頂点に立てば、東京パラリンピックの出場権を手に入れられ、夢に大きく近づくことになる。

12月に同会場で行われるチャンピオン・リーグも激戦必至だ!

text & photo by Yoshimi Suzuki

知的障がい者卓球・女子シングルスは16歳 芹澤瑠菜が初の栄冠! 男子シングルスは加藤耕也が2連覇

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