ツーリズムEXPOジャパン「i enjoy ! パラスポーツパーク」に5000人が来場!

ツーリズムEXPOジャパン「i enjoy ! パラスポーツパーク」に5000人が来場!
2018.09.27.THU 公開

日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)は、9月20日から23日まで東京ビッグサイトで行われた「ツーリズムEXPOジャパン2018」に、パラスポーツ体験イベント「i enjoy ! パラスポーツパーク」を出展した。
競技の内容を理解しながら楽しめるのが特徴のイベントで、3度目となる今年は、パラスポーツ競技観戦の機会拡大と、スポーツツーリズムの盛り上がりを期待し、「東京の魅力発信プロジェクト」の一環として実施。昨年を大幅に上回る約5000名が来場し、会場は大いに盛り上がった。

「i enjoy ! パラスポーツパーク」とは
パラスポーツを「知る」「見る」「体験する」をテーマに、障がいのあるなしに関わらず、子どもも大人も一緒になってパラスポーツを気軽に楽しめるパラサポが主催するテーマパーク型のイベント。パラリンピアンやパラアスリートの指導のもと、パラスポーツの体験を行い、パラアスリートやパラスポーツを応援する機運を高める目的のものです。
今年は昨年を上回る約5千人が来場した ©Parasapo

心地いいタックルの衝撃

「ガツン!」という車いすの衝撃音が響き渡っていたのが、ウィルチェアーラグビー のタックル体験コーナーだ。日本ウィルチェアーラグビー連盟の理事で選手でもある峰島靖さんが巧妙なトークで会場を盛り上げる中、体験者は3人の選手のタックルを障がい(※)の重い順に真正面から受ける。

※ウィルチェアーラグビーは、障がいの程度に応じて0.5〜3.5点の持ち点が与えられ、コート上4人の組み合わせの合計が8点を超えてはならないルールがある。

恐る恐るタックルを体験する来場者

しっかり助走をつけて行うタックルに、体験者はみな戦々恐々の面持ちだったが、タックルを受けた瞬間は驚きながらも、すぐに笑顔に変わり、選手とハイタッチを交わしていた。日本代表の迫力あるタックルを体験した大浪伶央さん(18)は「車いすがぶつかった瞬間、体が浮きました。かなりの衝撃でしたが、むしろ心地よく、楽しかったです!」とのこと。

体験者の中には元ラガーマンの姿も。高校、大学でラグビーを経験し、ウイングだった富田要太さん(35)は「ズトンときますね。でも気持ちいい。機会があれば、またやってみたいです!」と感想を話してくれた。

ラグビー経験のある富田さん

埼玉を拠点にするウィルチェアーラグビーのクラブチーム「AXE」の選手として、体験者にタックルをしていたのが、2016年リオパラリンピックの銅メダリストである羽賀理之選手。今年8月の世界選手権では日本代表の副キャプテンとして初の世界一に貢献した。タックル体験コーナーに次から次へと来場者がやって来る様子を見て「テレビでも放映された世界選手権で優勝したことで、関心が高まっているなら嬉しいですね」と顔をほころばしていた。

ゲームを通して知った競技の魅力

メインコートでは、ウィルチェアーラグビーの乗松隆由選手らによる体験レッスンも行われた。参加者は車いすを漕ぐなど基本的なプレーを教わった後、2チームに分かれてゲーム。大人も子どもも、男性も女性も一緒にプレーできるウィルチェアーラグビーの体験は大盛り上がり!トライが決まると、コートから歓声が上がった。

車いすを操作する楽しさに笑顔があふれた
車いすに乗りながら行うパスに悪戦苦闘!?
現役ウィルチェアーラグビー選手の猛追をかわす
ゲームの後は i enjoy ! マークをつくって記念撮影
ウィルチェアーラグビーの体験をした川﨑さん

ママさんバレーのコーチとして、ふだんから体を動かしている川﨑真吾さん(34)もその1人。川﨑さんは「15分という短い時間でしたが疲れましたね。肉体的なものだけでなく、車いすを操作しつつ、常に周りを見ながらボールを追うので、精神的にも。心身ともに消耗するハードな競技だと実感しました」と話し、ウィルチェアーラグビーの奥深さを感じたようだ。

また岩森仁美さん(35)と小池昌子さん(35)のように、女性がチャレンジする姿も。岩森さんは「車いす同士当たるのが醍醐味ですね。スリリングで衝撃はあるけど、体は痛くならないのがいい。それと頑丈に見える車いすが、とても小回りが利くので、動かしやすかったです」とコメントしてくれた。

ウィルチェアーラグビーを体験した岩森さんと小池さん

車いすバスケットボールの体験レッスンも人気だった。ウィルチェアーラグビーの体験レッスン同様に、各回とも申し込みの整理券がすぐになくなってしまうほど。レッスンを担当したのは、パラサポの「あすチャレ!School」事業で全国の小・中・高校にパラスポーツの普及活動を行っているシドニーパラリンピック男子車いすバスケットボール日本代表キャプテンの根木慎志氏。

あすチャレ! Schoolの人気講師でもある根木慎志氏

車いすバスケではジャンプをせずに一般のバスケットボールと同じ高さのゴールにシュートを打つため、参加者はボールがなかなか届かず苦戦していたが、ゲームは白熱し、観客からも歓声が上がっていた。

シュートの難しさを肌で感じた参加者
知らない者同士が和気あいあいとプレー
お父さんと一緒に参加した子どもの姿も
軽やかにシュートを放つ

元プロスノーボーダーで、平昌冬季パラリンピックではスノーボード競技に注目していたという寺島直人さん(31)も「車いすバスケは初めてでしたが、知らない者同士で試合をしても楽しめる。健常者の競技とパラ競技の枠を越えて、1つのスポーツとして面白いですね」と堪能した様子だった。

現役アスリートによる特別指導も

「ゴーゴーゴーゴー」という掛け声でにぎわっていたのが、陸上競技用車いすのレーサーを体験するコーナー。ここでは“10秒間で最高時速何㎞まで出せるか”という体験を行っていた。10秒間とはいえ体験者は目一杯タイヤを回転させるため、漕ぎ終えると一様に顔が紅潮。指導を担当した車いすアスリートの西勇輝選手から「例えば200mのスプリントなら、30秒近く全力で回し続けます」と教えられると、「へェ~~~」と感嘆の声。体験した前出の川﨑さんは「手の平でタイヤを転がし続けるテクニックも必要」と感じたという。

西選手とスタッフが見守る中、全力で車輪を回す
全力を出し切った後は表情も晴れやか
上位者の記録が掲示された
小学生の体験者も目立った

ほとんどの体験者が10秒間で“降参”した競技用車いすレーサー。しかし西選手はこれにほぼ毎日乗って、厳しい練習に励んでいる。それを証明するのが、丸太のような上腕と110㎝ある胸の筋肉。「僕はスプリント種目を専門としているので競技時間そのものは短いのですが、登場したときに、体の大きさを見てもらうのも大事だと思っています」と語った。

レーサー体験を担当した車いすアスリート(陸上競技・短距離)の西勇輝選手

たまたまの機会でパラ競技の見方が変わった

パラ・パワーリフティングを体験できるコーナーには、「腕力自慢」も数多く訪れた。
ただパラ・パワーリフティングの場合、健常者のベンチプレスとは異なり、足を伸ばした状態でバーベルを持ち上げなければならない。上体のパワーしか使えないため、日頃ジムなどで鍛えている人も、普段持ち上がる重量まで届かなかったようだ。

上半身のみでバーベルを上げる! パラ・パワーリフティングの体験ブース
体験した女性もおもわず笑顔を見せる
パラサポ職員でパワーリフティング選手のマクドナルド山本恵理(左)がブースを担当

「i enjoy ! パラスポーツパーク」では、他にもボッチャを体験できるコーナーや、渋谷画劇団によるパラスポーツの魅力を伝える紙芝居ショーのコーナーも。また「Tokyo Tokyo Old meets New(※)展示コーナー」では、1964年に行われた東京パラリンピックの写真パネルも展示され、多くの来場者が訪れた。

※「Tokyo Tokyo Old meets New」とは、江戸から続く伝統と最先端の文化が共存している東京の特色を表現した、アイコン及びキャッチフレーズ。東京都では、国内外に向けて旅行地としての東京を強く印象づける「東京ブランド」の確立に向けた取り組みをしている。

若い人たちや子どもたちにも人気の高かったボッチャ体験コーナー
スタッフがボッチャのルールをわかりやすく紹介
子どもたちも真剣に狙いを定める
パラスポーツの魅力を伝えた紙芝居ショー
家族連れも多く訪れた
プロの紙芝居師と活動するヤムちゃん(右)とかみはる(左)
Tokyo Tokyo Old meets Newの展示コーナー
パラスポーツの普及に力を尽くすNTTグループや大学生のボランティア ©Parasapo

今回、パラスポーツを体験した人たちの中には「これまでパラスポーツにはあまり関心がなかったが『ツーリズムEXPO ジャパン2018』に来たついでに」という人が少なくなかった。しかし、実際にパラスポーツを体験することで、その魅力に触れ、興味を持つきっかけになったという人もいた。まだパラスポーツを体験したことがないという人は、各地で開催されている体験イベントにぜひ足を運んでみて欲しい。

text by Shinichi Uehara, Parasapo
photo by Hisashi Okamoto
ツーリズムEXPOジャパン「i enjoy ! パラスポーツパーク」に5000人が来場!

『ツーリズムEXPOジャパン「i enjoy ! パラスポーツパーク」に5000人が来場!』