メダル獲得数198! アジアパラ競技大会での日本勢の活躍

メダル獲得数198! アジアパラ競技大会での日本勢の活躍
2018.11.22.THU 公開

アジア競技大会に続き、10月にジャカルタで開催されたインドネシア2018アジアパラ競技大会。日本勢は17競技に304選手が出場。金45個を含む198個のメダルを獲得したなかには、期待の若手も多くいた。

水泳や車いすバスケットボールの10代選手も躍動

水泳の100m平泳ぎで自身の障がいクラスSB6のアジア新記録を樹立した小池さくらは、いま最も伸びている高校生スイマーのひとりだ。



その小池にとって、アジアパラはユース世代の大会を除く初めての総合国際大会だった。6日間の長期戦となった試合の日々を振り返ってこう語る。

「体力的にも精神的にもすごくきつい大会でした。とくにメイン種目の400m自由形ではすごく緊張して、緊張するとどれくらいタイムが落ちるのかちょっとわかりましたし、とても考えさせられました」

生後11ヵ月のとき、疾患により下半身まひが残った。中学時代から本格的に水泳を始めると、めきめきと力をつけて2015年から国際大会に参戦。今大会は金メダルこそなかったが、個人種目で銀3個と銅1個を獲得。自国で迎える東京パラリンピックに向けて手ごたえもつかんだ。

「400mで(後半にペースが落ちたりせず)イーブンに泳げるのが自分のストロングポイント。そこを活かしつつ、もう一段階スピードを上げて記録を更新していきたいですね」

水の中では自由だが、日常生活では車いすを使用する。学校とスイミングクラブ、パラの選手と練習する大学のプールと自宅を往復する多忙な小池を支えるのは、家族による送迎サポートだ。さらに、活動するうえでは移動交通費や遠征費もかかるが、最も近くで娘を見守る母は、「さくらのやりたいようにやらせています」とおおらかに笑う。

現在、高校二年生。進路はまだ考え中というが、「英語を学び、強い選手とコミュニケーションを取ったり、いろんな国に行ってみたい。それは競技にもつながるかなって思います」。東京2020パラリンピック期待のスイマーは、瞳の奥を輝かせて語った。

同じく水泳で大学1年の窪田幸太にとって、アジアパラは水泳人生においてかけがえのない大会になった。連日30度以上を記録する暑さの中、コンディションを保って挑んだ50m自由形(障がいクラスS9)は、隣を泳ぐトップの中国選手に食らいつこうと無我夢中だった。結果は、自己ベストの28秒28で3着。記者が銅メダルの感想を求めると、「ホントですか?」と驚き顔。表彰式では、センターの選手を囲む記念撮影に初々しく戸惑いながら笑顔を見せた。夢はパラリンピックに出場してメダルを獲得すること。アジアパラで初めて手にした、国際大会のメダルを胸に、窪田はこれから世界への階段を駆け上がる。



すでに日本代表の中心として存在感を放つ19歳もいる。アジアパラで銀メダルを獲得した車いすバスケットボールの鳥海連志だ。2016年に日本代表選手団最年少としてリオパラリンピックに出場し、その翌年も車いすバスケットボールのU23世界選手権で個人賞を受賞するなど目覚ましい活躍を見せている。

今大会、その鳥海がいる男子日本代表が重要な試合と位置付けたのが、4年前のインチョン大会で日本の優勝をさらった韓国との一戦だ。機動力の高い鳥海は、前半から韓国の激しいマークに遭うが、耐え凌ぐことで相手の体力を削っていった。前半を終えて22‐41と大きくリードを許していた日本。だが、勝負の第4ピリオドで鳥海が得点を決めて逆転し、大きな勝利をもぎ取った。

「後半勝負になるだろうと思っていたので、自分のなかで焦りはありませんでした。相手のコンタクトプレーには少しイラつきましたが、そこはチームのためかなと割り切っていたので。でも、感情を持っていかれたところもあったし、表情にイラつきが出ていたかも……。まだまだメンタルトレーニングが足りませんね」



チームは決勝で世界選手権4強のイランに敗れ2位に終わったが、“未完の大器”鳥海は、東京パラリンピックに向けて確かな成長を示した。

収穫と課題を手にした東京パラリンピック期待の星たち

アジアパラ直前の国際大会を優勝で飾り、多くの期待を背負って大会に挑んだのが、バドミントンの今井大湧だ。現在20歳の今井は、大学のバドミントン部に籍を置き、健常の選手に混ざって羽を打つ。

もっともパラバドミントンの世界でも、先天性右腕上肢欠損の今井が属する男子SU5クラスは強豪ぞろい。今井も大学入学後、下半身を強化したことでフットワークが軽快になり、さらに日本代表として場数を踏むことで国際大会のメダルに手が届く選手に成長した。だが、 バドミントン競技は“アジアの強豪が世界の強豪”。シングルス準々決勝で地元インドネシア選手に敗れ、今井はベスト8で姿を消した。

「結果はメダルが獲れず残念でしたが、バドミントン人気が高いインドネシアでの試合は、ワクワクしましたし、すごく楽しかったです。日本の国内も、もっと盛り上げていきたいと感じました」



連日、目の肥えた観客が足を運び、歓声を響かせたバドミントン会場。「日本にもこんな環境を作りたい」と今井は言い、「日本のパラバドミントンを盛り上げるのが今井選手の役割ですか?」という記者の質問に対し、「はい、その通りです」。自国開催の東京パラリンピックでは、日本のエースを襲名するつもりだ。

そんな彼らに共通するのは、競技生活を支える資金のバックアップがあるということ。日本財団では2017年より、次世代のパラアスリートを養成する「日本財団パラアスリート奨学金制度」を設置しており、対象である日体大系列校の高校生、大学生、大学院生の計27人に、学費や遠征費はもちろんのこと、義足や車いすなどの用具費支援を行っている。

アジアパラには、ほかにも陸上競技のリオパラリンピック400m(T47クラス)銅メダリスト重本沙絵、隻腕のスプリンター鈴木雄大、女子走り幅跳びで銅メダルを獲得した片大腿切断の兎澤朋美、卓球の団体戦(クラス8)で銅メダルを獲得した宿野部拓海、水泳で金メダルを獲得した機能障がいの池愛里と視覚障がいの富田宇宙が出場。実に、10人の奨学生が躍動した。

競技を続けるうえで切っても切り離せない活動資金。そのバックアップが、世界のひのき舞台で活躍する選手たちの礎になっているといえるだろう。

text by Asuka Senaga
photo by Haruo Wanibe

(BLOGOS/日本財団記事より転載)

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