車いすテニス「JAPAN OPEN」女子は上地結衣が準優勝!

車いすテニス「JAPAN OPEN」女子は上地結衣が準優勝!
2019.05.09.THU 公開

日本の車いすテニスの歴史を作ってきた「天皇陛下御在位三十年記念 天皇杯・皇后杯 第35回飯塚国際車いすテニス大会 (Japan Open 2019)」の第35回大会が4月23日から28日まで、福岡県飯塚市で行われた。

7連覇を目指した世界ランキング2位の上地結衣は、同1位のディーデ・デグルート(オランダ)に敗れ皇后杯は逃したが、準優勝を飾った。女子ダブルスは、デグルート/ファンクート(オランダ、ダブルス世界ランキング1位/2位)を決勝で破ったバイス/マシューソン(オランダ/アメリカ、ダブルス世界ランキング4位/6位)が優勝した。

皇后杯を掲げるデグルート(左)と準優勝の上地 ©Yoshimi Suzuki

上地は世界1位に屈し優勝逃す

「あの試合をしていたら連覇はできない。自分の実力不足。勝ったところを見せたかったけど、現実を受け止めなければ……」

日本のエース上地は、決勝でデグルートに3-6、6-7で敗れると、悔しさを滲ませ、しかし冷静に試合を振り返った。

決勝で当たった22歳のデグルートは、2017年に引退した同大会金のイスケ・グリフィオン(オランダ)と入れ替わるように頭角を現し、リオパラリンピック4位から、昨年3月、世界ランキング1位にたどり着いた新女王だ。

女子世界ランキング1位に君臨するディーデ・デグルート(オランダ)

トータルでは上地が13勝11敗と勝ち越しているが、2018年以降はデグルートが7勝2敗と、この数字が若いパワーヒッターの勢いを示している。

決勝はこのデグルートが安定感を見せる内容になった。今年2月、以前より1.2kg軽い車いすに変え、「まだ慣れず、東京パラリンピックに向けて改良中」と話したものの、第1セットは力強く押し込むストロークで上地をダウンザライン後方に押し込め4-2と先行。8ゲームでは、この日、冴えたサービスリターンでブレイクに成功し、6-3で先制した。

第2セットは、立ち上がりで上地が3連続でダブルフォルトを犯す大きな失態を犯し、デグルートが2-0、3-1とリードした。上地が「いい球を打ちたい」とサービスに迷う一方、デグルートは伸びやかにプレーし、このまま走るかと思われたが、地元の期待を背負う日本のエースには意地があった。上地はリターンエースを何度も食らいながらも、一時は4-3、6-5とリードし、辛抱強くラリーしてタイブレークへと勝負を持ち込む。

だが、山場から勝利を引き寄せたのはデグルートだ。「自分がとりやすいポイントの形をイメージした」と、上地は3度マッチポイントをしのぎ、8-7とセットポイントを握ったが、奮闘はここまで。デグルートは「慎重に行くのではなく、あえてリスクを負って攻めていった」と強気に徹したサービスを放ち、3連続得点してウイニングポイントを握った。

7連覇ならず上地は、「デグルート選手が特別に何かを仕掛けたわけではなく、自分の精度の甘さが目立った試合だった。(ビハインドから)追いつくだけの気力はあっても、勝ち切るだけの力はなかった」とリードしたあと、ミスが多く出た展開を悔しがった。

上地結衣は決勝に駒を進めたものの、7連覇を逃した
3位に入ったのはサビーネ・エラーブロック(ドイツ)

上地はデグルートを意識しネットプレーを強化

もちろん、ここ1年、負け越しているデグルートに対し、上地は手をこまねいているだけではない。東京2020パラリンピックやグランドスラムでの再戦を意識し、ネットプレーを強化中だ。

「これまでは後ろにずっといてチャンスを待つテニスでしたが、リスクを負って、前に出てドライブボレーしたり、前後の動きを使う展開にトライしています」

このチャレンジは、決勝戦はもちろん、アニーク・ファンクート(オランダ、世界ランキング3位)との準決勝でも奏功する場面があった。ただし「攻めるべきときと、守るべきときが交じってしまうときがあり」、今後、戦略的に使えるようになることが課題だ。

持ち前の“守り”のプレーにアグレッシブさを加えていけるか。それが3度目の挑戦となるパラリンピックの金メダルに手を届かせられるかのカギになりそうだ。

大谷桃子は上地とダブルス3位

日本女子は上地とダブルスで3位入賞を果たした23歳の大谷桃子(ダブルス世界ランキング11位)の存在も光った。世界ランキング1、2位のデグルート/ファンクート(オランダ)に準決勝で敗れたが、大谷の深いスピンを有効に使い、ファイナル4-6まで競っている。

ダブルスで笑顔を見せる上地(左)と大谷(右)

今後も2人が組み続けることは確定。だが、ペア結成2回目にして強敵相手の善戦は幸先がよく、上地は「今後、世界一のペアに勝てるのは大谷さんとのペアだと思います」とはっきりと述べている。

昨年10月のインドネシア2018アジアパラ競技大会シングルスで銅メダルを獲得した大谷は、インターハイ出場の経験を持ち、2016年に車いすテニスを始めたばかりと、大きな伸びしろがありそうだ。

東京パラリンピックを目指す大谷桃子

「上地選手は東京パラリンピック出場を内定されているので、私もパラリンピックに出場できるようにし、ダブルスのペアとして選んでいただけるように頑張るだけです」(大谷)

大谷が日本のエース格へと名乗りをあげる日はそう遠くないことを予感させた。

【天皇陛下御在位三十年記念 天皇杯・皇后杯 第35回飯塚国際車いすテニス大会 (Japan Open 2019)」リザルト】

女子シングルス:
1位 ディーデ・デグルート(オランダ)
2位 上地結衣(日本)
3位 サビーネ・エラーブロック(ドイツ)
3位 アニーク・ファンクート(オランダ)
5位 田中愛美(日本)

女子ダブルス:
1位 バイス/マシューソン(オランダ/アメリカ)
2位 デグルート/ファンクート(オランダ)
3位 上地結衣/大谷桃子(日本)
3位 エラーブロック/田中愛美(ドイツ/日本)

今大会は平成最後の天皇杯・皇后杯となった

※世界ランキングは2019年4月29日時点

text by Yoshimi Suzuki
photo by Hiroaki Ueno

※本事業は、パラスポーツ応援チャリティーソング「雨あがりのステップ」寄付金対象事業です。

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