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ジャパンパラ・車いすラグビー日本代表、1年半ぶりの試合で金メダルへの準備着々

ジャパンパラ・車いすラグビー日本代表、1年半ぶりの試合で金メダルへの準備着々
2021.03.26.FRI 公開

金メダルを目指す車いすラグビーの選手たちが待ちわびていた試合が再開した。

3月20日から21日の2日間、千葉ポートアリーナで行われた「2021ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」は、多くの選手にとって2019年12月に行われた日本選手権以来約1年3ヵ月ぶり、日本代表の試合としては同年10月開催の「車いすラグビーワールドチャレンジ2019(WWRC)」から約1年5ヵ月ぶりの公式戦だ。

「代表として久々の試合は、率直に楽しかった」(島川慎一)
「いい緊張感を持ちつつ、自分の足りないところが見えた」(池崎大輔)

日本代表候補Aは島川を攻撃の中心とした<3.0-2.0-2.0-1.0>でハイローラインに立ち向かった

そんな選手たちの声からは、東京パラリンピックを控え、意義のある大会だったことがうかがえる。

車いすラグビーとして3年ぶりに開催されたジャパンパラは、無観客開催。新型コロナウイルス感染症防止を目的とした入国制限措置に伴い、海外チームの姿はなかったが、日本代表候補が3チームに分かれて対戦した試合の様子はインターネットで生配信された。

緊張感がみなぎった決勝戦

初日に総当たり戦を行い、勝ち上がった2チームが優勝を争う。合宿の紅白戦とは一味違う“本気モード”の試合を選手たちは気迫むき出しで戦った。

高校を卒業したばかりの橋本は、勝ちに行く気持ちのこもったプレーで目を引いた

決勝のカードは、日本代表候補B(予選:2勝0敗)と日本代表候補C(1勝1敗)。前日の同カードではBチームに軍配が上がっており、Bチームはディフェンスの強い池・中町・乗松(聖)・乗松(隆)<3.0-2.0-1.5-1.5>の布陣で臨んだ。一方のCチームは、池崎・橋本・渡邉・長谷川<3.0-3.0-1.5-0.5>というハイポインターとローポインターを組み合わせた“ハイローライン”で対抗した。

この試合で、立ち上がりから激しいプレーでBチームをかく乱したのがCチームの池崎大輔(3.0)だ。前日のインタビューで「久しぶりの試合で緊張した。出だしはあまり(流れに)乗れないようなプレーもあった」と話していたが、前日の反省点をきっちり修正した。

続く第2ピリオド。池崎がターンオーバーから前にボールを送り出し、抜け出した橋本勝也(3.0)がトライしするなどして、Cチームがリードしたが、Bチームもパスをつないで様々な選手が得点を重ねていく。

今大会の活躍が光ったミッドポインターの中町は、パスレンジの広さに磨きをかけている

互いにミスが生じた後半は、池が橋本を徹底マークするなど対策を講じたが、ハイポインターの機動力に勝るCチームが52-48で勝利した。

「どのチームも(試合の)入りのところでナーバスになっている部分があった。パラリンピックという国際大会では、心理的な言葉でどういった入りをするか取り組まなければいけない」
と、試合を終え、久々の試合の課題を語ったのは、ケビン・オアー日本代表ヘッドコーチ(HC)。今大会では若手の起用も目立ったが、もちろん、日本代表が東京パラリンピックで金メダルを目指す意志に変わりはなく、今後は動きのタイミングなど細かいプレーの磨きをかけていくという。

なお、本番まで海外チームと試合を組めない可能性も高いが、これについては「日本は世界レベルのハイポインターが揃っているので、合宿など練習の中で十分対戦国を想定した練習を積むことができる」と話し、日本代表の現状を取材しに訪れたメディアの心配を払拭した。

また、今大会は「日本代表4人目のハイポインター」である橋本が入ったCチームのHCを務めており、「橋本はコロナ禍でもひとりでトレーニングをしていた成果が出て、スタミナがつきましたね」と評価。2017年の同大会に観客として訪れ、オアーHC自ら代表に招いた“未来のエース”のここまでの飛躍ぶりを喜んだ。

決勝では転倒が目立ち悔しさを見せた日本代表キャプテン・池

白熱したローポインターズゲーム

ローポインターズゲームでも迫力のプレーで魅せた乗松聖矢

決勝戦前には、エキシビションマッチとしてチームA・Bに分かれ「Low Pointers Game(ローポインターズゲーム)」が行われた。ローポインターズゲームとは、障がいの重い0.5~1.5点の選手のみで行う試合で、2022年にアメリカ・アラバマ州で世界大会開催が予定されている。

通常の試合では、コートに入る4人の持ち点の合計は8点以下で構成されるが、ローポインターズゲームのルールでは、合計点が3.5点以内でなければない。そのため、守備的な役割を担うローポインターがゲームメイクするいつもとは一味違う展開が見られ、それぞれのチームがどのような攻撃で挑むかも見どころだった。国内でも2017年から2019年まで新潟県魚沼市でローポインターズゲームが実施されていたが、日本代表として国際大会への派遣がまだないため、今後を見据えてゲームが行われたのである。

守備型車いすでプレーする選手たち。ボールを上手くつないでトライに持ち込む技術も求められる

試合は、豊富な運動量が持ち味の乗松聖矢(1.5)を擁するチームAに対し、チームBは小川仁士、若山英史、今井友明の1.0選手3枚がリズムよくパスをつなぎ、一進一退の攻防戦に。しかし、第3ピリオド、チームAのパスを切り裂くことに成功したチームBが一気にリードを5点に広げた。第4ピリオドもチームBのペースで試合は進んだが、それを止めたのが乗松聖矢。ゲーム終盤でも衰えないスピードでスペースを走ってトライを重ね、1点ビハインドまで詰め寄るなど見どころを作ったが、残り20秒でその乗松聖矢がファウルを取られ、チームBの若山が得点。そのままチームBが33-31で勝利した。

ローポインターズゲームの実施は、日本代表にとっても攻撃の幅を広げられるメリットがある。「ゴールを狙えることと、(普段はボールを扱わないが)ボールに意識が向くことがいつもと違って楽しい」と若手の関卓也(0.5)が言えば、「ケビンHCは、ローポインターも機会があればボールを取りに行きトライしようという方針なので」とベテランの岸(0.5)もボールへの高い意識をのぞかせる。また、この競技ではハイポインターがしばしば「もっとうまくローポインターを使ってプレーしなくては」などと話すが、試合を終えた月村珠実(1.5F)が「ローポインターを使ってボールを運ぶとか、味方を使ってどうプレーするか勉強になる」と話していたのも印象的だった。さらに今回は全員が前方にバンパーがついた守備型車いすでプレーしていたこともあり、バンパーに引っ掛からないように大きくターンして相手のいないスペースを走らなければならず、普段の試合では行わない動きをすることで違った角度からのトレーニングにもなるという。

「海外のローポインターと対戦したい」と意欲的に語ったベテランの岸。「がむしゃらに走った」

今回、このローポインターズゲームで2019年からコンディション不良に悩まされ、試合から離れていた倉橋香衣がコートに復帰する明るいニュースもあった。倉橋が戦力になれば、日本の武器であるラインのバリエーションも厚みを増す。「日本が一番トレーニングを継続できている」と自信を持つオアーHCは、6月ごろ日本代表メンバー12人を選出するという。

東京パラリンピックの車いすラグビーは開会式翌日の8月25日に始まり、8月29日に金メダルマッチがある。初の金メダル獲得を目指す日本代表は一丸となってその準備を進めていく。

ブランクを感じさせないプレーを見せた倉橋は、東京の選考にも「間に合わせる」とキッパリ

※カッコ内の英数字は、障がいの種類やレベルによって分けられた持ち点。

【2021 ジャパンパラ車いすラグビー競技大会 リザルト】

1位 日本代表候補C(長谷川勇基、若山英史、荒武優仁、池崎大輔、安藤夏輝、渡邉翔太、橋本勝也
2位 日本代表候補B(岸光太郎、月村珠実、乗松隆由、下野勝也、小川仁士、乗松聖矢、中町俊耶、池透暢
3位 日本代表候補A(倉橋香衣、関卓也、今井友明、壁谷知茂、羽賀理之、仲里進、白川楓也、島川慎一)

■Low Pointers Game
1位 チームB(岸光太郎、安藤夏輝、今井友明、若山英史、小川仁士、乗松隆由)
2位 チームA (倉橋香衣、長谷川勇基、関卓也、月村珠実、渡邉翔太、乗松聖矢)
YouTubeのライブ配信でインタビューを受ける乗松隆由(左)と弟の乗松聖矢。「兄弟ならではの連携の強みをアピールできたら」

text by TEAM A
photo by X-1

ジャパンパラ・車いすラグビー日本代表、1年半ぶりの試合で金メダルへの準備着々

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