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車いすバスケットボール男子、銀メダル以上確定! いざ、歴史をつくる戦いへ

車いすバスケットボール男子、銀メダル以上確定!  いざ、歴史をつくる戦いへ
2021.09.04.SAT 公開

藤本怜央(4.5)が泣いている。鳥海連志(2.5)も赤石竜我(2.5)も。宮島徹也(4.0)は、北京大会以来、日本代表で苦楽を共にしてきた香西宏昭(3.5)に抱き着き、涙を流す。その香西はといえば、宮島を受け止めながら笑っていた――。

それぞれ、長い歳月に思いを馳せ

9月3日、有明アリーナで行われた東京2020パラリンピック・車いすバスケットボール男子の準決勝で、日本はイギリスに勝利。通算12回目のパラリンピックで初めて銀メダル以上を確定させ、新たな歴史を刻んだ。

決勝進出を決め、歓喜に湧く日本代表チームのベンチ

ブザーが鳴る前から、誰よりも早くベンチで泣き始めていたのは藤本だ。その理由を問われると、藤本は照れ笑いしながら、

「(初めて出場した)アテネ大会以来、努力してきたことなどいろいろなことが頭の中をめぐって、(涙を)耐えられなくなった」

と明かす。
同じくベテランの香西は、まだ実感がわかないとはいうものの、

「ここまで長かった。代表に入ってから14年かかっている。生まれた子どもが中学生になっている計算だ」

と、感慨深げだ。

イギリスは、2018年世界選手権で優勝しており、「メダルが確定したことより、まず、あのイギリスに勝ったという喜びのほうが大きい」と香西が言うほどの格上。その強豪チーム相手に、日本はよく戦った。

日本のチェアワークがイギリスを破壊

第1ピリオド、日本のスターティング・ファイブは、豊島英(2.0)、鳥海、川原凛(1.5)、藤本、秋田啓(3.5)。先制したのはイギリス。エースでアシスタントコーチの背番号14、リー・マニング(4.5)がシュートを決め、ファウルによるフリースローで得点を重ねた。日本もお返しとばかりに藤本がスリーポイントシュートを成功させるが、イギリスはマニングだけでなくローポインターたちも次々にシュートを決め、背番号4のギャズ・ショウドリーは、片方のタイヤで立つティルティングでのシュートで魅せた。一方、日本も果敢にシュートを放つが及ばず、このピリオドは15対23とイギリスのリードのまま終えた。

風向きが変わったのは、第2ピリオドだ。
日本は、鳥海や、第2ピリオドからコートに入った秋田、香西を中心に得点を重ねる一方で、イギリスはシュートを外し始めた。日本のディフェンスが効き始めた証拠だった。

「第1ピリオドで4番と14番の連携を押さえればいいとわかった。この2人の連携を止めることにフォーカスしてディフェンスした」(藤本)

第2ピリオドだけを見れば、18対13と日本が得点で勝り、トータルでも33対36と追い上げている。

この試合、鳥海につぐ17得点を決めた香西(左)

「海外チームは縦に走りたがるし、インサイドを取りたがる。だから、日本は細かいチェアワークを駆使し、一枚の壁を作るようにラインを組んでディフェンスをしかけることで、進路をふさぎ、相手を壊す。相手がようやく気持ちよくシュートを打てると思ったときには、すでに時間切れという状態に持っていく」(藤本)

この言葉通り、第3ピリオドは、まさにイギリスが“壊れた”と言っていいだろう。それまでは周りと連携してポイントを重ねていたギャズ・ショウドリーが、いらだちを隠せず、1人でボールを運び、シュートを放つようになったのだ。前半こそ、古澤拓也(3.0)を中心に得点を重ねる日本とのシーソーゲームとなったが、残り3分あたりから差が開き始め、第3ピリオド終了時点では52対48と日本がリードする展開となった。

第4ピリオド、開始早々香西のスリーポイントでイギリスを突き放しにかかった日本は、着実に得点を重ねていく。なかなか入らないシュートにいら立ち、明らかに届かないであろう距離からスリーポイントシュートを放つなど、プレーが大味になっていったイギリスに対し、最後まで繊細なディフェンスとパスワークを見せた日本は、79対68と11点差をつけて勝利した。

決勝のアメリカ戦「いいゲームをお見せできる」

試合後、リー・マニングが、「ベリーベリーハードゲーム」と吐露していることからも、日本のディフェンスの堅牢さが分かるのではないか。

今日の試合について、京谷和幸ヘッドコーチ(HC)は、

「キーワードは『いつも通り』。いつも通りディフェンスで勝つ、と言って送り出した。合宿のたびに、どんな状態でも『いつも通り』やり続けることの大切さを伝えてきたし、メンタルトレーニングにも取り組んできた。その成果が出た」(京谷HC)

と、振り返る。
メダルに手が届いたことにも、「まだ試合は終わってない。泣くのは早い」と冷静だ。

「決勝でアメリカと戦いたいと言っていたのだが、現実になった。決勝は真っ向勝負。やるか、やられるか。攻守の切り替えの速いトランジション・バスケットボールがうまくかみ合えば、いいゲームをお見せできると思う」(京谷HC)

DNAにバスケットボールが組み込まれているのではと思わせるほど、縦に早く、躍動感あふれるプレーで魅了するアメリカに対し、日本は「ディフェンスで点を抑えて勝つバスケットボール」(藤本)で勝負を挑む。どちらに軍配が上がるか。
決戦は、東京パラリンピック最終日の9月5日だ。

今大会、屈指のアジリティとスピードで攻守にわたる活躍をみせる鳥海(左)

edited by TEAM A
text by Masae Iwata
photo by kyodo

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