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音楽を聴いていると気分良く走れるように感じるのには理由があった!? モチベUPだけじゃない音楽のスゴイ効果

音楽を聴いていると気分良く走れるように感じるのには理由があった!? モチベUPだけじゃない音楽のスゴイ効果
2021.12.13.MON 公開

街中をジョギングする人、フィットネスクラブのランニング・マシンで走る人の中には、イヤフォンやヘッドフォンで何かを聴きながら走っている人が多いのが目に付く。退屈しのぎに? 音楽が好きだから? 理由は人それぞれだろうが、実は音楽を聴くと気分よく走れるように感じるのには根拠があるのだ。感性の心理学の研究者、神戸学院大学心理学部の河瀬諭准教授にお話をうかがった。

音楽は、脳のしんどい感覚を和らげる

音楽にはもちろん、ジャンルの好き嫌いはあるにせよ、聴くのが嫌いと言う人はあまりいないように思う。好きな音楽を聴けば何となく気分がよくなるし、“ここぞ!”という気合いを入れなければいけないシーンには“この曲を聴く!”と決めている人も多いのではないだろうか。そんな音楽が人間に及ぼす影響。音楽が人間の心理に与える変化にはどんなものがあるのか、どうしてそのような心理変化が起こるのかについて河瀬諭氏は研究をしているのだという。

「私自身、これまでにバンドを組んでいたこともあって、音楽、そしてグルーヴ(ノリのようなもの)とは一体何だろうと思っていました。そこから、音楽を聴くと人は心理的・身体的にどう変わるのか、演奏者同士はどのようにコミュニケーションを取るのか、演奏者の思いは聴いている人にどのように伝わるのかについて研究を始め、今に至るという感じです」

そんな音楽の心理学的研究の分野で、最近、体の動きと音楽との関係についての研究がトレンドになっているのだそう。そこで今回の質問、つまり音楽を聴くとなぜ気分よく走れるように感じられるのかだが、心理学的にはどのような理由があるのだろうか。

「我々は運動しているとしんどくなってきますよね。“しんどいな”というのは、体や脳が感じる情報です。音楽を聴くと、そのしんどい感覚に音楽が割って入るというイメージで、音楽がそれを誤魔化してくれると言うと言いすぎかも知れませんが、運動は嫌だなといった感情も含めて、ネガティブな感覚を和らげてくれる。心理学的にはそう説明できます」

以前、河瀬氏が出演したTV番組では、これを「脳からのSOSを掻き消してくれるから」と説明されていた。まさに脳が“もう疲れた、もう走れない”などとネガティブな感情に支配されているところに音楽が流れてくると、それを忘れることができる。だから走っていることがきつく感じられなくなるということになるのだろう。

「元々のネガティブな情報が少なくなる、和らげられるということなので、ものすごくキツイ運動をして、体がものすごくしんどい状態だと、そもそも音楽が割って入る余地がなくなってしまいます。そうなると、音楽の効果はあまり期待できないんです。ですから、強度的にはそんなに強くないジョギングやウォーキングなど、目一杯やるような運動ではない方が、音楽の疲れを和らげる効果はあると言われています」

一定したテンポのリズムが運動に効果あり

走っているときに音楽を聴くと、しんどい思いが和らげられることはわかったが、どんな音楽でもいいというわけではなさそうだ。どんな音楽がより効果的なのだろうか。

「一般的には、音楽はある一定のリズムがあって、それが繰り返されるのが特徴です。そういう意味で、音楽が良い効果を与えてくれるのは一定のテンポで体を動かすもの、先ほど言ったジョギングやウォーキングに加えて、サイクリングや水泳などが挙げられると思います」

一定のテンポで流れる音楽は、リズミカルに体を動かすという意味でも効果がありそうだ。音楽に合わせていればペースを乱すことも防げるのではないだろうか。

「世の中にある音楽、クラシックやポップスなどさまざまなジャンルの音楽のテンポはどのぐらいかであるのかを調べた研究があって、私も体を動かしたくなるテンポはどのぐらいかを調べたことがあります。すると、個人差はあるものの、1分間に120拍の音楽が速すぎも遅すぎもなく、だいたいちょうどいいテンポだということがわかりました」

もちろん人によって歩いたり走ったりするペースは異なるので120拍は平均値として捉えておいた方が良いだろう。まずは自分で120拍の音楽を聴きながら体を動かしてみて、心地よく感じるならOK、もっと速い・遅い方が良いと感じれば速い・遅いテンポの音楽を選ぶというように、基準として考えるのが良さそうだ。

「私はスポーツを専門的に研究しているわけではありませんが、たとえば疲れてくると動きのテンポが崩れてフォームが乱れるということがありますよね? それを抑止するために、つねに一定のペースやフォームで同じように体を動かすという意味でも音楽の効果があると言われています。劇的に不調を改善するというわけにはいかないかもしれませんが、フォームが崩れてしまってそれを立て直すために余分なエネルギーを使うのを防ぐといった意味でも、音楽の効果はあると言えるかも知れません」

運動する気にさせる音楽の効果

河瀬氏が最近興味を持って研究しているのが、音楽がウォーキングやジョギングにもたらす効果から一歩進んで、人のモチベーションに対する効果についてなのだそうだ。

「運動はした方が良いことはみんな分かっていると思うんです。でも、しない人は多い。それはしんどくて楽しいとは思えないからという面も大きいと思います。そこに音楽が入る余地があるとしたら、音楽によってひょっとするとしんどい運動がハッピーに感じられるんじゃないかと考えているんです。音楽でモチベーションがアップして、月1回だった運動が、月2回、3回となればいいなと思いながら研究をしています」

アスリートのインタビューなどを読んでいると、試合前のルーティンとして聴く曲が紹介されていたりする。音楽は人のモチベーションにかなり大きな影響を与えることは間違いなさそうだ。是非、自分にあったテンポ、モチベーションがアップする音楽を見つけて、運動効果アップにつなげてほしい。

河瀬氏によれば、音楽は孤独を癒したり、孤立した人の絆作りに役立つことも近年報告されているらしい。生後何ヶ月かの小さな子どもを抱きかかえてThe BeatlesのTwist & Shoutに合わせて上下運動をすると、その子どもは一緒に動いた相手のために何かしようとするのだそうだ。音楽にはただ聴いてしんどいと感じなくなるだけに留まらない、不思議な効果がまだまだ隠されていそうだ。


Profile
河瀬諭
神戸学院大学心理学部 准教授。ヤマハ音楽研究所 研究員。感性アナリティカ 代表。


text by Sadaie Reiko(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock

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