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Sports /競技を知る
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愛知・名古屋2026アジアパラの競技会場で存在感を示した、パラ水泳の注目選手たち

来秋の愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会が実施される日本ガイシアリーナ(名古屋市総合体育館レインボープール)。9月13日から15日まで開催された「JPSA設立60周年記念 2025ジャパンパラ水泳競技大会」には、ベテランから次世代を担う若手まで多くのスイマーが集まった。
レジェンドを追悼
大会初日。決勝の前には、9月5日に病気で亡くなったパラ水泳のレジェンド、成田真由美さんの功績を偲び、スクリーンに追悼映像が流された。成田さんは、東京大会までパラリンピックに6大会出場し、計15個の金メダルを獲得。2004年のアテネ大会で日本代表選手団過去最多の1大会で7個の金メダルを獲得するなど、数々の伝説を残した。大会中、パラ水泳のアスリート委員会は喪章を配布。多くの関係者が黙とうをささげた。

そんな成田さんと日本代表活動を共にした選手の多くは、今もトップシーンで泳ぎ続ける。今大会は、21日にシンガポールで開幕する世界パラ水泳選手権の1週間前に行われたこともあり、記録ラッシュとはならなかったものの、東京大会の100m平泳ぎ(SB14)金メダリストである山口尚秀(S14)が好記録を連発。男子100m自由形で53秒47のアジア新、男子50m自由形でも24秒80の日本新記録をたたき出した。
その他、世界パラ水泳選手権の日本代表では、大学生の田中映伍(S5)が男子50m背泳ぎで35秒94の日本新をマークした。

デフリンピックの日本代表も出場
11月に開催される東京2025デフリンピックの水泳日本代表も集結。水泳チームの主将を務める星泰雅、過去4大会で19個のメダルを獲得しているベテランの茨隆太郎らが大舞台を前にレースの感覚を確かめた。

若手も負けてはいない。県立岐阜商業高等学校の2年生で、女子100m平泳ぎ、女子200m平泳ぎの日本記録保持者・串田咲歩は、女子100m自由形(S15)で1分01秒78の日本新をマーク。「キックを中心にがんばった。自分の最大限の力が結果になり、うれしい」と笑顔で語った。
3歳で水泳を始め、中学の県大会で表彰台に上がるなど、健常者の世界で活躍してきた。全国高校総体(インターハイ)出場を目指しているが、水泳部の顧問の勧めで昨年からデフ水泳の大会に出場。「今まで同じ障がいのある人と関わる機会がなかったので、デフリンピックでいろんな人たちとコミュニケーションを取りたいと思った」。初めてのデフリンピックでメダル獲得を目指す。

知的障がいクラスの新星
知的障がいクラスは、男子100m背泳ぎ(S14)で齋藤正樹が59秒88をマークし、日本記録を更新した。

女子は、パリ2024パラリンピックの女子200m個人メドレーで銅メダルの木下あいらが難病のため、一時プールを離れている。
今大会の4種目に出場し、3種目で優勝した中学生の佐藤璃來(りら)は、木下を目標にしていると話す。たびたび観客席に現れる木下とは、今大会中に話をしたという。「すごく優しい人。いつか記録を超えられるように頑張りたいと思います」と、佐藤は目を輝かせた。

肢体不自由の中学生スイマーも、日本新をマークした。4月の「パラ水泳ワールドシリーズ富士・静岡2025」で国際大会に初めて出場した山田龍芽だ。

初日にメインとしている400m自由形(S6)で自己ベストを更新できず悔しがった山田は、2日目は2種目に出場。100m平泳ぎの予選で日本新(2分02秒93)をマークすると、決勝は1分58秒84で泳ぎ、再び日本記録を更新した。
下肢がまひしている山田は、「波のようにうねる動きを練習してきた」。ターンと、ラスト15mもうまくいったといい、記録更新につながった。

目標は、アジアユース、アジアパラ、そしてパラリンピックに出場すること。
「国際大会に出場して、そこでどんどんメダルを獲る選手になりたいです」
来年のアジアパラは、この日本ガイシアリーナでどんなパフォーマンスが見られるか。世界を目指して奮闘する若手に、期待したい。

text by Asuka Senaga
photo by X-1