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刻々と近づく勝負の舞台へ。日本パラ水泳選手権で存在感を示した代表有力選手は?

刻々と近づく勝負の舞台へ。日本パラ水泳選手権で存在感を示した代表有力選手は?
2021.03.12.FRI 公開

第37回日本パラ水泳選手権大会が3月6日から7日まで静岡県富士水泳場で開催された。本来は昨年11月に開催される予定だったが延期され、このたび無観客開催に至った。全国から通信記録会などで標準記録を破った選手が出場を果たしている。

東京2020パラリンピック出場を目指す選手にとっては、5月のジャパンパラ水泳競技大会が最大の山場になる。だが、コロナ禍ではいつ大会が変更や中止になるかわからない。万が一中止の場合は、今回の日本パラの結果が選考を左右するとあって重要な大会と位置づける選手もおり、各クラスの選手が日本記録を更新した。

今回は、東京パラリンピックの最低出場資格であるMQS記録を突破している選手のうち、好記録を残した、パラリンピック初出場を目指す選手を紹介したい。

ニューヒロインが躍動

頭の位置で無意識にバランスをとっているという山田。小学時代、ぜんそく発症がきっかけで水泳を始めた

コロナ禍で大会は減っており、パラ水泳の大会は11月以来。その記録会からさらなる成長を見せたのが、四肢欠損S2クラスの山田美幸だ。

初日に、女子50m背泳ぎで自身の日本記録を5秒以上更新して1分05秒44をマークすると、翌日の50m自由形でも1分08秒60の日本新記録をたたき出した。序盤のスピードに加えて、スタミナも強化した山田。一躍メダル候補に浮上した東京パラリンピックを前に、練習はハードになっているはずだが、自身は楽しくて仕方ないといった様子で、この日も「水が冷たくて気持ちよく泳げた」、「水の流れを感じられるのが楽しい」と話し、報道陣を和ませた。

100m背泳ぎでも好記録。東京を見据えて集中的に取り組む背泳ぎは、体全体を使ったキックで跳ねるように進む。勢いを感じさせる14歳は「東京ではメダルを獲りたい。でも、その前に、自分との戦いなので、自己ベスト出せるよう頑張りたいと思います」と力強く語った。

男子も若手が続々

日向は50m自由形、50mバタフライで日本新をマークした

同じく中学生の日向楓も50mバタフライで36秒69の日本新をマークし、「想像を超えた記録で、みんなに自慢したくなりました」と満面の笑み。翌日の50m自由形でも36秒86の日本新をマークした。

大学生スイマーでは、左上肢障がいの窪田幸太が得意の100m背泳ぎ(S8)で1分11秒14をたたき出し、自らの持つ日本記録を更新した。

100m背泳ぎで日本新をマークしたの窪田

視覚障がいスイマーが存在感

日本のパラ水泳界を代表する木村敬一富田宇宙と同じ全盲S11クラスで好記録をマークしたのが2019年にロンドンで行われた世界パラ水泳選手権の日本代表、石浦智美だ。50m自由形で自身の日本記録を縮める31秒03のタイムは、日本身体障がい者水泳連盟が定める東京パラリンピックの派遣標準記録を超えており、本番でもメダルを狙える位置につけている。

持ち前のキック力に加え、効率よい泳ぎを磨いたことでタイムが伸びている石浦

「レースは限られているので、タイム出せてよかったと思ってます」と淡々と振り返るも、「本番は金メダルを目標にしている。30秒台はコンスタントに出していきたい」と自信をのぞかせた。

初めて世界大会に出場してから15年が経ちベテランの域に入ったが、まだパラリンピックには出場していない。

「(出場を逃した)リオパラリンピック後に転職し、アスリートとして就職させていただいた。そういった人生もかけてやっている」

並々ならぬ東京パラリンピックへの思いを胸に、石浦は勝負の舞台へ着々と準備を進める。

「大きな規模に大会なので緊張したけれど、楽しかった」と辻内

その石浦と50m自由形で同組だったS13クラスの辻内彩野も、27秒83で日本新記録を更新し、好調ぶりを示した。100自由形も自身の記録を更新する1分00秒25をマークしており、場内に日本新記録のアナウンスが流れると水面をたたいてとびきりの笑顔を見せた。

「大きく泳ぐ意識をしたことが前半のタイムにつながり結果的に良かったかな」

そうは言っても、先の世界選手権で日本女子唯一のメダルを獲った辻内が見据えるのは、もっと高い場所だ。

「いっぱいいっぱいになってしまった後半が心残り。もっと頑張れた」と反省し、昨年11月に東京都マスターズ水泳競技大会でマークした1分00秒07への到達を誓った。

100m背泳ぎで日本タイをマークした齋藤

また、リレーメンバーとしても東京行きのチャンスがある男子S13クラスでは、50m自由形の日本記録を持つ長野凌生が24秒96で記録更新。22歳の齋藤元希も100m背泳ぎで日本タイ記録を残し、200m個人メドレーでも好記録をマークしている。

身長192㎝の長野はダイナミックな泳ぎで日本記録をたたき出した

知的障がいクラスは、男女のエースが進化

今大会、ただ一人アジア記録をマークしたのが、知的障がいS14クラス・4冠の東海林大だ。

最初の種目は世界記録を保持する200m個人メドレー。他の選手の追随を許さず1位に輝いたものの、同組で序盤から高速レースを展開した聴覚障がいの茨隆太郎に圧倒され「オーラが漂っていた。心理的なものが影響し、とくに背泳ぎのスピードが出なかった」と苦しい胸の内を明かしていた。

しかし、気持ちにスイッチが入り、無心になれたら東海林は誰よりも強い。一番好きだという100m自由形はスタートから攻めて思う存分楽しむと、世界王者の山口尚秀がエントリーしなかった平泳ぎで日本一に。そして4種目目の100mバタフライでは、2018年まで自身が保持していた当時の世界記録55秒72を超える55秒68のアジア記録をたたき出した。

個人メドレーのスキルアップの一環として位置づけるバタフライでアジア新をマークした東海林

「今回の大会では少しうまくいかなくても気持ちを切り替えられたのが大きかったかなと思う」

そう自身も語るように、日本知的障害者水泳連盟理事でコーチも務める谷口裕美子さんも「彼なりに気持ちの整理をし、切り替えができた。強くなっている」と舌を巻く。個人メドレーで泳いでいる途中に考え込んでしまったという東海林に対し「『調子がいいときは考えるの?』と声をかけ、『考えない』という返事だったので、『それなら気持ちを切り替えて楽しく泳ごうね』と話した」と明かし、知的障がいの選手たちが力を発揮するためのバックアップの必要性を示唆した。

芹澤は「積極的な泳ぎができてよかった」と振り返った

女子は100m平泳ぎの芹澤美希香が大会に出場する度に記録を更新して周囲を驚かせており、今大会でも昨年11月の記録会の日本新からさらなる更新となる1分18秒67をマークした。

また、自己ベストから遠ざかっている選手も多い中、インドネシア2018アジアパラ競技大会日本代表の井上舞美が200m個人メドレーと100mバタフライで日本新をマークした。

東京2020パラリンピック有力選手たちは、刻々と近づく勝負の舞台に向けて調整を続けていく。

体重を絞り、泳ぎのキレを取り戻した井上
【第37回日本パラ水泳選手権大会】

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text by TEAM A
photo by X-1

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