【東京2020パラリンピック】12日間の競技見どころまとめ

【東京2020パラリンピック】12日間の競技見どころまとめ
2021.07.25.SUN 公開

2021年8月24日、いよいよ1年延期された東京2020パラリンピックが開幕する。出場する日本代表選手団の人数は過去最多になる見込みだ。8月24日に開会式があり、その翌日から始まる競技は9月5日までの12日間、22競技で539個の金メダル争いが繰り広げられる!

注目は「金メダル」

今大会最大の注目は、日本勢の金メダルだ。5年前のリオで日本代表選手団は金メダルゼロに終わったが、自国開催の今回は複数の金メダル候補がいる。

なかでも陸上競技佐藤友祈(T52/車いす)は400mと1500mの2種目で世界記録を保持しており、2019年の世界選手権でも2冠。ゆるぎない自信を手にした。さらに、東京パラリンピックに向けて「世界記録で2冠」という高い目標に掲げてきたことで、大会の1年延期決定後もモチベーションを落とすことなく万全なトレーニングを積んでいる。“金メダルに最も近い男”は大会序盤に登場、複数金メダルに挑む。

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400mと1500mで金メダルの期待がかかる佐藤友祈(写真はドバイ2019世界パラ陸上競技選手権)
ⒸGetty Images Sport

日本勢のワンツーフィニッシュを見逃すな!

陸上競技では、世界的に注目度の高い走り幅跳び・義足クラスもメダルラッシュが期待される。リオパラリンピックで当時の自己ベスト6m62を跳んで銀メダルを獲得した山本篤(T63)、世界女王として挑む中西麻耶(T64)、今春から実業団入りした兎澤朋美(T63)ら、勝負強さが持ち味の面々が揃う。

また陸上競技の新種目4×100mユニバーサルリレーも見どころ満載だ。メンバーは男女2名ずつで構成し、<①視覚障がい→②切断・機能障がい→③脳性まひ(立位)→④車いす>の順で、バトンではなく、タッチでつなぐ。パラ陸上の魅力が凝縮されているユニバーサルリレーは一見の価値あり。

そして、リレーと同じく応援に力が入るのが最終日のマラソン。2時間54分13の世界記録を持つ道下美里(T12/視覚障がい)、東京パラリンピック出場を争う世界ランキング2位の堀越信司(T12)と永田務(T46/上肢障がい)らメダル候補も出場する。

前回の獲得メダル数最多(8個)の陸上競技に続く7個の水泳も、キャプテンの鈴木孝幸(S4など)を筆頭にメダル量産を狙う。

リオ2016パラリンピックの走り幅跳びで銀メダルを獲得した山本篤

水泳のエース・木村敬一(S11/全盲)は、リオで銀2銅2の計4個メダルを獲得。東京パラリンピックでも複数メダルを期待される存在に変わりはない。なかでも最有力種目は、2019年の世界選手権で金メダルを獲得した100mバタフライだが、そのクラスで金メダルを狙うと表明したのが、400m自由形をメインとする富田宇宙(S11)だ。

「(100mバタフライで)彼の方が金メダルに近い位置にいることはわかっている。彼を尊敬しているし、応援したい気持ちもあるが、自分が金を目指す気持ちもある」と富田。

9月3日(金)夕刻は2人のブラインドスイマーが表彰台に上がる姿を目撃できるに違いない。

世界選手権を制し、一躍知的障がいクラスのエースになった山口尚秀(写真は世界パラ水泳選手権大会)

知的障がいクラスは、100m平泳ぎ(SB14)の山口尚秀と200m個人メドレー(SM14)の東海林大の2人の世界記録保持者に注目したい。とりわけ山口は、自身の持つ世界記録をコロナ禍で2度も更新する好調ぶり。平泳ぎだけでなく、100m背泳ぎなど他種目でも上位をうかがう。

日本勢メダル第一号は?

パラリンピックでは唯一首都圏ではない静岡県で開催される自転車。日本の注目選手は、3大会連続でメダルを獲得している義足の藤田征樹(C3)とロードレースで活躍する杉浦佳子(C3)だ。

そのうち、杉浦はトラックでも表彰台を狙える位置におり、開会式翌日の午前中に行われる3000m個人パシュート(C1-3)で、日本勢メダル第一号が誕生するかもしれない。

ロードを得意とする杉浦佳子はパラリンピック初出場(写真は2019日本パラサイクリング選手権・ロード大会)

前回のメダリストは?

パラリンピックならではの競技・ボッチャは、リオ大会のチーム(BC1-2)銀メダル以降、最も裾野が広がった競技。日本チームの目標は「全種目メダル」だ。選手は重度障がいのため、2019年12月以降、公式戦に出場できておらず、世界の勢力図は蓋を開けてみなければわからない。それでも、村上光輝監督は7月の壮行試合で「日本チーム全体のレベルは確実に上がっている」と自信を見せている。

日本のお家芸・柔道は女子57㎏級の廣瀬順子、男子100㎏超級のロンドン大会金メダリスト・正木健人が上位争いに絡むだろう。

日本が強豪の車いすテニスでは、世界ランキング2位の上地結衣に連続メダルの期待がかかる。

車いすテニスで世界ランキング1位の国枝慎吾(写真はシングルス連覇を達成したロンドン2012パラリンピック)

そして、日本代表選手団の主将を務める国枝慎吾が挑むのは、自身4個目となる金メダルの獲得だ。現在、世界ランキング1位で、2020年には同じハードコートの全米オープンでも優勝を飾っている。
主将就任時のあいさつで「東京パラリンピックは、障がい者スポーツの枠にとらわれず、純粋にスポーツとしての魅力を伝えられる最高の舞台」と語ったレジェンドは、持ち味のバックハンドをはじめとする迫力のあるプレーと日本国民の障がい者スポーツに抱くイメージを大きく変えるはずだ。

ヒーロー・ヒロイン候補たちの登場は?

カヌーは2019年の世界選手権で5位だった瀬立モニカ(KL1)が地元・江東区にある海の森水上競技場でホームアドバンテージを発揮するか。アーチェリーは前回7位の上山友裕がリカーブでメダル獲得を狙う。

卓球で「金メダル以上」を目標と掲げる日本代表選手団旗手の岩渕幸洋(クラス9)、同じく開会式で旗手を務めるトライアスロンの谷真海(出場種目:PTS5)も、過酷な出場権争いを勝ち抜いて夢舞台を踏む。

最多63種目で決勝が行われる8月29日の「ゴールデンサンデー」には、トライアスロンに夏冬3競技目の出場となる超人、土田和歌子(PTWC)が登場する。

団体競技は?

車いすラグビー日本代表は、2019年の世界選手権王者として自国開催のパラリンピックに臨む。この競技の日本のパイオニアでアテネ大会から5大会連続の出場となる島川慎一が「(日本代表歴)22年で過去最高のチーム」と話すほど、選手たちの自信は揺るぎない。世界トップレベルのベテランに加え、東京大会延期の1年で若手も成長した最強ジャパンの決勝は、29日(日)の夕刻だ。

史上初の金メダルを狙う車いすラグビー日本代表(写真は車いすラグビーワールドチャレンジ2019)

団体競技のメダル候補は他にもある。ロンドン大会以来の金メダルを目指すゴールボール女子だ。初出場の男子も、ともに上位進出を目指す。

車いすバスケットボール男子は、7位だった北京パラリンピックを超える過去最高順位なるか。3大会ぶりに出場の女子もその実力を発揮して勝利につなげてほしい。

各大陸のチャンピオンクラスを相手に苦戦が予想されるのは、男子は3大会ぶり、女子は2大会ぶりのシッティングバレーボール男女。

パラリンピックの芝を初めて踏む5人制サッカー(ブラインドサッカー)も、厳しい対戦が予想されるが、選手たちは東京オリンピックの男女代表と同じユニフォームを着用し、勝利を求めて最後まで走る。

新競技のメダルラッシュにも期待大

女子58kg超級に出場するテコンドーの太田渉子(写真はパラリンピック代表選手最終選考会)

東京大会からの新競技・テコンドーには、日本から3選手が出場。冬季クロスカントリースキーとバイアスロンのメダリストでもある女子の太田渉子(女子58kg超級)は金メダルを狙える位置にいる。

また、同じく東京大会でデビューするバドミントンも盛り上がること必至だ。とくに、女子は日本から初代女王が誕生する確率が高い。

2019年世界選手権のシングルスで優勝した里見紗李奈(WH1/車いす)は、シングルスに加え、山崎悠麻(WH2/車いす)とペアを組む女子ダブルス(WH1-2)でも金メダル候補の最右翼だ。

「(金メダルの)プレッシャーはそんなになく、絶対に獲りたいという気持ち」と心境を語る里見は、「シングルスもダブルスも金メダルを獲ったら盛り上がると思う」とその言葉も頼もしい。

里見紗李奈は車いすならではの体をのけぞらせるショットが持ち味(写真はヒューリック・ダイハツJAPAN パラバドミントン国際大会2019)

そして、里見と同じ閉会式前日の9月4日(土)にシングルス決勝がある鈴木亜弥子(SU5/上肢障がい)は、一度は第一線を退いたが、東京パラリンピックでの採用を機に復帰したひとり。宿命のライバルである中国選手と雌雄を決し、パラリンピック女王に輝くつもりだ。

水泳で金メダル5個を含む21個のメダルを獲得しているレジェンド・河合純一が選手団長を務める日本代表選手団。自国開催のパラリンピック開催を信じて努力を重ねてきたアスリートたちの戦いぶりに注目して欲しい。

※8月25日追記:伊藤智也選手クラス変更により一部削除しています。

text by Asuka Senaga
photo by X-1

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